【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

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 喫茶店で軽食を食べて、映画を見て、ウィンドウショッピングをする。

「しぃの好きなもの教えて」

 そんな一言にすらドキドキしてしまって、まともに考えを巡らせる事が出来なくなってしまう。
 自分の新たな一面が色んな所で飛び出してきて、羞恥心でどうにかなりそうだと思う反面、楽しい。ロイさんと一緒に居る時間が、この上なく幸せで仕方がない。

「ロイさんは何が好きなの?」
「俺は意外とオタクだよ」
「知ってる」

 ちょっとした事で笑い合い、お互いの好みを知る。そんな些細な事でさえ、今までしてこなかった、否、する距離感じゃなかった。
 縮んだ距離に心弾ませ、ロイさんの事を沢山知る事が出来て、私はやっぱりロイさんの事が好きなのだと改めて実感する。
 その反面、「好きだった」と過去形にして送った最後のメッセージが脳裏に過る。
 ロイさんは触れてこないし、私も触れていない。実際どう思っているのだろう。
 不安が小さく込み上げるけれど、今はそれに触れられていない事に安堵しながら、この楽しさを満喫していれば辺りが暗くなっていく。

「あ、そろそろ向かおうか」

 ロイさんに案内された場所は高層ホテルの夜景が見えるレストランで、私は思わず狼狽えた。ドレスコードとか大丈夫なのかと思ったけれど、流石にお互いジーンズというラフすぎる恰好ではない。

「あの……」
「大丈夫」

 高級そうで、マナーにも自信がない。いきなり連れてこられては心の準備なんて出来ておらず、躊躇うどころか逃げ出したくなる気持ちが溢れてきたが、ロイさんの言葉で少し安心する。
 店員に止められる事もなく案内された席に着けば、そこは夜景を見渡す事が出来る、窓際の席だ。

「すごい」

 思わず出る声を止める事が出来なくて、ネオン輝く街並みを見下ろす。
 人間なんて、とても小さくて、その中の一人として居たのだと思えば少し寂しい気持ちが芽生える。でも、これだけ多くの人が居る中で、私はロイさんと出会えたのかと思えば、それは奇跡にも近い。

「喜んでもらえて良かった」

 優しい笑顔で言うロイさんに、もう何度目か分からない鼓動の高鳴りを覚える。

「ここは口コミ評価高くて、料理も美味しいらしいよ。……分からないけど」

 実際食べた事ないからと、そっぽ向くロイさんに安心感が込み上げる。ここでネットでの情報だと言われなければ、私は誰と、どんな女と来たのか想像して、また不安に襲われていただろうから。
 店がオススメするシャンパンを飲み、小前菜・前菜・スープ・魚料理・ソルベと舌鼓を打ちながら楽しむ。
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