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「アマリア、ほら挨拶しなさい」
初めてカラルスと出会ったのは八歳の頃。婚約者として紹介された時だった。
伯爵家の我が家と、公爵家との縁談で、我が家にとっては格上の家柄と縁を結べる喜ばしい事である。
貴族として家の繋がりを持つ為に選ばれた婚約者でしかない……筈だったけれど、私は違った。一目見た時から好きで好きで……。
一緒に遊んでいれば、更に好きになって行った。
顔や声……優しさや気遣いなど、良いところを上げ始めたらキリがない。むしろ欠点なんて見当たらないくらいで、私にとっては勿体ないと思えてしまう程の婚約者だった。
「カラルスー!」
「アマリア、危ないよ」
「お嬢様!!」
訪れてきたカラルスが部屋から見えれば、そのままカラルスの元へ走って行って飛びつく。淑女らしくないと言われればそれまでだけれど、少しでも一緒に居たい。側に居たい。
感情を隠せと言うけれど、溢れ出る気持ちを抑える方法なんて分からなかった。ただただ、私は――。
「カラルス!大好き!」
思うがままを言う。
溢れ出た感情を言葉にする。
ただただ、それだけ。
少し照れたかのように頬が染まるも、何かを言う事もなく素っ気ないカラルスだけれど、そういう所もまた好きで。思わずカラルスの腕にしがみ付く。
何故か絶対的な信頼を持っていて。
側に居るのが心地よくて。
ずっと、このまま続くと思っていた。
二人の関係は死ぬまで変わらないと思っていた……。
……そう、私だけは――。
◇
「カラルス様~!」
甘い声で私の婚約者と同じ名前を呼ぶ声が聞こえた。
学園に入ってからは忙しいという理由で一緒に通う事もない。更に言うならば、どれだけ探して追いかけても、学園でまともに顔を合わせる事さえない。
会えたとしても、すぐにどこかへ行ってしまうカラルスに、いっそ避けられているのではないかと言う不安が頭の中で過るも、婚約者だという肩書が自分の中で強みにもなっていた。
しかし、そこに愛情があるのか……カラルスにとっては、ただ貴族の政略結婚でしかないのではないか。会えない不安から考えれば考える程、ネガティブな思考に染まっていく。
そんな中で、女の甘い声でカラルスの名前を聞けば、思わずその姿を探してしまうわけで……。
――見なければ良かった。
――探さなければ良かった。
女の人が、カラルスに身を寄せ、腕を絡ませている姿なんて見たくなかった。
「っ」
名前を呼ぼうとするも、吸い込んだ息が喉を鳴らすだけで、言葉として口から音が発せられる事はなかった。
初めてカラルスと出会ったのは八歳の頃。婚約者として紹介された時だった。
伯爵家の我が家と、公爵家との縁談で、我が家にとっては格上の家柄と縁を結べる喜ばしい事である。
貴族として家の繋がりを持つ為に選ばれた婚約者でしかない……筈だったけれど、私は違った。一目見た時から好きで好きで……。
一緒に遊んでいれば、更に好きになって行った。
顔や声……優しさや気遣いなど、良いところを上げ始めたらキリがない。むしろ欠点なんて見当たらないくらいで、私にとっては勿体ないと思えてしまう程の婚約者だった。
「カラルスー!」
「アマリア、危ないよ」
「お嬢様!!」
訪れてきたカラルスが部屋から見えれば、そのままカラルスの元へ走って行って飛びつく。淑女らしくないと言われればそれまでだけれど、少しでも一緒に居たい。側に居たい。
感情を隠せと言うけれど、溢れ出る気持ちを抑える方法なんて分からなかった。ただただ、私は――。
「カラルス!大好き!」
思うがままを言う。
溢れ出た感情を言葉にする。
ただただ、それだけ。
少し照れたかのように頬が染まるも、何かを言う事もなく素っ気ないカラルスだけれど、そういう所もまた好きで。思わずカラルスの腕にしがみ付く。
何故か絶対的な信頼を持っていて。
側に居るのが心地よくて。
ずっと、このまま続くと思っていた。
二人の関係は死ぬまで変わらないと思っていた……。
……そう、私だけは――。
◇
「カラルス様~!」
甘い声で私の婚約者と同じ名前を呼ぶ声が聞こえた。
学園に入ってからは忙しいという理由で一緒に通う事もない。更に言うならば、どれだけ探して追いかけても、学園でまともに顔を合わせる事さえない。
会えたとしても、すぐにどこかへ行ってしまうカラルスに、いっそ避けられているのではないかと言う不安が頭の中で過るも、婚約者だという肩書が自分の中で強みにもなっていた。
しかし、そこに愛情があるのか……カラルスにとっては、ただ貴族の政略結婚でしかないのではないか。会えない不安から考えれば考える程、ネガティブな思考に染まっていく。
そんな中で、女の甘い声でカラルスの名前を聞けば、思わずその姿を探してしまうわけで……。
――見なければ良かった。
――探さなければ良かった。
女の人が、カラルスに身を寄せ、腕を絡ませている姿なんて見たくなかった。
「っ」
名前を呼ぼうとするも、吸い込んだ息が喉を鳴らすだけで、言葉として口から音が発せられる事はなかった。
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