13 / 134
第一章
13.各々の過ごし方
しおりを挟む
「ナイフとフォークは外側から使って下さい。持つ時はくぼみ以外で。食事中、音を立ててはいけません。これは基本的な事になります」
食事中もお勉強。
ナイフとフォークを使えば、どうしても食器同士が合わさりカチャリという音が鳴ってしまう。箸という文化で生きて来た私にとって、金属製のものをどう扱えば良いのか分からない。どうしても音が鳴ってしまう。
更に言うなら、右手にナイフ、左手にフォーク。……左手で食べるという事にも慣れない。持ち替えてはいけないとか、どれだけ厳しい世界だ。
「全ては慣れです」
枢機卿は涼しい顔をして言うけれど、どれだけの時間がかかるのだろうか。その頃には、箸の使い方を忘れていそうだ。
恵は涼しい顔をして音を立てる事もなく食べている。……これが育ちというものなのだろうか。英才教育でも受けてきたのか。
キィも少しずつ慣れていっているようだ。若さって凄い。
「午後は神力の使い方だったわよね。それまで自由にさせてもらうわ」
食べ終えた恵は、そのまま食堂を出て行き、その後ろをロランが追いかけて行く。
恵の姿を見る事は滅多にない。どこに閉じこもっているのかは分からないけれど、神力の使い方を学ぶ時だけは出てくるのだ。
「私も」
「キィ様、少しは休んだらどうですか?」
そう言って、食事を終えたキィも食堂から出て行こうとし、ウィルが後ろから溜息をつきながら声をかけていた。
まだ幼いのに、目の下にはクマが出来上がっており、廊下で度々姿を目にする時は大量の書物を抱えていたりする。寝る間も惜しんで勉強をしているのは明白だ。
慣れ親しむつもりはないけれど、キィの方からもどことなく私達に対して拒絶するような壁を感じる時がある。
「キィ様は聖女を目指しているようですね」
「そうなんですか」
枢機卿の一言に、大した興味もなく返す。なりたいなら、なれば良い。私には関係ない。
琴子も同じなのか、特に何といった反応も示さない。
それに対して、枢機卿は少し寂しそうな表情を見せたけれど、私には関係のない事だ。
「私も文字の勉強をしてきますね」
食べ終えた琴子も、また勉強をするようなのだが耳の痛い問題だ。
……文字。勿論、ここは日本語で書かれた書物などない。
鑑定という生活魔術で何なく雰囲気的な解読は出来ているけれど、しっかり読み込むには文字を覚える必要がある。
……キィや恵は覚えて、書物を理解出来ているのだろうか。
「……私も……」
このままこの世界で暮らすのならば、文字を覚えない事には苦労すると理解している私も、少し勉強しよう。
食事中もお勉強。
ナイフとフォークを使えば、どうしても食器同士が合わさりカチャリという音が鳴ってしまう。箸という文化で生きて来た私にとって、金属製のものをどう扱えば良いのか分からない。どうしても音が鳴ってしまう。
更に言うなら、右手にナイフ、左手にフォーク。……左手で食べるという事にも慣れない。持ち替えてはいけないとか、どれだけ厳しい世界だ。
「全ては慣れです」
枢機卿は涼しい顔をして言うけれど、どれだけの時間がかかるのだろうか。その頃には、箸の使い方を忘れていそうだ。
恵は涼しい顔をして音を立てる事もなく食べている。……これが育ちというものなのだろうか。英才教育でも受けてきたのか。
キィも少しずつ慣れていっているようだ。若さって凄い。
「午後は神力の使い方だったわよね。それまで自由にさせてもらうわ」
食べ終えた恵は、そのまま食堂を出て行き、その後ろをロランが追いかけて行く。
恵の姿を見る事は滅多にない。どこに閉じこもっているのかは分からないけれど、神力の使い方を学ぶ時だけは出てくるのだ。
「私も」
「キィ様、少しは休んだらどうですか?」
そう言って、食事を終えたキィも食堂から出て行こうとし、ウィルが後ろから溜息をつきながら声をかけていた。
まだ幼いのに、目の下にはクマが出来上がっており、廊下で度々姿を目にする時は大量の書物を抱えていたりする。寝る間も惜しんで勉強をしているのは明白だ。
慣れ親しむつもりはないけれど、キィの方からもどことなく私達に対して拒絶するような壁を感じる時がある。
「キィ様は聖女を目指しているようですね」
「そうなんですか」
枢機卿の一言に、大した興味もなく返す。なりたいなら、なれば良い。私には関係ない。
琴子も同じなのか、特に何といった反応も示さない。
それに対して、枢機卿は少し寂しそうな表情を見せたけれど、私には関係のない事だ。
「私も文字の勉強をしてきますね」
食べ終えた琴子も、また勉強をするようなのだが耳の痛い問題だ。
……文字。勿論、ここは日本語で書かれた書物などない。
鑑定という生活魔術で何なく雰囲気的な解読は出来ているけれど、しっかり読み込むには文字を覚える必要がある。
……キィや恵は覚えて、書物を理解出来ているのだろうか。
「……私も……」
このままこの世界で暮らすのならば、文字を覚えない事には苦労すると理解している私も、少し勉強しよう。
65
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる