【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

18.琴子も一緒に

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 護衛騎士の査定に響くとか……?
 ロランは小さく舌打ちを打つ。

「ロラン」
「良いよなデイルは。大人しそうな聖女候補様で」

 咎めたデイルにロランはそんな言葉を口にした。
 決めたのは国王だろうに。というか、そんな事を言われたら恵が傷つくのではと、私は恵の方を見ると平然としていた。

「気に入らないなら、とっとと王の元へでも帰れば?」
「っ!」

 ロランは言葉に詰まり、デイルは深く溜息を吐いた。
 そんな事は出来ないだろう。だって護衛騎士としての仕事を放棄したという事なのだ。
 贈り人を守り、逃がさない為の監視を含んでいるだろう、国王直々に下された任務を捨てる。それがどれだけ愚かな事なのか、まだ学生で異世界人の私でも想像できる。

「何を騒いでるの……?」

 険悪な雰囲気に水を差すよう声をかけてきたのは琴子だった。

「ロラン……お前……」

 会話が聞こえていたのだろうか、琴子についているアンドリューは眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げている。表情から怒りが込み上げているのが、よく分かる。

「……申し訳ありません」

 苦虫を噛み潰したような顔をしながらだったけれど、多勢に無勢だと感じたのか、恵に対して素直に頭を下げた。
 それに対して恵は表情を崩す事もなければ視線を向ける事もなかったけれど。
 ……帰る事以外は、心底どうでも良いのだろうなと思いながら琴子へと声をかける。

「えっと……図書館で勉強を?」
「あ、貴族階級についての宿題があったでしょう? それを調べに」

 あったっけ。そんなの。
 背筋に冷や汗が流れるものの、最悪勉強に置いていかれるだけだ。どこかで巻き返せば良い。
 ……忘れていた自分に対して自己嫌悪はあるけれど。
 意外と楽しい魔法陣制作。というか古代語にくらいついていた感はあるけれど。

「……それは?」

 恵の前に描かれている魔法陣を覗き込むようにして琴子がたずねた。
 興味津々だという事が分かる。
 ……確かに日本ではなかった魔術に神力、挙句魔法陣とくれば、皆が皆、好奇心に駆られるのは必然なのだろう。

「興味あるなら協力して」

 高圧的だけれど、しっかり琴子の瞳を見て恵は言った。

「色んな視点から見てもらえた方が、色んな意見が出てくるもの。私は絶対諦めないから」

 恵の言葉に、アンドリューの表情が更に険しくなる。
 けれど、琴子は分かっているけど、とばかりに申し訳なさそうに口を開く。

「私は……帰りたくないけれど……興味はある……」
「……それで良いわよ」

 琴子は帰りたくないのか。
 キィは……どうなのだろう。親が恋しくないのだろうか。
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