【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第四章

01.いつもとは違う日常

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 いつもの日常……というには少し疑問の残る時間が戻って来た。
 訓練という訓練があるわけでもなく、私達はのんびり過ごさせてもらっている……そう、真もだ。

「うん、暇」

 私の部屋にいきなりやってきたかと思えば、真はぐだーっと机の上に突っ伏して、ずっと暇という言葉を繰り返している。
 私とデイルは、そんな真に対して呆れた目をして眺めているのだけれど、特に何か言う事はしない。
 ……暇ならば有意義に過ごせば良いのにとは思うものの、思う所はあるからだ。

 あの戦争以来、真に対する周囲の扱いは私の目から見ても変わった。
 真に対して、私達以上に敬意を払うようになった周囲は、今まで押し付けていた下働きすらもなくしたのだ。
 ……そりゃ、あれだけ動き回ってこなしていた雑用の時間がなくなれば、そりゃ暇だろうけど……。

「落ち着かない……」

 真は居心地が悪そうにソワソワしている。
 衣食住付きの仕事から、いきなりお客さんに待遇が変わったようなものだしなぁ。
 人が手の平を返す時は、こんなものなのかと、いっそ尊敬すら覚える。したくもない尊敬だが。

「瑞希~」
「あ、真もここに居た」

 勝手知ったる部屋とばかりに、ノックもせず入って来た琴子とキィ。
 いや、別に良いけどね、この二人に関しては。ただ、私の部屋は集合場所かと言いたい。

「暇なんだよー」
「街も行き飽きた?」
「今までが忙しすぎたのよ」

 キィと琴子も椅子に座り、真の愚痴を聞いては溜息を吐いた。

「しかし、もの凄く対応が変わったわね。胸糞悪いくらいに」
「大人って醜い」

 真とキィ、琴子にお茶を持ってきた侍女は、その言葉を聞いてビクリと身体を震わせた後、震える手で皆の前にお茶を置いていく。
 ……身に覚えがあるんだろうなぁと冷ややかな瞳で見つめる。
 特に真の前へお茶を置く時なんかは怯えさえも見せていたから、蔑ろにしていた心当たりがあるんだろう。
 当の本人である真は全く気にしていないというか、気付いてさえもいなさそうだけれど。

「……暇と傅かれるのは苦手だなぁ」
「何故その二つ……」

 ある意味で共通点のない二つが真によってチョイスされ、私は苦笑した。

「でも……さ。聖女って女がなるものでしょ? 真の力に文句はないけどさ」
「確かに真は私達以上に力を持ってるものね」

 もう聖女の地位に拘りなどなくなったのか。キィは普通に疑問だと言った感じで首を傾げ、琴子も同調する。

「今、王家や神官達で贈り人の文献を調べているそうですよ」

 その答えを返してくれたのはアンドリューだったけれど、私はどうでも良いのでは? という感想しか浮かんでこなかった。
 
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