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第四章
04.真の追放
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うわっとか。
うげっとか。
行きたくないなんて言葉は以ての他で、心では思うものの口には出せない。
建前上というか、確実に私達の返事は「はい」以外ありえないのだ。
来いと言われれば行くだけである。
登城する為の用意をして馬車へと向かえば、そこには一足先に着いていた真が居た。
「真っ!」
「遅かったな」
「女は時間かかるんです!」
お風呂や着替えは同じだとしても、ヘアセットとメイクがね。
面倒くさいこと、この上ない。
身を清めないといけない程に尊い人物だとは思えないんだけど。なんて事は口が裂けても言わないけれど。
「王命じゃなければなぁ」
「めんどくさ」
憂鬱でしかないというのは四人の共通事項だろう。
安全を第一にされた馬車はゆっくりと王城へと向かい、私達はそのまま国王陛下が待つ謁見の間に連れて行かれる。
――ギィイイッ!
騎士が二人かかりで、大きくて重い扉を開く。
その先は長いレッドカーペットが引かれ、国王が座る玉座へと続く。
レッドカーペッドの両サイドに居るのは国の貴族達だろうか。またしても大勢集まってきたなと、この世界へ最初に落ちて来た日を思い出す。
あの時は見事な見世物と化しており、好奇の目に晒されていたけれど……今日はどこか違う。
鋭い視線、侮蔑めいた瞳が集まってくる。
「何……?」
異様さに気が付いたのか、琴子が小声で聞いてきたが、私が答えを知っているわけがない。
四人横に並んで国王の元まで行って、跪く。
これは先に枢機卿から教えてもらったマナーだ。
顔を上げろと言われるまでは顔を上げてはいけないとか。一連が流れとして続くならば、国王がそう声をかけてくる筈だと思っていたのだけれど……。
「ふんっ」
いきなり鼻で笑われた。
……失礼にも程があるんじゃないか、おい。
呼ばれたから、わざわざ来たのに、この扱いって。
「顔を上げろ」
その言葉と共に静かに顔を上げると、視線の先には嘲笑うかのような表情をしている国王が居た。
「聖女任命……か。聖女などと笑わせてくれる」
「国王陛下!」
国王の側に立っていた人物が慌てたように声をかけるも、国王の鋭い視線を浴びて一歩後ろへと後ずさる。
それを見届けた国王は、またもこちらに視線を向けるが、馬鹿にするような……見下す顔つきだ。聖女任命を行うようには見えないどころか、私達をどこか馬鹿にしているように見える。
「お前なんぞ悪魔の間違いではないか? ……そんな文献は一切残っておらん!」
完全に言い切った国王は、更に真へと思いがけない言葉を浴びせた。
「マコト! お前は国から追放する!」
うげっとか。
行きたくないなんて言葉は以ての他で、心では思うものの口には出せない。
建前上というか、確実に私達の返事は「はい」以外ありえないのだ。
来いと言われれば行くだけである。
登城する為の用意をして馬車へと向かえば、そこには一足先に着いていた真が居た。
「真っ!」
「遅かったな」
「女は時間かかるんです!」
お風呂や着替えは同じだとしても、ヘアセットとメイクがね。
面倒くさいこと、この上ない。
身を清めないといけない程に尊い人物だとは思えないんだけど。なんて事は口が裂けても言わないけれど。
「王命じゃなければなぁ」
「めんどくさ」
憂鬱でしかないというのは四人の共通事項だろう。
安全を第一にされた馬車はゆっくりと王城へと向かい、私達はそのまま国王陛下が待つ謁見の間に連れて行かれる。
――ギィイイッ!
騎士が二人かかりで、大きくて重い扉を開く。
その先は長いレッドカーペットが引かれ、国王が座る玉座へと続く。
レッドカーペッドの両サイドに居るのは国の貴族達だろうか。またしても大勢集まってきたなと、この世界へ最初に落ちて来た日を思い出す。
あの時は見事な見世物と化しており、好奇の目に晒されていたけれど……今日はどこか違う。
鋭い視線、侮蔑めいた瞳が集まってくる。
「何……?」
異様さに気が付いたのか、琴子が小声で聞いてきたが、私が答えを知っているわけがない。
四人横に並んで国王の元まで行って、跪く。
これは先に枢機卿から教えてもらったマナーだ。
顔を上げろと言われるまでは顔を上げてはいけないとか。一連が流れとして続くならば、国王がそう声をかけてくる筈だと思っていたのだけれど……。
「ふんっ」
いきなり鼻で笑われた。
……失礼にも程があるんじゃないか、おい。
呼ばれたから、わざわざ来たのに、この扱いって。
「顔を上げろ」
その言葉と共に静かに顔を上げると、視線の先には嘲笑うかのような表情をしている国王が居た。
「聖女任命……か。聖女などと笑わせてくれる」
「国王陛下!」
国王の側に立っていた人物が慌てたように声をかけるも、国王の鋭い視線を浴びて一歩後ろへと後ずさる。
それを見届けた国王は、またもこちらに視線を向けるが、馬鹿にするような……見下す顔つきだ。聖女任命を行うようには見えないどころか、私達をどこか馬鹿にしているように見える。
「お前なんぞ悪魔の間違いではないか? ……そんな文献は一切残っておらん!」
完全に言い切った国王は、更に真へと思いがけない言葉を浴びせた。
「マコト! お前は国から追放する!」
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