【完結】婚約破棄された悪役令嬢は攻略対象のもふもふ従者に溺愛されます

かずきりり

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38.敵意はありません

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「え、本当に……本当に大丈夫なんですか!?」
「危険な相手だったら、気を失ってる間に死んでると思うけど……」
「さらっと怖い事言わないで下さいよ!」

 店主とフィンの声が聞こえる。もう目が覚めたらしく、皆が集まっている所へやってきた。言い合ってる内容が内容なだけに、獣人達が不快になってないかと不安になったが、ほとんどの獣人が確かに、その通りだと言いながら笑いをこらえてる。うん、平和だ。

「こちらへどうぞー」

 両親と同じテーブルに誘うと、貴族様と同じ席は!と断りが入るも、周囲を見回した後に力強くお願いします!と頭を下げてきた。うん、断ったら他は獣人しか居ないからね。でも、その席には……。

「え……魔獣……?」

 店主は椅子へ座った後に、お母様の膝で休むまーくんの姿を見て固まった。お母様は可愛いわよね、なんて言って微笑んでる。
 とりあえず意識を料理へ向かせようと、今日作った物をワンプレートの盛り合わせ状態にして目の前に置いた。しばらく料理と魔獣に対し交互へ視線を彷徨わせていたが、お父様の温かいうちの方が美味しいぞ、という一言で魔獣の事は意識的に排除したかのように料理を口に運んだ。

「美味しい!」

 店主は一口食べたら、魔獣や獣人の存在なぞ忘れたように、一心不乱に食べ続ける。その様子をお父様やお母様はにこやかに眺め、獣人達もだよなーと言いながら食べ進める。

「このレシピも売ってもらえませんか!?」
「これも美味しいわよ」
「本当ですか!?いただきます!」
「こっちもお勧めだ」
「ありがとうございます!」

 お母様が別の料理を進めると、便乗したようにエアロまでも悪戯っ子のように、別の料理を勧めた。素直に受け取った店主は、口に運んだ後、エアロの存在に気が付いて一瞬固まった。しかし、そんなエアロに対してロアが脅かしたらダメだよ!なんて言って笑い合ってるのを見て、店主は目を丸くして驚いている。

「……人間と大差ないわよ」

 お母様がそう言って、膝に居る魔獣を撫でると、魔獣もその手に頭を擦り付けて甘えている。その様子にも店主は一瞬驚いたけれど、戸惑いつつも言葉を吐き出した。

「……そうですね……皆同じかもしれませんね……怖いですけど」

 最後、呟くように言った言葉だったけれど、獣人の皆さん、耳は良い。

「俺らも人間怖いぞ!?」
「シア達は別なだけで」
「まぁ色んな奴が居るって事じゃないか?」
「良い人間も多そうよね、知らないだけで」
「それに、その料理は私達が作ったものでもあるのよー?」

 そう言って笑い合う獣人の皆さんは、本当に人間と変わらない。
 店主は、その様子に瞬きをしながら、そうですね。と言って、目の前の料理に再び口をつけた。ゆっくり、味わうように。

「皆、好意的で良かったわね」
「そうだね」

 そう言うと、フィンは微笑んで、その様子を眺めていた。
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