83 / 88
83.種族を超えた絆
しおりを挟む
「ダリスに変な女を寄越そうものなら許さないから」
一瞬にして空気が凍った。
まさかのフィンから……聖獣からのお言葉だ。視線を彷徨わせる貴族や、俯く大臣達が見える。ただでさえ王太子妃の座を狙う人は多かった筈。更に聖獣から国王にと言われたのであれば、今すぐにでも跡継ぎを!という気持ちが急いても仕方ない。それが貴族というものだし、中には我が娘こそ!と思っていてもおかしくはない。大臣達に至っては隣国の姫君を含め数人ピックアップしていてもおかしくなさそうだ。
「……人間は不貞を働きすぎだからな。不貞を働くなど言語道断。政略にすればするだけ不貞を犯す確率は増えるだろう」
「フィン!」
国王陛下を視線を定め、睨みつけているフィンに対して咎めるような口調で呼ぶ。地味に古傷抉られてるから!好きではなくても、相手に不貞働かれると、プライドとか色々傷ついてるから!一応!自分の価値めっちゃ下がった気するから!思い出させないで欲しい。
「これで擦り寄るだけしか能のない貴族は淘汰されると思う」
ボソリと返すフィンの言葉に、一応王太子殿下の事を考えて言ってくれたのだと思える。
まだ見ぬ子孫の為にと思い、血を……地位やお金を後世へ残す事は確かに貴族の務めとも言えるが、脳がなければ民の上に立つ貴族として全く意味がない。擦り寄るしか出来ない寄生虫は、むしろ害悪とも言える。それらが王太子殿下につかないよう、あえて先に牽制したのだろう。
……本当に優秀です……。聖獣様々です。
流石、人間の臨機応変さと言う所だろうか。地位を持つ貴族達が各々に動き出し始める。王都に住む民達も、危険はないと判断し、決まった事はまた国から報告されるだろうと各自いつもの日常へ戻っていく。
「シアー!無事!?」
「フィン!お疲れ!」
獣人達もこちらに追いついて、合流してくる。すれ違う騎士達が獣人や魔獣達に剣を向けない辺り、少しは考えが変わってくれていると思える。
……危害を加えなければ、害はない。はるか昔はそんな時代があったと言われているけれど、これからまたそんな時代が来れば良い。
「こっちは大丈夫!皆ありがとう!」
だって、皆こんなに心優しいのだ。心配して追いかけてきてくれる程に……。
「え!?シア泣いてる!?」
「何もしてないぞ!?」
思わず涙ぐんでしまったらしく、皆が慌てる。特に一部の獣人達はフィンに対して必死に弁明している。
「……嬉しくて」
私が放ったその一言に、皆が何言ってんだ!当たり前だろ!と声をかけてくれる。
ワイバーンという強いものが現れたのに、逃げるではなく心配して来てくれる、その心が……優しさや温かさに嬉しさを隠しきれなかった。
一瞬にして空気が凍った。
まさかのフィンから……聖獣からのお言葉だ。視線を彷徨わせる貴族や、俯く大臣達が見える。ただでさえ王太子妃の座を狙う人は多かった筈。更に聖獣から国王にと言われたのであれば、今すぐにでも跡継ぎを!という気持ちが急いても仕方ない。それが貴族というものだし、中には我が娘こそ!と思っていてもおかしくはない。大臣達に至っては隣国の姫君を含め数人ピックアップしていてもおかしくなさそうだ。
「……人間は不貞を働きすぎだからな。不貞を働くなど言語道断。政略にすればするだけ不貞を犯す確率は増えるだろう」
「フィン!」
国王陛下を視線を定め、睨みつけているフィンに対して咎めるような口調で呼ぶ。地味に古傷抉られてるから!好きではなくても、相手に不貞働かれると、プライドとか色々傷ついてるから!一応!自分の価値めっちゃ下がった気するから!思い出させないで欲しい。
「これで擦り寄るだけしか能のない貴族は淘汰されると思う」
ボソリと返すフィンの言葉に、一応王太子殿下の事を考えて言ってくれたのだと思える。
まだ見ぬ子孫の為にと思い、血を……地位やお金を後世へ残す事は確かに貴族の務めとも言えるが、脳がなければ民の上に立つ貴族として全く意味がない。擦り寄るしか出来ない寄生虫は、むしろ害悪とも言える。それらが王太子殿下につかないよう、あえて先に牽制したのだろう。
……本当に優秀です……。聖獣様々です。
流石、人間の臨機応変さと言う所だろうか。地位を持つ貴族達が各々に動き出し始める。王都に住む民達も、危険はないと判断し、決まった事はまた国から報告されるだろうと各自いつもの日常へ戻っていく。
「シアー!無事!?」
「フィン!お疲れ!」
獣人達もこちらに追いついて、合流してくる。すれ違う騎士達が獣人や魔獣達に剣を向けない辺り、少しは考えが変わってくれていると思える。
……危害を加えなければ、害はない。はるか昔はそんな時代があったと言われているけれど、これからまたそんな時代が来れば良い。
「こっちは大丈夫!皆ありがとう!」
だって、皆こんなに心優しいのだ。心配して追いかけてきてくれる程に……。
「え!?シア泣いてる!?」
「何もしてないぞ!?」
思わず涙ぐんでしまったらしく、皆が慌てる。特に一部の獣人達はフィンに対して必死に弁明している。
「……嬉しくて」
私が放ったその一言に、皆が何言ってんだ!当たり前だろ!と声をかけてくれる。
ワイバーンという強いものが現れたのに、逃げるではなく心配して来てくれる、その心が……優しさや温かさに嬉しさを隠しきれなかった。
36
あなたにおすすめの小説
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される
黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」
無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!?
自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。
窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」
そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。
――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで
「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」
と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。
むしろ彼女の目的はただ一つ。
面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。
そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの
「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。
――のはずが。
純潔アピール(本人は無自覚)、
排他的な“管理”(本人は合理的判断)、
堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。
すべてが「戦略」に見えてしまい、
気づけば周囲は完全包囲。
逃げ道は一つずつ消滅していきます。
本人だけが最後まで言い張ります。
「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」
理屈で抗い、理屈で自滅し、
最終的に理屈ごと恋に敗北する――
無自覚戦略無双ヒロインの、
白い結婚(予定)ラブコメディ。
婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。
最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。
-
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
白い結婚のはずでしたが、いつの間にか選ぶ側になっていました
ふわふわ
恋愛
王太子アレクシオンとの婚約を、
「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された
侯爵令嬢リオネッタ・ラーヴェンシュタイン。
涙を流しながらも、彼女の内心は静かだった。
――これで、ようやく“選ばれる人生”から解放される。
新たに提示されたのは、冷徹無比と名高い公爵アレスト・グラーフとの
白い結婚という契約。
干渉せず、縛られず、期待もしない――
それは、リオネッタにとって理想的な条件だった。
しかし、穏やかな日々の中で、
彼女は少しずつ気づいていく。
誰かに価値を決められる人生ではなく、
自分で選び、立ち、並ぶという生き方に。
一方、彼女を切り捨てた王太子と王城は、
静かに、しかし確実に崩れていく。
これは、派手な復讐ではない。
何も奪わず、すべてを手に入れた令嬢の物語。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる