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「ミオ!?」
殺してと言って俯き泣いている私を見て、ロドさんは起き上がろうとしたが、なかなか身体が言う事をきかないようで、痛みに耐えるかのように動けなくなった。
「ロド様!」
「離せ!」
ロドさんをベッドに寝かそうとしたハイルさんの手を払い、起き上がると私を抱きしめた。
「何でそんな……違う……」
強く抱きしめられ、ロドさんは私の首筋に顔を埋めるようにしている為、その表情は見えないが、泣いているかのように肩を震わせている。
「殺すとか……どうしてそうなるんだ!違う!!」
「ロド様!?」
振り絞った声をあげるロドさんの身体がいきなり光り、その光景にハイルさんが驚きの言葉をあげる。
顔をあげて私を見つめるロドさんの顔に痣はなく、私は安堵の息をついたが、ハイルさんからは息を呑むかのような声が聞こえた。
「どうして……そうなる?ミオ」
「だって……私は生贄なのでしょう?」
目の前にはいつもの微笑みを向けてくれるロドさんが居て、思わず涙ぐむ。
苦しみも痛みも今はないか、痣は戻ったのか、呪いは一体どうなっているのか。涙と共に次から次へと言葉も出てくる。
いつもならば人の顔色を見て、頷いているだけで、自分から何かを発する事なんてなかったけれど……いや、ここまで心が揺るがされる事がなかったとも言える。
楽しい、怒り、憎しみは勿論、悲しみ、心配、不安といった感情に支配されて、自分を保てないなんて事はなかったと、どこかで自分を第三者と見ている冷静な脳で振り返り、思う。
そっと髪を撫でる感触に、ロドさんの優しい笑顔に、安心する心と共に少しだけ心拍数が上がり息苦しさに支配される。
「ミオ、生贄で殺すってどういう事?」
「……そう教えていただきました……」
私が知っていてはいけない事なのだろうか。
でも先ほどロドさんは違うと必死の様子で私に訴えていた。何が本当なのだろうか。
少し俯いた私をロドさんは抱き寄せる。その間にロドさんが厳しい目つきをハイルさんに送り、ハイルさんが頷いて部屋から出て行った事にも気がつかず、更に増えた心拍数に顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
「ミオは僕を信じてなかったの?」
「えっ!?」
悲しそうな声で問うロドさんに、驚きの声をあげてしまう。
「だって、生贄として殺されるって話を信じたんでしょう?僕はただ一生隣に居てくれるだけで良いって言ったのに……」
そう言われて、気が付く。むしろ言われないと気がつかなかった。
人付き合いをマトモにしてこなかったからか、不安な方に人は傾くのか。
どちらにしろ、結果的にはロドさんを信用せず、見ず知らずの女性を信じた事になるのだと、私はこの時に気がついた。
殺してと言って俯き泣いている私を見て、ロドさんは起き上がろうとしたが、なかなか身体が言う事をきかないようで、痛みに耐えるかのように動けなくなった。
「ロド様!」
「離せ!」
ロドさんをベッドに寝かそうとしたハイルさんの手を払い、起き上がると私を抱きしめた。
「何でそんな……違う……」
強く抱きしめられ、ロドさんは私の首筋に顔を埋めるようにしている為、その表情は見えないが、泣いているかのように肩を震わせている。
「殺すとか……どうしてそうなるんだ!違う!!」
「ロド様!?」
振り絞った声をあげるロドさんの身体がいきなり光り、その光景にハイルさんが驚きの言葉をあげる。
顔をあげて私を見つめるロドさんの顔に痣はなく、私は安堵の息をついたが、ハイルさんからは息を呑むかのような声が聞こえた。
「どうして……そうなる?ミオ」
「だって……私は生贄なのでしょう?」
目の前にはいつもの微笑みを向けてくれるロドさんが居て、思わず涙ぐむ。
苦しみも痛みも今はないか、痣は戻ったのか、呪いは一体どうなっているのか。涙と共に次から次へと言葉も出てくる。
いつもならば人の顔色を見て、頷いているだけで、自分から何かを発する事なんてなかったけれど……いや、ここまで心が揺るがされる事がなかったとも言える。
楽しい、怒り、憎しみは勿論、悲しみ、心配、不安といった感情に支配されて、自分を保てないなんて事はなかったと、どこかで自分を第三者と見ている冷静な脳で振り返り、思う。
そっと髪を撫でる感触に、ロドさんの優しい笑顔に、安心する心と共に少しだけ心拍数が上がり息苦しさに支配される。
「ミオ、生贄で殺すってどういう事?」
「……そう教えていただきました……」
私が知っていてはいけない事なのだろうか。
でも先ほどロドさんは違うと必死の様子で私に訴えていた。何が本当なのだろうか。
少し俯いた私をロドさんは抱き寄せる。その間にロドさんが厳しい目つきをハイルさんに送り、ハイルさんが頷いて部屋から出て行った事にも気がつかず、更に増えた心拍数に顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
「ミオは僕を信じてなかったの?」
「えっ!?」
悲しそうな声で問うロドさんに、驚きの声をあげてしまう。
「だって、生贄として殺されるって話を信じたんでしょう?僕はただ一生隣に居てくれるだけで良いって言ったのに……」
そう言われて、気が付く。むしろ言われないと気がつかなかった。
人付き合いをマトモにしてこなかったからか、不安な方に人は傾くのか。
どちらにしろ、結果的にはロドさんを信用せず、見ず知らずの女性を信じた事になるのだと、私はこの時に気がついた。
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