19 / 56
19.
「毒の無効化は作れても、状態異常全般とするには、まだ研究が必要だなぁ」
「物理攻撃減少以外にも、魔法効果の対策が欲しいですねぇ」
あれから、日中はずっと師匠と魔法具作りに精を出している。
既に毒無効、物理攻撃減少だけでなく、よく眠れる、体調不良減少等の魔法具まで作っては師匠が手渡していた。
最初は男からの度重なるプレゼント、挙句に魔法具という事で、実験台を懸念していた王太子殿下だった。けれど、どこかに私の猫姿モチーフを入れると何故か喜々として身に着け始めたのだ。……複雑でしかない。
「簡単なところで集中力増加とか……」
「これ以上、仕事漬けにするのも……」
私の言葉に師匠が苦笑いを示した所で、魔法棟の中が騒がしい事に気が付いた。
「……なんでしょう?」
人々の驚きや悲鳴と言った声。それが判別できるくらいに、騒動の元が近づいてきた頃には、その足跡すらも耳に入った。
……どうやら、走っていると思える程の早歩きをしてのは理解したけれど……。
そんなに急ぐ事が、この魔法棟の中に?走らないという事は、貴族?
師匠と目を合わせて首を傾げていると、この部屋の扉が、バンッ!と勢いよく開いた。
「イル! 迎えに来たぞ!」
「!?」
「え」
王太子殿下が少し息を切らしながらも、平然そうな顔をして言い放つ。私は、あまりの事に硬直した。
……え?今、まだ仕事中じゃ……。
そんな私の声が聞こえたかのように、否、師匠自身も疑問に思ったのだろう、王太子殿下に問いかけた。
「お仕事はどうされたのですか?」
「早く終わったから、急いでイルを迎えに来た! もう自室へ戻るからな! 護衛を連れて行かねば!」
なんという事だ。
そして、一応護衛という事は覚えていたのか。しかも主にプライベートタイムでの護衛だと知っていたからこそ、わざわざ迎えに来たと……?……愛でる為に?
「……イルをもふりたくて仕事を早く終わらせた気しかしませんねぇ……」
師匠が呟いた言葉に、それしかないと思える。
とりあえず、王太子殿下が私に意識を向ける前に、部屋から脱出したい。そしてどこかで猫になりたい。
そんな事を思いながらも、足が動かない。視線を足元へ少し向けると、立ちすくんでいる自分の身体が、小刻みに震えているのが分かった。
――人の姿で、見知らぬ人の前に出る事が、こんなにも怖くなったのか。
そもそも伯爵家に居た時から、私が接してきた人間というのは少なく、唯一師匠だけが味方だ。魔法具屋の店主、ギルドの受付嬢などは、害がないだけで味方とは言い切れない存在なのだから。
「物理攻撃減少以外にも、魔法効果の対策が欲しいですねぇ」
あれから、日中はずっと師匠と魔法具作りに精を出している。
既に毒無効、物理攻撃減少だけでなく、よく眠れる、体調不良減少等の魔法具まで作っては師匠が手渡していた。
最初は男からの度重なるプレゼント、挙句に魔法具という事で、実験台を懸念していた王太子殿下だった。けれど、どこかに私の猫姿モチーフを入れると何故か喜々として身に着け始めたのだ。……複雑でしかない。
「簡単なところで集中力増加とか……」
「これ以上、仕事漬けにするのも……」
私の言葉に師匠が苦笑いを示した所で、魔法棟の中が騒がしい事に気が付いた。
「……なんでしょう?」
人々の驚きや悲鳴と言った声。それが判別できるくらいに、騒動の元が近づいてきた頃には、その足跡すらも耳に入った。
……どうやら、走っていると思える程の早歩きをしてのは理解したけれど……。
そんなに急ぐ事が、この魔法棟の中に?走らないという事は、貴族?
師匠と目を合わせて首を傾げていると、この部屋の扉が、バンッ!と勢いよく開いた。
「イル! 迎えに来たぞ!」
「!?」
「え」
王太子殿下が少し息を切らしながらも、平然そうな顔をして言い放つ。私は、あまりの事に硬直した。
……え?今、まだ仕事中じゃ……。
そんな私の声が聞こえたかのように、否、師匠自身も疑問に思ったのだろう、王太子殿下に問いかけた。
「お仕事はどうされたのですか?」
「早く終わったから、急いでイルを迎えに来た! もう自室へ戻るからな! 護衛を連れて行かねば!」
なんという事だ。
そして、一応護衛という事は覚えていたのか。しかも主にプライベートタイムでの護衛だと知っていたからこそ、わざわざ迎えに来たと……?……愛でる為に?
「……イルをもふりたくて仕事を早く終わらせた気しかしませんねぇ……」
師匠が呟いた言葉に、それしかないと思える。
とりあえず、王太子殿下が私に意識を向ける前に、部屋から脱出したい。そしてどこかで猫になりたい。
そんな事を思いながらも、足が動かない。視線を足元へ少し向けると、立ちすくんでいる自分の身体が、小刻みに震えているのが分かった。
――人の姿で、見知らぬ人の前に出る事が、こんなにも怖くなったのか。
そもそも伯爵家に居た時から、私が接してきた人間というのは少なく、唯一師匠だけが味方だ。魔法具屋の店主、ギルドの受付嬢などは、害がないだけで味方とは言い切れない存在なのだから。
あなたにおすすめの小説
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
清く正しく美しくをモットーに生きてます!
ユウ
恋愛
子爵家令嬢フレデリカは下級貴族出身でありながらも芸術に精通し政治が語れ、詩が読める優秀な令嬢だった。
しかし、社交界では保守的な男性からは疎まれていた。
男尊女卑が未だに根強い国では、女性が学問や政治に興味を持つ事ははしたないとされていたからだった。
特にフレデリカの婚約者のローガスは事あるごとに蔑んだ目を向け、親友の妹のアマンダと比較をしては蔑んで来た。
「淑女が学問をするなどはしたない。少しはアマンダを見習ったらどうだ」
男爵令嬢のアマンダは妖艶な容姿で社交界では有名だった。
対するフレデリカは社交界で地味令嬢と言われ馬鹿にされていた。
「お前さえいなければ俺はこんな惨めな思いをする必要はなかったんだ!」
事あるごとに自分は犠牲になったとフレデリカを責めるローガスについに耐え切れなくなったフレデリカは婚約解消を考えていた矢先、王命により婚約が解消されると告げられた。
ローガスは両手を上げて喜んだのだが、婚約解消には裏があることを知らなかった。
ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢クリスティナは、ここが前世で遊んだ学園ゲームの世界だと気づいた。そして自分がヒロインのライバルで悪役となる立場だと。
のんびり暮らしたいクリスティナはゲームとは関わらないことに決めた。設定通りに王太子の婚約者にはなってしまったけれど、ゲームを回避して婚約も解消。平穏な生活を手に入れたと思っていた。
けれど何故か義弟から求婚され、元婚約者もアプローチしてきて、さらに……。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜
遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。
晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。
グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。