ロイヤル・タッチ ~婚約破棄されスラムに追放された鉄仮面の元王子は、ならず者達に慕われ反乱の兵を挙げる~

牧神堂

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初体験

第35話

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「ねぇ、ねぇってばぁ、アレン」
 我に返ってハッとしました。話し掛けられている。
「……あっ、トリアさん! す、すみません、ぼおっとしてました」
 傍らに立つトリアさんが僕の顔を覗き込んできます。ち、近い。
 それにしても、どアップで見るとその美しさに圧倒されます。

「アレン、疲れてるの?」
「ええ、まあ、多少は」
「そう……。私にもやって欲しかったんだけど……ダメかしら」
「えっ? 何をです?」
「口づけして胸触るあれ」
「ああ。トリアさんもどこか具合が悪いのですか?」

 心配になりました。
 一部に誤解があるようなのですが、人工呼吸と心臓マッサージはあらゆる症状に効くというものではありません。
 トリアさんの症状次第では別の対策が必要ですし、僕の知識では手に負えない可能性も大いにあります。
 その場合は正規のお医者さんに診てもらわなければなりません。

 僕の目を見つめるトリアさんの瞳が潤んでいます。
 顔も赤い。
 熱があるのでしょうか。

「ちょっと失礼します」
 僕はトリアさんの額に手を当てました。
「あっ……」
 トリアさんの唇から溜め息が漏れる。
「熱は……ないようですね」

 トリアさんは僕にしなだれかかってきました。
 立っているのもやっとなのでしょうか。
「苦しいの」
「えっ! どんな風にですか?」
「焦がれて息が詰まりそう」
 呼吸不全?
「動悸が激しくて胸が苦しい」
 心臓疾患?
「股間が疼く」
 婦人病?

「いつ頃からそうなりました?」
「ま、街に戻ってきてから……」
 トリアさんの膝がガクガクと震え、僕に身体を預けたまま脱力していきます。
 そのまま崩折れてしまうんじゃないかと、僕はトリアさんをギュッと抱きしめ支えました。
「あああああっ!!」
「だっ、大丈夫ですかっ?!」
 これは一刻の猶予もないのかもしれない。
 焦ります。

「ご、ごめんね。アレンのそばにいると、こうなるみたい……」
「僕の?」
「うん。胸がポワポワ熱くなってきて」
 よく分からなくなってきました。
 もしかしたら精神的なものなのでしょうか。
「二人で……交われば……よくなるかもしれない……」
 トリアさんは訴えかけるような眼差しで僕を見詰めます。
「…………」
「…………」
「でも、トリアさんの体がそんな状態なのに、無茶は……」
「逆よ。私きっと、アレンの昂ぶりを、熱い滾りを求め過ぎて、待てなくて、こうなってる」
 やっぱり原因は満たされない欲求への渇え。
 それを解消しなければ症状の改善は見込めないのかもしれない。
 それなら……。

「…………」
「アレン?」
 切なく哀願するトリアさんの瞳。
「……分かりました。やりましょう」
 心の準備はできていませんでしたが、僕は腹をくくりました。





 トリアさんの豊満な胸が激しく揺れる。
 髪振り乱し、肌をほんのり桃色に染めて。
 大胆に大きく開かれた伸びやかな両脚は、爪先立てて妖しく空に残像の軌跡を描く。
 僕は一生懸命トリアさんを突きながら、自分の不甲斐なさを感じていました。
 これで満足してもらえているのでしょうか。不安だ。
 でもトリアさんは顔を上気させ、荒い息を吐いている。
 いける。頑張ろう。
 僕は高揚する。
 
 トリアさんの吸い付くような白い肌。浮かぶ玉の汗。
 僕の背中に突き立てられる爪。
 筋肉は躍動し、二人の動きは速くなる。

「あっ……!」
 トリアさんの唇から小さな悲鳴が漏れる。
「うっ……!」
 僕も思わず呻く。
 言葉は交わさない。
 ただ熱く見つめ合うだけ。
 二人の息がピッタリと合う。

 もうトリアさんの息遣い以外何も聞こえない。
 二人だけの世界。

 ああ、トリアさんのしなやかな身体。 
 僕の動きにビクンと反応し、海老反りになる。脚が舞う。
 大きく息を吸ったトリアさんの胸が膨らむ。
 僕は包み込まれ、搦め捕られる。
 ねっとりと絡み付かれながらも、僕は必死で貫く。固く締め付けられる。
 ああ、トリアさん……凄い!

 
 目まぐるしく攻守交替。
 僕がトリアさんの後ろから激しく突く。
 トリアさんが上になり僕を翻弄する。 
 もつれて転がる。
 変幻自在に様々な型で交わる。
 気持ちいい……。

 ハァッ、ハァッ、ハァッ。
 トリアさんの呼吸が小刻みに早くなる。
 滝のように流れ落ちる汗。二人の汗が混じり合う。
 僕の全身全霊の突き上げに、身悶えるトリアさん。
 その美しい顔の眉間に寄った小さな皺。それは僕の攻めがもたらす苦悶によるものか。
 限界が近いのでしょうか。
 僕も、限界だ。

「あっ、ああっ!」
 トリアさんが切なそうに叫ぶ。
「ト、トリアさんっ! 僕っ、もうっ!」
「最後よ! 出し切って、あなたの全てを! 私に向けて吐き出すの!」
「はっ、はいっ!!」

 トリアさん……あなたは素敵だ。僕の心も晴れていく。
 ありがとうございます。


 僕は全精力を奔流のようにほとばしらせる。



 ついに力尽きました。もう動けない。
 それはトリアさんも同じのようです。
 二人とも地に転がって喘ぐ。
 でも、何という充足感。


 トリアさんが這うようにして近付いてきました。
「ねぇ、アレン。私達……何でこんなことやってるの?」
「えっ? トリアさんがやりたいって。約束でしたし」
「……まぁ、スッキリとはしたけど」
 



 トリアさんの脚技は本当に凄かった。
 キレのある多彩な蹴りが疾風のように次々と繰り出され、僕は避けるのに精一杯。
 それは剛と柔を取り混ぜた動き。
 そして、脚にばかり気を取られているとクロー攻撃が空を切り裂き飛んでくる。
 更に締め技も固め技も巧みな上に、僕の渾身の突きは軽く躱されてしまう。
 攻略は容易ではありませんでした。

 僕達の実力は伯仲していたようです。
 僕は技の全てを出し切って拳を交えることができた。
 本当に勉強になる、素晴らしく気持ちのよい組み手でした。
 おかげで武闘の勘をずいぶん取り戻せたような気がします。
 それにしてもトリアさんが欲求不満で具合が悪くなるほどこの対戦を切望していたとは。
 約束を果たすのが遅れて申し訳なく思います。


 広場の地面に横たわる僕らを夕陽が照らす。
 見物の人達の喝采の声。
 そういえば女性との組み手は僕、初めての体験でした。

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