家出した令嬢は自由気ままに『捕食』する!

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令嬢は少女の歌を聴くようです

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私たちは一山超えて、薬草がある平地にやってきたはずだった…。

「薬草どころか、植物ひとつ生えていないわ。本当に、こんなところに薬草が生えているの」

あたり一面、雪景色。見渡しても雪で、真っ白に覆われているだけで何もない。

「…おかしい………」

トワが何かを考え込んだ後、ふと呟いた。

「トワ?どうしたの?」
「ここの薬草、セキセツソウは寒い地域でも育つために、赤魔法の魔素を多く含む」

赤魔法は、熱を生み出す魔法なので、赤魔法の魔素は、熱エネルギーを多く含んでいる。

「つまり、雪の中でもその薬草の周りだけ雪が積もりにくいということかしら?」
「そういうことだ。…つまり、こんなに雪が積もっていること自体がおかしい。長い時を得て、育たなくなったか。それとも、誰かが刈り尽くしたか…」

刈り尽くす…

「トワが前来た時はどれくらいあったの?」
「遠くからでもわかるくらい、あたり一面にあった。到底、数人で刈り取れるはずがない。しかも、セツセキソウは、しばらく放っておけば、再び成長して花を咲かせると言われている。つまり、刈り取ったのはここ最近だ」

そうなのね…とても残念だ。けれどもせっかく此処まで来たし、諦めたくない!

「ねえトワ、もしかしたら、まだセツセキソウがあるかもしれないわ。探してみませんか?」

「あぁ、俺も少し気になることがあるし、周辺の調査も兼ねて探索するのも悪くねぇ」

「ふふ…」
「なんだよ、サルビア」
「いいえ、口調は悪いですが、なんだかんだ手伝ってくれるんだなあっと。優しいですね、トワさんは」
「…そんなことねえし…。…ほら、探索するぞ!!」
「そうですね!私は、こっちの方を見てきます」

そう言って、真っ白な雪景色の奥に、霞んで見える大木を指差した。止んでいた雪は、再び、雪が降り始めてきた。

「じゃあ、俺はサルビアと反対方向を当たってみる」
「わかりました。それでは、また1時間後に此処で良いですか?また、何かあったら…そうですね、花火でも打ち上げてください」
「適当だな…わかった、じゃあまた1時間後に此処で」

そういうと、トワは雪の中に消えた。言葉通り、調査をしに行ったらしい。


…………

私は、トワと別れた後、話し合った通り、大木を目指して歩いていた。普通に歩くだけでは、1時間で探索出来そうにもないので、緑魔法を使い風を使い、『疾風』した。

ん?この音は…

「♩ーー♩ーー♩ーー♬♬ー、・・・・・・ーーーーー・・・」

目標だった大木が目の前になると歌が聞こえた。誰かが歌っているようだ。
ハープの音色をそのまま口ずさんでいるような艶があり、儚い歌声は降りやまない雪の中でも遠くまで響いていた。

「きれい…」

到着すると、普通なら誰もいるはずのない大木の前で一人の少女が歌を歌っていた。少女は魔石が埋め込まれた首輪を付けていて、服も所々に穴が開き質素だった。銀色の瞳と髪を持ったその少女は雪の妖精に見えた。

近くに行くと、少女の歌声はより一層、艶やかに響き、何時までも浸っていたい気持ちになった。
しかし、少女は私に気づくと歌うことを止め、銀色の瞳で私をじっと見つめた。
少女の容姿と共に、なぜ彼女がここにいる理由や、首輪がついているか、など様々な疑問が頭を駆け巡ったが、謎めいている彼女の存在にただ「貴方は…」という言葉だけが口からこぼれた。

「これ?」

私が首輪を見ていたことに気づいたのか、そっと首輪の魔石を撫で「これは、首輪で、私たちが逃げないように主が付けているの」と説明した。

「そうなのね。…えと」

「貴方はどうしてここにいるの…」と話そうとしたとき、少女が先に言った。

「私はリナ。サルビア、貴方を待ってた」

「え?どういう…」

私は、「リナ」と名乗った少女の言葉の意味が分からなかった。雪はさらに激しくなった。再び少女を見ると銀色の髪をたなびかせて微笑んでいた。その姿は儚げで、雪とともに消えてしまいそうだった。












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