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51: 初デートだというのに、嬉し恥ずかし朝帰り♪
しおりを挟む「「ヘロー…エビバディ♪アィブゴートゥゴー…♪」」
ゆっくりと、ペダルを使って優しく音を響かせるピアノ。
譜面台にはカクテルグラス。ピアノの屋根に酒瓶片手に寝転がって歌うジュリアを載せて。
ピアノは優しくリズムを刻み、ジュリアの裏声の高音が、俺の声を追い抜いて重なり、寄り添って響く。
今は深夜1時か2時頃だろうか。
燦然と輝いていた灯火は疎らになり、客が殆んど居なくなった祭りは、酔い潰れた地元民と後片付けする地元民とその他少数でしっとりとした空気を作っていた。
「「マムー…♪ウーウウー♪♪」」
踊り疲れた俺が楽団の一人とピアノを代わったのはどのくらい前だったか…。
結構酔ってた俺は、いつものキャバレーではしゃぐみたいに、ピアノを弾かせろと楽団スペースに乗り込み、踊りたかったと喜ぶ青年と交代した。
そこから、ダンスのリズムにアレンジした王都の流行り歌やら、繁華街の定番曲を酔いに任せて数曲、がなり立てる様にピアノを掻き鳴らせば大盛況で。
いつの間にかジュリアも踊れるボーカルとして乱入してきて。
気が付けば二人で酒瓶片手に呑んでは歌い、呑んでは弾き、屋台を片付けて踊りに来た地元民達を踊らせまくった。
そうやって盛り上がっている内に、一人の青年がプロポーズを始めて、そうなると我も我もと後続が現れ…。
そして今、幸せの絶頂にいる3組のカップルの為に、しっとりとしたBGMを提供している所だ。
「「エニウェイ…ウィン…ブローズ♪」」
ちょっと、人を殺したとか母親に告解してる曲を流すのはどうかとも思ったが…、そろそろレパートリーが尽きてきて…。
まぁ、色々この歌が沁みてる人も多いみたいで良かった。
ポロ、ポロン♪と余韻を残して、ゆっくりと曲を〆れば、抱き合ったままカップル達がうっとりと揺れる。
さて、次は何を弾こうか……。
ーーーーー
ーーー
ー
「ジャジャジャーーン!ジャジャジャジャン!ジャジャジャジャン!ジャジャジャジャーン♪ダーララッタッタッタらたー♪♪」
頭がいーたーいーーー!!微かな光でも目に滲みるよーー!!
俺は大音量のピアノに掻き消されてどうせ聞こえないだろうと、口でも曲を口ずさみながら全身全霊で結婚行進曲を奏でた。
もう、口ずさまないと弾けないんですよ。身体がね、悲鳴をあげててね、脳味噌がね、眠たいよーって泣き言言ってるんですよ。
「まさか、初デートの〆が、他人の結婚式とはな…。」
なんて、後ろから鍵盤を魔法で照らしてくれてるジュリアが眠そうに目を擦りながら呟いたが、俺はピアノに集中してて全く気付かなかった。
港町の朝は早く、まだ夜明け前なのに参列者は結構多い。
特殊な餌を撒いて誘き寄せたイカ達が幻想的な光を灯す昏い海岸で今、合計6組の合同結婚式が行われており、どうしてもと乞われてピアノを担当しているのだ。
突然の事だったが、俺とジュリアの奏でる曲で盛り上がってプロポーズしてくれた人達なんだ、折角なら最後まで盛り上げたいと俺は快諾した。どうせ馬車は夜が明けないと走らないし、今から宿を取るのもなんだしね。
彼等の一生の思い出に俺も入れて貰えるのだからと、迎え酒で気合いを入れ直した俺は、ギシギシいう身体とガンガン響く脳味噌に鞭打って、最後まで式をピアノで彩った。
式の後は当然宴会で。
俺とジュリアは振る舞い酒を無礼にならない程度戴いて、御馳走の中で消化に良さそうなものを戴いて、色んな人に感謝され、気骨?を誉められ、別れを惜しまれながら馬車に乗り込んだ。
馬車にはすっかり忘れてた祭りでゲットしたぬいぐるみや景品が積まれており、そこに結婚式の参列者や新婚さんからお裾分けがドシドシ積まれていく。
「おめでとう!これも良かったら呑んでくれ!」
気の良い寝起きの酔っ払いがニコニコと未開封の酒を一緒に積んでくれたりするが、余りに疲れてた俺達は、彼が勘違いしていることに全く気付かなかった。
又来てくれよ!といった声に混じっておめでとう!とかお幸せに!とか聞こえて来たが、まさか一部の人に結婚式を挙げて今から新婚旅行に行くのだと勘違いされてるとは露も思わず、俺達はニコニコと手を振りながら港町を後にした。
馭者は笑いを堪えてぷるぷると震えていたが、それに気付く余裕がある筈もなく…。
ガトガトと揺れる馬車の上、大きな毛皮のコートに包まれた俺とジュリアはあっという間に意識を手放して、泥の様に眠ったのだった。
ー
ーーー
ーーーーー
「今日はありがとー……」
「んー……楽しかったけど、疲れたなぁ。ハハ…眠いけど、冷えただろーから風呂入ってから寝たほーがいいぞー…」
「んー…ジュリアもなー…」「おー…そだなー……」
馭者に起こされ、サービスで景品達を俺のぼろアパートに運んで貰いつつ、俺達は別れを惜しんだ。まぁ、別に寝て起きたら又会うんだけど、それでもやっぱり離れがたくて。後、凄く眠い。
ジュリアの大きなコートの中、二人で向かい合って抱き締め合い、このまま眠ってしまいたいと俺は考えた。
多分ジュリアもそうだろう。呼吸が少しずつ、長く、深くなっていく。
「じゃぁ!お二人さん!!又遊びに来てくれよな!!!」
チップを弾んだせいもあるのか、超絶御機嫌な馭者が爆弾みたいに大きな声で言い、笑顔で帰って行く。
その大声で我に返った俺達は、寝落ちする前にと慌てて別れたのだった。
あー…眠い………ん?しまった!ジュリアにプレゼントを用意してたのにすっかり忘れてたな……。
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