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夏休み領地篇

83: 地味令嬢の知らない何処かの一室。門番は束の間休息する。

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「ん?何だか外が騒がしいな。
 こんな時間に速駆けとは、何か有ったのかもしれん。
 様子を見てくるか……いや、向こうから来たか。」

……コツ、コツ、コッ…コンコン
「夜分申し訳ありません…。」

「構わん、入れ。何だ、何か有ったか?
 ……何?ムンストーン家から?
 ………………プッ…何だそりゃ。
 こんな時間に馬を飛ばした理由が兄妹喧嘩とは、随分と平和じゃないか。」

「おい、アレクサンドロ!
 お前日焼け抜きの魔法薬なんざ持ってないよな?
 何でも、ムンストーンの嫡男が妹の魔法薬を勝手に使ったのがバレて、
 今晩中に要ると、妹が屋敷が壊れる程暴れてるらしい。
 お礼するから持ってたら譲って下さい、だとよ。
 魔法薬って高いんだろ?
 ぇ?小金貨3枚?
 へー。流石、値が張るなぁ。
 そりゃ、そんなもん勝手に部屋漁って使われたんじゃ怒るよなぁ。
 ん?あー、俺も話したことあるよ。
 のほほーんとして、うんうん、確かに。
 拘らない、良い奴だよな。
 ははっ!そーだな。あいつの事だ、なーんも考えずに使って、忘れて、今頃ほとほと困ってるんだろうな。
 ははっ、そーなのか。大変だなぁ…。
 ああ、気にするな、お休みなさい。」

……キィ…パタン

「王都ならいざ知らず、この辺じゃ常備してるヤツも居ないだろうから難儀してるらしい。
 嫡男だけじゃなく、使用人総出で聞き回ってるらしいぞ。
 まぁ、近いとは言え、隣の辺境伯領まで聞きにくる位だもんなぁ。
 ……ん?アレクサンドロ、どうかしたのか?」

「いや、ちょっと。
 ……ムンストーンは二人とも妹だが…、…このタイミングはやっぱり…。
 …おい、いるか。」「はっ!ここに。」

「ぅゎ!アレクサンドロ!いきなり影を呼ぶなよ……心臓に悪いぞ。」

「スマン、レオンハルト。
 …おい、日焼け抜きの魔法薬、今夜中に手に入れれるか?」

「は、お望みであれば。何件か伝手はあります。」

「じゃぁ、頼む。」

「何種類かございますが、如何なさいましょう。
 金貨1枚程の飲み薬と、塗り薬が三種ほど。
 …一般的なのは小金貨3枚程度の塗り薬ですが。」

「おい、伯爵家嫡男と云えども、あののほほん男に金貨1枚は厳しいんじゃないか?謝礼も考えると…。」

「いや、金は受け取らなくて良い。俺の名前も出すな。
 …………………ん。このカードを添えて渡してくれ。
 そうだな、手に入るなら、塗り薬を念の為2個。
 飲み薬って塗り薬より効くのか?……ふーん。
 じゃぁ、飲み薬も1本届けてやってくれ。
 レディに夜更かしは辛いだろうから、なるだけ急いでやってくれ。」「御意に。」

「何だよ、随分と優しいじゃないか。ムンストーン令息と知り合いだったか?」

「別に。良いだろ。」



「……ふぅ~ん?」

「んだよ、ニヤニヤすんな!クソッ!
 だから相部屋は嫌なんだ。従兄弟だからって勝手に同室にしやがって!糞親父め。」



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