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冬、到来。

280: 地味令嬢、マネキンの気持ちを知る。

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キョロキョロしてる間に、やってきたのは、
プラチナ区域に店を構えてウン十年?百年?な老舗の仕立て屋だった。


こんなとこで何すんの??


「お待たせしました。……では、お嬢様、どうぞ此方へ……。」

トルソーに着せられた沢山のワンピースと共に入ってきた、白髪巻き毛の老紳士に誘導され、私だけ衝立の向こうに連れられる。

そこからはもう、私の意思なんて無かった。

マネキンとなった私は、
ひたすら試着してアレックスに御披露目され、
アレックスが頷けば細かいサイズ調整のメモを取られて脱がされて、
また、別のものを試着して………。

それが終わったと思ったら、若い男性従業員が沢山の布とワンピースやドレス、ブラウスなんかを大量に運んできて、

老紳士がアレックスに、この生地でこれとかどない?と
奨めるのを肌に当てられ、

アレックスが頷いたら右の従業員にポイ!
アレックスが首振ったら左の従業員にポイ!

お髪にこんな髪飾りはいかがでしょう?  ふるふる……ポイ!

此方はいかがです?  うんうん……ポイ!

リボンは?

靴は?

この靴は??

手袋も御座いますよ??

帽子も必要で御座いますからね……。

ファッションアイテムとしてのポーチも中々良いものです。

なんて続き、終わった頃にはぐったりだった。

まぁ、センスが良かったので、
良い買い物を……したと、……思おう。

小切手帳を出そうとピンキーに触れた手を、そっとアレックスが握り、アレックスの口許に運んで指先にキスをする。

そのまま、瞳だけで此方を見るもんだから、
どうしても顔が赤くなってしまう。

「フェロー……?俺に、君に服を贈る栄誉をくれる?」

んなぁーーーーー!

思わず、獅子王の誕生シーン並に叫ぶところだった。
今日のアレックスはヤバい。
私の心臓を壊しにかかってる。
取り敢えず、ハートブレイクキッズの登場シーンでも思い出して心を落ち着けよう。

「……フェロー?俺のおねだり、聞いてくれないのか?」

ふぁーーーーー!
前世で好きだったプロレスラーが私の心臓と一緒に砕け散った。

鼻血が出そうです。

少し困ったように眉を寄せて笑うアレックスの色気がヤバくて、
取り敢えずこくこくと頷いて、そっと鼻を擦る。

良かった、鼻血出てない。

「良かった……。今度の休暇にも、どれか着てくれたら嬉しいよ。」

はいはいはいはいはいはいはいはい……。

首がプルプルする系の人形みたいに頷く。

取り敢えず、今日出来てるやつは持って帰って、後は出来次第届けるように、とアレックスに言われて、老紳士がテキパキと片付けていく。

今日持って帰るものを、さっとマジックボックスに突っ込むと、
アレックスは私の手を取り、笑顔でエスコートしてくれる。

「あ、それと、今度の舞踏会、
 前回と同じくオニキスに頼んだから。顔覚えてるか?
 覚えてないなら、もう一度挨拶に行かすが。」

あ、つまり、顔さえ覚えてたら、当日いきなり迎えにくるんだ…。

羊のように無害そうな、
メガネを掛けた茶髪の男爵子息が脳裏に過る。

「大丈夫です。覚えてます。羊みたいな茶髪メガネの方ですよね」

私の言葉にアレックスがプッと笑う。

「良かった、じゃあ、大丈夫だな。さ、疲れたろう?
 少しお茶でも飲んでゆっくりしよう。」

そういってアレックスに連れていかれたのは、種々様々な動植物や魚などを眺めながらお茶とお菓子を楽しめる大きな動物園みたいなカフェだった。

ふぉーーすんごい!!


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