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真の主人公登場
01
しおりを挟むヴァニタス・アッシュフィールド、14歳。
……の、朝は早い。
夜明け前に起きて、顔を洗って身支度。
スピルスが定期的に俺のサイズに会わせて送ってくる、純白の司祭服と赤いストラを纏い、クセはないが重めの黒髪をハーフアップにしておでこを出す。
年を重ねれば重ねる程に悪人面になっていく顔の印象を少しでも和らげようという工夫だ。
地下水脈を制圧した10歳の頃から定着した俺のファッションスタイルだ。
ちなみにスピルスには「もう少し髪を伸ばしませんか?せめて肩につくくらい伸ばしてください、お願いします」と拝む勢いで頼まれているが、今は保留にしている。
朝日が昇る中、まず畑に出ると、じょうろで水を撒きながら、歌う。
流石に水道や蛇口やホースは錬成できなかったが、じゃがいもやカボチャ、大根や人参、キュウリやスイカを錬成できた俺はなかなか天才だと思ってる。
続いて庭園。
同じく、じょうろで水を撒きながら、結界強化と領域維持の為に歌う。
前世で死ぬ間際……コンビニの夜勤のバイトをしていた頃は、夜起きて朝寝る生活してたから、こんな人生を送ることになるなんて想像もしていなかった。
剪定も兼ねて花を摘み、マチルダが用意してくれたお菓子と共に花かごに入れ、肩にひっかけて井戸を降りる。
歌いながら一度アッシュフィールド本邸側入り口に向かう。
ネズミー映画のプリンセスみたいだって?
うっさい! 俺が一番そう思ってるよ!
「ヴァニタス様、おはようございます」
「あ、スヴェン。おはよう」
王宮勤めの騎士のように正装したスヴェンが俺の後から降りてきた。
スヴェンは地下水脈制圧後、時折王宮に出向いては騎士たちに剣術の指南をしている。
「陛下は元気」
「はい、相変わらずですよ。ヴァニタス様に会いたがっておられます。ヴァニタス様は親族でもありますし」
「いくら親族でも、俺は表向きは幽閉されてる悪魔憑きだからなぁ……」
俺もスヴェンが誰よりも大切に思っている陛下を一度この目で見てみたいのだが……どう考えても難しいだろう。
「俺を信頼して例のアレを受け取ってくれただけで感謝してるって伝えてくれ」
“例のアレ”とは、俺の血で魔法陣を描いた紙である。
緊急時に魔法陣に触れて俺のフルネームを呟けば、呟いた人間は地下水脈の魔法陣へと転送され、紙は跡形もなく消える。
ゲーム「アルビオンズ プレッジ」内で殺されるスピルスとラスティル国王を救出する為に作ったものだが、念のためにスヴェンやユスティートにも持たせている。
「その為にヴァニタス様がザクザク腕を切っていたのを知っているので、内心複雑なのですが」
ちょ……人を自傷癖持ちのメンヘラ見たいに言うなよ!
「王宮を訪れる度に、陛下に忠告はしています。でもまだ魔物が現れる気配はありません。……もちろん、ないに越したことはないのです、が……」
「…………あいつが、現れちまったもんな」
丁度良いタイミングで、軽やかに井戸を降りてくる誰かの足音が聞こえる。
「あ、スヴェンさんだー。ヴァニタスもいるー。 2人ともおっはよー」
真っ白な短髪に赤い目。
ウサギのような──オタクだとアルビノと言った方が伝わりやすいだろうか?──容姿の少年が笑顔で手を振りながら現れた。
彼こそがゲーム「アルビオンズ プレッジ」にその名を冠している、真の主人公アルビオンである。
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