69 / 112
大仰な家族会議
04
しおりを挟む「転生者……か」
「俺たちにももしかしたら前世とやらがあるのかもしれないが、とりあえずは一定の条件を満たした者しか前世の記憶は思い出せないみたいだ」
セオドアの説明に、親父は頷いている。
親父は根っからの悪人ではないのだ。
そもそも、『アルビオンズ・プレッジ』内でモブ敵の俺を地下水脈の入口のボロ屋敷に配置し、アッシュフィールド公爵家側の屋敷に自身が立ったのも、ラスティル王国に忠誠を誓っているが故だ。
魔物が成り代わった王の命令とはいえ、国の為に自らの命を投げ出した男なのだ、『アルビオンズ・プレッジ』の親父は。
「つまり、ラスティル王国を守る為にヴァニタスの幽閉を解いて欲しいと?」
「そうだ。マドリーンの正体が明らかとなった今、ラスティル王国の危険度は高まった。魔王は次の手を打ってくる筈だからな。戦争が起きる可能性だってある。尚更ヴァニタスの力が欲しい」
そうだ。
マドリーンの正体が明らかとなったという事は、転生者が潜り込んで内側からラスティル王国を壊す計画が潰れたという事だ。
次は、外側からラスティル王国を壊す……戦争が起こる可能性もある。
アリスティア王国が滅ぼされたように。
親父は唸る。
「ラスティル王国におけるアッシュフィールド公爵家の扱いはどうなるのです? マドリーンは魔王の配下として動き、私はそれに気づかずマドリーンをアッシュフィールド公爵家に招き入れた。そしてシルヴェスターはマドリーンの息子だ」
「ならば交換条件といこう。貴公はヴァニタスを幽閉から解放し、悪魔憑きの噂は嘘で療養の為に離れ屋敷に住まわせたと公言する。ラスティル王家側はアッシュフィールド公爵家を罪に問わない。貴公も、マドリーン公爵夫人も、シルヴェスターも」
「そんなにもヴァニタスが必要なのですか?」
「あぁ。ラスティル王国の守護の要となるかもしれない」
親父とセオドアは真剣な話をしているんだけど、正直ちょっと恥ずかしい。
勿論、それだけ責任重大ということもあるのだけれど。
「…………わかった。ヴァニタスの幽閉を解こう。そしてヴァニタスは悪魔憑きだから幽閉したわけではなく、療養の為に離れ屋敷に住まわせたと宣言する」
良かった。
だが……。
「親父。マドリーンさんはどうする気だ」
「…………」
俺は正直、この家族会議までマドリーンに良い印象は持っていなかった。
でも、転生前が猫と知って拍子抜けしたというか、何というか。
ん?
おかしい。
当然ながら、俺やスピルスよりマドリーンの方が年上だ。
柚希が言うように俺やスピルスを切り捨ててマドリーンを潜入させたなら、年齢が合わない。
マドリーンは親父と不倫する時既に魔王の配下だった筈だ。
「まだ、ラスティル王国の内側にも転生者がいる……?」
「可能性はあるな」
セオドアが頷いた。
「内側の調査もしなければならない。協力してもらうぞ、アッシュフィールド公爵」
「勿論。ところで、離れ屋敷はどうするのです? ヴァニタスは城に詰めるのでしょう?」
「あぁ、そうなるな」
「マドリーン、お前はどちらにつくのだ。魔王か? 私たちか?」
マドリーンは俯いた。
暫しの間、座が沈黙する。
「私は、人間が嫌い。人間を恨んでる」
搾り出すような声で、マドリーンが告げた。
「でも、私の大好きな千紗ちゃんやおじいちゃん、おばあちゃんも人間だった」
マドリーンはゆっくりと顔を上げると、シルヴェスターの方を見る。
そしてにっこりと微笑んだ。
「それに、私は今は母親だということを思い出したの。シルヴェスター、ごめんなさい。寂しい思いをさせて。私は千紗ちゃんの母親のような、酷い親になりかけてた。いいえ、既になっていたのかもしれない……」
23
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる