脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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本日の探索、ここまで。

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 今回のダンジョンの最終到達地点。地下室のようなところで、本棚が壁面を埋め尽くしております。
 床にあるのは魔法陣。そちらを踏むことで、持ち帰りが可能になりますの。お金も送金しておきましょうか。確か証で……ええ、出来ましたわね。早目に済ませておきませんと。

「ふう、無事完了しましたわ。お疲れ様です、イヴ。無理を言ってしまいましたが、おかげ様で助かりましたわ」
「ううん、当然のことをしたまで」

 イヴは何てことないと笑ってくれました。重労働だったでしょうに。帰ったら、労いをしておきましょうか。


「あとはですわね……」

 私は本棚に視線を移しました。叡智の結晶、私とて気になるのです。よく調べるボタンで読んでおりましたから。特に――『女神マーサの手記』を。
 ええ、そうです。ここいらで触れておきましょう。女神マーサは従姉のことでしょう。内容も開発日記でしたしわね。本人に直接確認はしておりませんが。

「……ところで、アリアンヌ様。探索は続けるの?」

 イヴが問いかけてきました。そうですわね……。

「ええ。別の洞窟でも取得は出来ますから……イヴ?」

 明日は家の用事で一日が潰れます。ですので、本日取れるまで取っておきたいところでした。ですが、イヴは浮かない顔をしています。ええ……そうかもしれません。

「私以外にも狙っている人物、いるとは思っておりませんでしたわ」

 自分くらいだと思っていました。それが、ああも狙っている人達がいるとは。こちらにも危害を加える気もありました。イヴが乗り気でないのも当然ともいえますわね。

「……はーい。続けましょ」
「……イヴ?」 

 渋々といった感情は隠しきれておりませんが、イヴは反対することはなく。私は疑問符を浮かべたまま、彼の顔を見ましたが。

「僕の判断で撤退するって、覚えているでしょう? 容赦なくするんで」
「ええ……」

 それは覚えてはおります。ですが、イヴ? そのように悪どい顔をして言いますの? 
 いえ、この際良いでしょう。続行できるのですから。さあ、もう一度魔法陣の上へ。新たなダンジョンへ向かいますわよ! 


 別の洞窟からも、探索をすることに。先程とは違い、狂暴な魔物も出てきますが。

「……早いお仕事ですわね」

 すでに他の冒険者たちに狩りつくされておりました。随分と精鋭がおられるのですね。
 よいでしょう。送金も完了しましたし、もう紫の宝箱まっしぐらですから。そう、宝箱――。

「――あんたら! 今度こそ持って帰るんや!」
「!」

 なんと! 先程の彼らではありませんか。相変わらず宝箱も狙っているようですわね! 

「はーい、対策しまーす」

 イヴが事務的に煙幕を用意しておりました。またか! と彼らは煙の中、騒いでおります。
 先、行きましょうか。

 その後も、彼らに出くわし。追いかけられたり、撒いたり。それでも宝箱の回収はしっかりと行い。――ダンジョン探索を終えることになったのです。


 ダンジョンから出ると、雨は降り続けたまま。ですが、刻限のようです。もう日の出の時間となっておりましたから。

「あら……?」

 競合相手でもある彼らが、地面に座ってばてておりました。途中から追ってこないと思っていたら。出待ちかとも警戒していましたが。

「ごほっ、どんだけ煙吸わされたっちゅうねん! ごほっごほっ……。うちらはあんたらがいない時に潜らせてもらいますわ!」

 リーダーを筆頭に、他の方らも咳き込んでおりました。

「ああ……」

 そうですわね。かなり煙をお見舞いしておりましたものね。やり過ぎたのでしょうか。あと、私達不在後にも潜るようですが、致し方はないのでしょうか。リポップはしますので、私達にも影響は――。

「……あなた方は、どうして集めているのです?」

 そう考えていたところで、私は疑問を彼らにぶつけました。あなた達に意味はあるのでしょうか。だって、攻略対象の好感度を上げてどうしようと。

「……お命じください」

 イヴは緊迫めいた顔をしていた。そのような真剣な面持ちで、私にどんな命を下させようというのです。

「……この者は、あなたに害をなす相手です。口封じをするべきか」
「!」

 私しか価値がないと思っていたのに。いえ、価値がないとしても。彼らには何らかの目的で、手に入れようとしていた。ならば――。

「……そっちの兄ちゃんは、見当ついてるんちゃいます? はあ、本日は続行は厳しそうやなぁ……」

 リーダーは意味深にイヴを見ると、仲間たちと目配せをしています。

「――したらば、うちらは退散ですわ!」

 彼らはそれぞれの乗り物を即座に出して、そのまま去ってきました。今なら追いかければ、飛ばしさえすれば、間に合わなくもないですが……。

「追いかける?」
「いえ、本日のところはよいでしょう」
「だね。あっちは勘違いしているみたいだから」

 そう、彼らは私達がまだ続行すると思って、帰ってしまったようです。どのみち、こちらは家にも戻らないといけませんから。彼らのことは――。



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