脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
106 / 442

贈り物は――宝箱。

しおりを挟む

 公爵邸まで送ってくださったオスカー殿。一人で帰れる、そう言いたいのは結衣だから。立場上、私は有難く受け入れることにしました。

「オスカー殿、ありがとうございました。気をつけてお帰りくださいましね」

 雨は依然降り続けていますが、穏やかなものとなってました。

「うん、わかりました。またね」
「ええ、また明日――」

 オスカー殿は傘をさして帰られました。私はいつまでも見送りたかったのですが。

「お、お、お嬢様……まさかと思ったら」

 傘を持ちながらやってきたのは、先程のメイドでした。これまでかというくらい、真っ青な顔をしています。部屋にいないと気づかれてしまいましたわね。捜しにいこうとしてくれたのでしょう。

「心配かけてしまいましたわね……よいかしら。私はバルコニーに出たら落とし物をしてしまった。それを探していた。そういうことですの」

 ちょっと苦しいかしら。それでも彼女が責められるようなことにはしたくなくて。

「で、ですが……」
「ほら、戻りましょう。このことは、ご内密にね」 

 お互い体も冷えますし、留まっているのもよくはないでしょう。というか、イヴ辺りが察知しそうですわ。今はそのようなことはありませんが。

「は、はい……」

 私は彼女に付き添ってもらい、家に戻ってきました。




 生乾きの寝間着は、部屋の中にある風呂場で一緒に洗ってしまいました。こっそりと室内干しですわ。

「さあ、開けてみましょうか」

 机の上に置いてあった、オスカー殿の贈り物。明日の朝一番に感想をお伝えしたいですわね。

「?」

 包みを開けると出てきたのは小さな宝箱。まあ、オスカー殿。ダンジョンから手に入れてくださったのかしら。コレクションしていたと覚えていてくれましたのね。

「ふふ」

 私が喜んでくれると選択してくれた。私は笑いが零れた。改めて、愛しそうに宝箱を見ようとすると。

「……あら」

 それは茶色の宝箱。慣れ親しんだものとは質感が違う。鍵穴も凝った作りで鍵も付属されていた。これはアンティークショップで売られているようなもの。ダンジョンで手に入るものではありませんでした。

「オスカー殿……」

 私は彼の名を呼び、その宝箱を胸元で抱きしめました。心が満たされるようで――。

「くしゅんっ!」

 私はくしゃみをしてしまいました。顔は咄嗟に背けましたから、飛沫はかかってはいませんわね。危ないところでした。

「……寝ましょう」

 とうに深夜も回ってますから。本当に良い一日でした――。




 ああ、何故ですの……。

「ごほっごほっ」

 私は今、寝込んでおります。額に氷嚢を乗せられ、ベッドにてうなされています。
 ええ、そうです。私は風邪を引いてしまいました……。
 何故ですの、私は頑丈なのではなくて? もしかして、風邪などには弱いのでしょうか……。

 ここ数日は安静にするようにと、お医者様にも言われました。今はただ、回復に努めるしかありません。

「ごほっ……」

 視界がぼやけますわぁ……。私はおぼろげな意識の中、オスカー殿のプレゼントを考えておりました。本当に素敵な贈り物でしたわ。

「私も彼が喜んでくれるような……」

 今度はいつ贈り物をしようかしら。オスカー殿、まめに返してくださるから。こう、催促感も生じてしまいますわね……頭がくらくらしますわ。

 手持ちも尽きてきましたからね。またダンジョンに赴きませんと。

「残り一個……でも」

 そう、とっておいたといえましょうか。レアに該当する宝箱でした。以前、制限でもあるのか受け取っていただけなかったものです。今なら受け取ってくださるかもしれません。そうだとしても。

「……渡せませんわ」

 その中身は――コロシアムの観戦チケットでした。今となっては渡せなくて良かったと思ってますわ。
 ヒューゴ殿の前例もありますから、何らかのきっかけやイベントが発生するのでしょう。好感度だって跳ね上がるのかもしれません。

「ええ、私にはどうしても」

 それでも無理でした。どうしても無理で。

「……すうすう」

 薬が効いてきたのでしょう。私は眠りについていきました。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

いじめられっ子、朝起きたら異世界に転移していました。~理不尽な命令をされてしまいましたがそれによって良い出会いを得られました!?~

四季
恋愛
いじめられっ子のメグミは朝起きたら異世界に転移していました。

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

処理中です...