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助けたかったんだ。
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「……これさ、もう喜んでいいんだよね?」
「ええ、そうですわね……まずはオスカー殿。色々とお詫びが――きゃっ」
興奮したオスカー様に抱き上げられてしまいました。
「そういうのいいって! こうして助かったんだからさっ!」
私の足は地面に浮いたまま、そのままオスカー殿に顔を寄せられました。
「――もう二度と逢えないって、そう思っていたから」
「……ええ、そうですわね」
私達はまた巡り合えた。これも生き延びたからこそですわ。
「あなた方が助けにきてくださったから……」
私一人ではどうなることだったか。あなた方の力があってこそ。
「あなた方……それもそっか。みんなさ、アリアンヌ様のこと大好きだから助けたかったんだって」
「だっ……」
急すぎるストレート発言ですこと! ええ、その大好きに特別な意味など――。
「あの二人のことは断言できないけど、俺は『そういう』意味だから」
「っ!」
「昨日の今日で変わらないよ。俺はアリアンヌ様のことが好き……好き、だけど」
「……?」
言葉が途切れ、オスカー殿は考え込んでいました。
「――そのへんにしてもらえません? 公衆の面前ですが?」
軽々と着地する音。イヴがここまで走ってきたようです。
「あー……そうだった。でもさ、このままお連れするから」
「オスカー殿!?」
「だってふらふらでしょ? 馬車も手配するからさ」
確かにふらついてはおりますが……。
「……まずはこちらから。お嬢様、こちらヒューゴ様からお預かりしたものです。状態異常特化の回復薬です」
飲用タイプのものでした。私はイヴから受け取って口に含みました。
「ええ、いただくわ……イヴ、此度はありがとうございました。あなたにはいつも――」
「……僕にそのような」
イヴに落ちる暗い影。どこか様子が違うようですが……。
「……」
イヴは私から目をそらしたままです。ひとまず……飲みましょうか。
「ああー」
なんて効能なのでしょう。たちまち回復するではありませんか! ヒューゴ殿には後日お礼を言いましょう。彼は帰られたようですから。
「ふう、良かった。それと馬車はこちらで用意しております。帰りましょう、アリアンヌ様」
「イヴ……ええ」
そうですのね……私は家に帰れるのですね。ああ、本当に……。
「うん、それがいい。今日はゆっくりしなよ。話はいつでもできるから」
「……はい」
オスカー殿はそっと下ろしてくれました。私は自分の足で立ちます。
「そうだ、誕生日のことも詫びなくちゃ! アリアンヌ様のとりなしもあったけど、やっぱり直接お詫びしたいし……」
まずはそっちが先じゃん、とオスカー殿は自身に駄目だしをしていました。
「――オスカー様。当主よりあなたを連れてくるようにと。仰せつかってます」
「え」
「え」
イヴの発言に、私とオスカー殿の声は揃ってしまいました。気が合う……と浮かれている場合ではないでしょう。お父様からの話ですって? 誕生日の件は確かにお怒りでしたが……。
「ぐっ、心の準備が……。でも避けて通れないし、謝り倒そう!」
オスカー殿は自身の胸を押さえながらも向かうことにしたようです。
私達は馬車の中、口少ないものでした。普段おしゃべりなオスカー殿はひたすら緊張をしておりましたし。外の場では慎むイヴもですし。なんだかんだで疲労困憊な私もまた、静かなものでした。
「ふわぁ……」
「ぐーすぴー……」
私は寝落ち寸前でした。オスカー殿は爆睡しています。そうですね、私、も……。
「お疲れ様でした。本当に、本当に無事で良かった……!」
眠りに落ちていく中。聞こえてきたのは、イヴの祈るような声でした――。
「ええ、そうですわね……まずはオスカー殿。色々とお詫びが――きゃっ」
興奮したオスカー様に抱き上げられてしまいました。
「そういうのいいって! こうして助かったんだからさっ!」
私の足は地面に浮いたまま、そのままオスカー殿に顔を寄せられました。
「――もう二度と逢えないって、そう思っていたから」
「……ええ、そうですわね」
私達はまた巡り合えた。これも生き延びたからこそですわ。
「あなた方が助けにきてくださったから……」
私一人ではどうなることだったか。あなた方の力があってこそ。
「あなた方……それもそっか。みんなさ、アリアンヌ様のこと大好きだから助けたかったんだって」
「だっ……」
急すぎるストレート発言ですこと! ええ、その大好きに特別な意味など――。
「あの二人のことは断言できないけど、俺は『そういう』意味だから」
「っ!」
「昨日の今日で変わらないよ。俺はアリアンヌ様のことが好き……好き、だけど」
「……?」
言葉が途切れ、オスカー殿は考え込んでいました。
「――そのへんにしてもらえません? 公衆の面前ですが?」
軽々と着地する音。イヴがここまで走ってきたようです。
「あー……そうだった。でもさ、このままお連れするから」
「オスカー殿!?」
「だってふらふらでしょ? 馬車も手配するからさ」
確かにふらついてはおりますが……。
「……まずはこちらから。お嬢様、こちらヒューゴ様からお預かりしたものです。状態異常特化の回復薬です」
飲用タイプのものでした。私はイヴから受け取って口に含みました。
「ええ、いただくわ……イヴ、此度はありがとうございました。あなたにはいつも――」
「……僕にそのような」
イヴに落ちる暗い影。どこか様子が違うようですが……。
「……」
イヴは私から目をそらしたままです。ひとまず……飲みましょうか。
「ああー」
なんて効能なのでしょう。たちまち回復するではありませんか! ヒューゴ殿には後日お礼を言いましょう。彼は帰られたようですから。
「ふう、良かった。それと馬車はこちらで用意しております。帰りましょう、アリアンヌ様」
「イヴ……ええ」
そうですのね……私は家に帰れるのですね。ああ、本当に……。
「うん、それがいい。今日はゆっくりしなよ。話はいつでもできるから」
「……はい」
オスカー殿はそっと下ろしてくれました。私は自分の足で立ちます。
「そうだ、誕生日のことも詫びなくちゃ! アリアンヌ様のとりなしもあったけど、やっぱり直接お詫びしたいし……」
まずはそっちが先じゃん、とオスカー殿は自身に駄目だしをしていました。
「――オスカー様。当主よりあなたを連れてくるようにと。仰せつかってます」
「え」
「え」
イヴの発言に、私とオスカー殿の声は揃ってしまいました。気が合う……と浮かれている場合ではないでしょう。お父様からの話ですって? 誕生日の件は確かにお怒りでしたが……。
「ぐっ、心の準備が……。でも避けて通れないし、謝り倒そう!」
オスカー殿は自身の胸を押さえながらも向かうことにしたようです。
私達は馬車の中、口少ないものでした。普段おしゃべりなオスカー殿はひたすら緊張をしておりましたし。外の場では慎むイヴもですし。なんだかんだで疲労困憊な私もまた、静かなものでした。
「ふわぁ……」
「ぐーすぴー……」
私は寝落ち寸前でした。オスカー殿は爆睡しています。そうですね、私、も……。
「お疲れ様でした。本当に、本当に無事で良かった……!」
眠りに落ちていく中。聞こえてきたのは、イヴの祈るような声でした――。
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