脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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火遊びでしょうか?

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 三階の廊下突き当りまで案内されました。

「よっと」

 シルヴァン殿は軽くジャンプし、天井の取ってを引き下ろしました。そこから出てくるのは、梯子。なるほど、屋上へと繋がるのですね。

「アリアンヌ様? 抱っこしてお連れしましょうか?」 
「なっ!?」

 どこか挑発的なシルヴァン殿のお言葉、先に反応したのはイヴでした。私ではなくてよ。

「そ、それなら! 僕がお連れしますから!」 
「……イヴもシルヴァン殿も。よろしいですのよ。お気遣いは感謝しますが、こちらで」

 幸い、私はパンツスタイルですもの。梯子を軽々と登ってみせますわ、造作もないこと。

「……へえ」

 いつの間にか屋根裏に着いていたシルヴァン殿が、こう、観察していますわ。その、落ち着きませんわね……。

 私も屋根裏部屋に到着しました。見届けていたイヴもやってきました。
 第一印象としましては、物置にしている部屋といったところでしょうか。ベッドもありますので、寝泊まりもできるようですわね。あとは棚がありますが、布がかけられています。

「ここなら……ですね。アリアンヌ様? どこまで調べられているのですか?」 

 前にも尋ねられた質問ですわね。彼は優美な笑顔のまま、私に問うてきます。

「……横やり、お許しください。調べたのは僕です――主の命令だからではありません」

 イヴの方で挙手していました。シルヴァン殿は値踏みをしているようです。イヴをじろじろと見ています。

「さようでございますか。といっても、協力しているということですよね?――主の不貞行為に」
「!」 
「!」 

 シルヴァン殿、はっきりと口にされました。私もイヴも動揺してしまいます。

「いやはや、ここまでなさるとは。関係を築き上げる、でございますか。綺麗ごとを仰ってましたが」

 彼はいつもの笑みで――毒を吐く。いつもの綺麗な言葉遣い、声で。

「……結婚前の火遊びでしょうか。伴侶の、しかも王族の配下。お嬢様は大胆であられますね? 手っ取り早いのもあるでしょうが」

 彼の言葉には棘があるままで、私を糾弾していく。

「――公爵家の財力を好き勝手にして……貢ぎ物をしていくなど。私はお嬢様の戯れに付き合わされているのでしょうか……」

 語り口は柔らかいまま――それでも、どこまでも。どこまでも私を責め立てていく。

「……っ!」 

 先に堪えきれなくなったのはイヴでした。彼は掴みかかるのまでは抑えつつも、言い返しはしようとしています。嬉しいのです、ですが……。

「……誤解をさせてしまったのなら。御不快でしたでしょう、申し訳ありませんでしたわ」

 私はイヴより前に出ました。シルヴァン殿は微笑んだままです。

「私も、そしてあなたも。殿下が第一、それには変わりありません。あなた、仰いましたわね? ――生涯、殿下に尽くすと。私も同じ思いでございます」
「……」
「私の心も――殿下のものだけ。不貞行為など、あなたにも迷惑かけるようなこと致しませんわ。誓いもします」

 それこそ口だけ、そうお思いでしょうね。そう、私は今はこうして口にすること――誓うことしかできませんわ。

「ただ一つ、お願いがございます。あなたと関係を築き上げたい。それもまた、私の願いでございます。これまで通り、贈り物はお許し願えませんか?」 
「……と、仰いますと?」 

 シルヴァン殿の眉が、わずかながらもぴくりと動いてました。ええ、呆れてもいるでしょうね。そうはいえど、私たちが繋ぐものは今はこれしか思いつきませんから。

「もちろん、以前にも申した通りですわ。受け取るだけで結構です。あとはあなたの如何様にもなさってください」
「え……アリアンヌ様?」 

 私が申したことに、声を零したのはイヴでした。そんな、と彼は呟いています。ええ……せっかく皆様に協力していただいたものなのに。私はイヴの顔をまともに見られません。

「……」
「……」

 長く続く沈黙。

「……ふふふ、はははははは!」 

 沈黙の均衡を破ったのは――シルヴァン殿でした。彼はお腹を抱えて笑っておいでです。

「……ふはっ、失礼致しました。ええ、アリアンヌ様はそう仰ってましたね。こちらの好きにしてよいと」
「はい」

 二言はありません、と私は強く頷いた。

「……はっ」

 ひとしきり笑い終えたシルヴァン殿は、口元を歪ませた。

「本当にご寛容でいらっしゃる。あなたがくださった品々、とても高価なものばかりでしたでしょう?」 

 正直に申すと――下品、下劣な笑み。いつもの綺麗な笑みなどありはしない。

「……翌日、売らせていただきました。良い値段が付きましたよ? ははは!」 

 また可笑しくなったのか、シルヴァン殿は笑い始めた。彼の笑いは止まらない。彼の笑いが屋根裏部屋に響き渡る。

「この……っ」

 イヴは限界を迎えたようです。今度こそ胸ぐらでも掴みかかりそうで――。

「……よいのです」

 私は手で制しました。あなたにそのようなこと……させたくなくて。



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