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不完全燃焼だから。
しおりを挟む――と、ならないのが私でございます!
只今は深夜でございます。内心はテンションが高まる時はあれど、声も潜め、物音を立てずに動いておりましてよ? 私は今――イヴと共に邸を脱出してますの。
「……お嬢様、今日の今日で」
「不完全燃焼でもありましたのよ。イヴも本を返したい、私も宝箱を回収したい。その代わりにすぐに撤収しましょう」
「……うん、それもそうだね」
私たちはバルコニーから垂らしたロープを伝い、そして着地しました。さあ、真夜中の大脱走、ダンジョンへと参りますわよ!
深夜といえど、ギルドにも人はいます。人並みが落ち着いてはいますわね。
「直行でいいの?」
「ええ……」
イヴは暗に地下室に寄ってみるか、そう尋ねてくれたのでしょう。イヴが言った通り、今日の今日ですし、この時間ですもの。もうどなたに会うこともないかと――。
「――絶対スルーされる気がしてた」
「!」
ギルド入口近くの壁に寄りかかっていたのは、シルヴァン殿でした。どこか拗ねているようですわ。
「こっちは不完全燃焼なんだよ。そちらもだろ?」
「ええ、その通りでしてよ」
「な? ということで、俺も行くってことで」
あら、同じことを思ってましたのね。疲れもなんのその、私たち目的がありますもの。自然とご一緒する流れとなりました。
「発着場に着いたことだし、それじゃ――」
シルヴァン殿はいつものように馬車に乗せてくれようと、そうはしていたようですが。
「ふーん?」
「な、なに……?」
「別に?」
シルヴァン殿がまじまじと見ているのはイヴ。溜息を着くと、一人でに歩き出してしまいました。
「俺、今回は一人乗りで行くんで。アリアンヌ様は乗せてもらって?」
彼はそう言い残して、先に行ってしましました。それとあと。
『イヴ様健気だわー……わざわざ二人乗り用購入したっていうんだから』
とまで。
「二人乗り? ……購入? シルヴァン殿は一体何を――」
不思議ですわね、とイヴを見たところ。
「……」
イヴの顔が真っ赤になっていました。私の顔を頑なまでに見ることもありません。
「……イヴ?」
「……その、あれ、あれだよ! 大は小を兼ねるというか! 二人乗りだと金額もそう……変わらないし。ほら、結果的に二人乗りにしておいて良かったっていうか! うん!」
っと、イヴの声が入口ホールに響いており。それが本人にもわかったようで、イヴの顔はますます赤くなってしまっていました。
「……恥ずかし。また急かされるから、行きましょう?」
イヴは早口気味に言いました。私も頷きます。ええ、急ぎましょう。
「……」
可愛い。私はこっそりと思ってしまったのです。イヴには内緒にしておきましょう。
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