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わたくしの部屋へお呼び出し。
しおりを挟む「――さて」
自室の窓際の席にあるのは、ティーセット。ケーキスタンドも考えましたが……そのような和やかな場にはなりませんわね。
「――失礼致します。ブリジット様がみえられました」
イヴの扉をノックする音。いらっしゃいましたわね。私は彼に通すように伝えます。
「いらっしゃいまし、ブリジット様」
「……お邪魔します」
入れ替わるようにイヴが去っていきました。去り際に彼はこちらに目線を寄越してきました。気にはなるのでしょうね、何事であるかと。
「立ち話もなんですから」
「いい。すぐに済む話だから」
「……そう」
ブリジット様は窓の近くの席までやってくることはなく。彼女はドアの側から動こうとしません。なら私から近寄ろうとしたものの。
「そういうのもいいから。こっちから話させてもらうね?」
「……ええ」
彼女の態度をもって止められました。私は一歩踏み出した足を一度下げました。
「――『あなた』はエミリアン殿下が好きなの?」
「……」
直球なれど問われていること。ヒューゴ殿やオスカー殿の時もそうでした。
「……ええ、素晴らしくて素敵な方、尊敬もしています」
私はそう答えました。ブリジット様の反応というと……彼女は顔を顰めていました。
「……はあ。そういうことじゃないんだよ?」
「そういうこと、とは……?」
「――恋愛感情をもっているか。それが聞きたいの」
「……!」
ここまではっきりと言われてしまったのなら。私はどうお答えするべきか。ブリジット様はとても真剣な眼差しを向けている。それでいて……必死ともいえるような。
「ブリジット様……」
ブリジット様は殿下のことが恋愛感情で好き、そうならば。ええ、『恋のライバル』相手に問うのも当然のこと。ブリジット様、あなたは彼のことを……。
「……もういい。今となってはね、あなたの気持ちがどうこうじゃないから」
「……え」
投げやりに言ったブリジット様を私は見た。彼女は真剣でいて、そして焦ってもいたのだと。
「……本当になんでなの。今まではちょっと色仕掛けすれば? あっさりと乗ってきたのに。あんなにデレデレしてきたのに」
「……?」
「他の男の時じゃ意味なんてないのに……! なんで今回になって豹変を……!」
「……ブリジット様?」
ブリジット様は焦って……気が動転もされているようだから。だからなのでしょう、ここまで言ってしまっているのは。
「ブリジット様……あなたは」
私にもわかってしまったのです。今回は。今までは。
「……ははは」
ブリジット様の愛らしい口が残酷な笑みを浮かべていた。
「……もういいかな。あなたも気づいてるんだよね? ――私が『覚えてる』ってこと」
「……ええ」
確定でした。彼女はこれまでの記憶を、繰り返しの日々を覚えている。私や殿下のように。
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