脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
286 / 442

婚約者は私。

しおりを挟む

 翌日、震撼が走ったのです。学園に登校してからの噂に――もれなく私も衝撃を受けたのです。

「皆様、ごきげんよう――」

 ブリジット様との一件はあれど、私は普通に振る舞おうとしました。ええ、朝の挨拶からと。教室にいた級友たちは誰しもが、私に複雑なる視線を向けていたのです。

「おはよう、アリアンヌ様?」

 教室の中心となって囲まれているのはブリジット様。彼女はなんとも勝ち誇った顔をしていました。まさか……と。私は嫌な予感で胸をざわつかせていました。

「うん、ごきげんよう……あのさ、アリアンヌ様? 教室出ない?」

 近くまで来られたのはオスカー殿でした。見かねたのでしょうか、彼は事情を話してくれようとしています。それも私を気遣いながらでしょうか、一目を避ける為にとどこかへ連れて行こうとしているのです。

「あ、オスカー様。いいんだよ? 私からお話するから」
「いやいや、ブリジット。俺が連れ出して説明するから――」
「――殿下と私、正式に婚約関係になったの。公爵家にもご挨拶はいくと思うんだけれど」

 ブリジット様は私にだけ目配せします――知ってたと思うけど、と。

「ブリジットさ……手心とか、こんな人前でとかさ?」
「え?」

 唖然としたオスカー殿に窘められても、ブリジット様はきょとんとしています。小首まで傾げてらして。

「……」

 ええ、存じてはおりました。あなたの本気もまた、思い知らされたのです。こんなにも早く動くだなんて。

「……でも、オスカー様の言う通りだね。私、早くお伝えしなくちゃって。うちの父が早急に決めたのもあるけど……頑張ってきたあなたを見てると申し訳なくて」

 ブリジット様の瞳は涙を浮かべていくのです。瞳を潤ませた彼女は私に深く頭を下げてきたのでした。

「ごめんなさい、アリアンヌ様! 親同士もだけど……殿下、エミリアン様も前向きなの! 私を見初めたからって……! 私との婚約が喜ばしいって……本当にごめんなさい!」
「ブリジット様……」

 涙ながらに許しを乞う姫君と、それを見下すような令嬢の図。またしてもですわ……これでは私への糾弾を免れないと。

「……」

 ええ、覚悟はしておりました。不利になるのも避けられなかったこと。今は……この現状をですわね。あらぬ誤解を解きましょう――。

「――殿下とアリアンヌ様、普通に仲が良さそうじゃなかった? 私、春休みにお見かけしたんだけど」
「ああ、俺も。俺ん時は街中走り回っていたよな……めっちゃ楽しそうに」
「ラブラブだったよね? それでも陛下からの用命となると……だけど」
「なんかやるせないよな……」

 級友たちが零したのは、私たちの目撃情報でした。確かに春休みは殿下との逢瀬を重ねておりました。基本は王城内ですが、ええ、出かけもしましたわね。走り回っていたのは追手を蒔いていた時のことでしょう。
 私に対して同情が集まるなんて、前だと考えられなかったのに――。

「くっ……」

 私だけに聞こえてきてしまった、ブリジット様の焦る声。思ったようにはいかなかったと忌々しそうに。

「――皆様、そのへんになさっては? ブリジットもです。もういいでしょう?」

 静観していたのでしょうか、窓際の席に座っていたヒューゴ様がそう仰っていました。助け船でしたわね……。

「……えっと、そうだね。皆も驚かせてごめんね? 私、ちょっと情緒が安定しなかったのかも」

 ハンカチで涙を拭う、いたいけなブリジット様。教室の皆様はキュンとなさっていましたわね。ヒューゴ殿の一声もあり、皆々様席に着いていきます。それでも注目はブリジット様と私に向けられたままでしたわね。

「……ええと、気にしないで?」
「いえ、オスカー殿。あなたにも気を遣わせてしまいましたわね」

 近くにいたオスカー殿がフォローしてくださいました。彼はううん、と首を振っています。

「……全然いいんだって。はあ、殿下はさぁ。羨ましい、恵まれた立場だっていうのに……なんだかなぁ」
「オスカー殿?」

 オスカー殿はまたしても、何でも? と首を振ってます。

「しかもさ――本日ご不在だったし」
「ご不在ですの……?」
「そう。あ、シルヴァン様もね、ご一緒にお休み」
「シルヴァン殿まで……」

 覚悟はあっても、落ち着かないのが我が心境。ここで殿下からの公開処刑ならぬ公開婚約破棄という流れは避けられた、ということでしょうか……本日のところは。

「……いえ」

 私はもう知ってしまっているから。それが殿下の望ましくないことだったこと。今の彼ならば、もうそれは避けるであろうことを。
 シルヴァン殿まで休まれているのです。ただの体調不良ではない、そう思えてならないのです。

「ディディエお兄様なら……」

 本日、ちょうど国の軍人でもある次兄も帰られますわ。兄ならば何か知っているかもしれません。


 私は気遣ってくださる存在を支えに、針のむしろである一日を乗り切ったのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界にお助けキャラとして転生したリリアン。 無事ヒロインを王太子とくっつけ、自身も幼馴染と結婚。子供や孫にも恵まれて幸せな生涯を閉じた……はずなのに。 目覚めると、何故か孫娘マリアンヌの中にいた。 マリアンヌは続編ゲームの悪役令嬢で第二王子の婚約者。 婚約者と仲の悪かったマリアンヌは、学園の階段から落ちたという。 その婚約者は中身がリリアンに変わった事に大喜びで……?!

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...