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彼らの企み。
しおりを挟む「アリアンヌぅ! 好きだァ――」
あ、またしても抱き着いてきますわ。避けられなくもないですが、殿下疲弊しているようですし。ここはしっかりと受け止めおこうかと――。
「――失礼ながら、殿下。その必要には及ばないかと。ですので公衆の面前でのセクハラはおやめください」
「え……ヒューゴ殿? なんで、なんでそういうこと言うの?」
殿下、きょとんとしておられます。私を抱きしめるのは止めたようで、ただヒューゴ殿を見ているというか。
「俺の婚約者だけど!? セクハラとか、なんでそういうこと言うの!」
ガン飛ばしているというか……ぶちぎれているというか。
「失礼ながら了承を得ていないではありませんか」
「いや、失礼。というか、失礼ながらつければいいって思ってない?」
「いえ、そのようなことは――失礼ながら」
「ほらぁ!」
まあ……言い合いする元気はありますの? 一方で。
「あー……ヒューゴ言っちゃった。でも、セクハラ止めてくれたからいいか」
「それな……っと、殿下? 強制にあたりかねませんので、お控えいただいた方が懸命かと存じます」
ええと……オスカー殿やシルヴァン殿もですの? こちら三名、何か企みがありまして? そんな気がしてなりませんの。
「……なるほど、ね。アリアンヌ様、バルコニーに出られては? それでわかると思います」
イヴは事情は知らずとも察したようです。彼はある一点を見上げていました。
「……あら」
それは私も何気に気になっていたもの。その……作られた鳥? 飛んでいますわね? 私が動くと追尾もしてくるようですわ。
「……む。ひとまず行くぞ、アリアンヌ!」
「はいっ」
私たちは疲労もなんのそのと、謁見の間から続くバルコニーへ。
「ああ……」
イヴが言った通りでした。三者の企て、そういうことでしたのね……。
「も、もう! なんだよ、言ってくれてもいいじゃないか!」
殿下も空を見上げては絶叫してました。盛大に拗ねていえるともいえました。ああ、飛び回っている鳥? にも不満そうにしていましてよ。
「殿下――続いてますから」
そうです、続いているのです――空に映像は浮かんだままでしたから。鳥に文句をいう殿下も、落ち着かない様子の私も映し出されていたのでした。
「……ダンジョン配信、そうきましたわね」
中継されていたとは、気づきませんでしたわ……。
「……ふふ」
ねえ、殿下。もうね、十分に伝わっていると思うのです。あなたの民への思い、きっと届いたことでしょう。
あとはそうですわね――これからで示していけばいいと。高揚しきっていた私はそこまで言ってしまいましたわね。
「……」
私はこっそり殿下の横顔を拝見していました。ええ、大丈夫でしょう。
殿下ならば――共にアリアンヌ様もいらっしゃるのだから。
この国の未来は明るいのだと、心から信じられたのです。
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