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偉大なり、補助スキル
しおりを挟む鬱屈とした洞窟内、滑る床を慎重に歩いています。こうも、こうも歩きづらいものでしたの?視界も見えづらいものです。ランタン頼りに私たちは進んでいました。
「あ、見て? 宝箱だよ」
「まあ!」
ブリジット様が見つけてくれたのは、通路の端にあった宝箱。色は――。
「……白、ですの?」
紫でも緑でも茶でも……虹色でもない。新たな色。
「……イヴ」
本当に彼が対象になったのだと、私は実感させられました。
「どうせ満タンなんだろ? スルーでよくないか?」
「ま!」
好感度は満タンですけれども、殿下なんてことを!
「いえ、それはそれですわ。彼が喜んでくれるなら……私は差し上げたいのです」
好感度もありますが、喜ぶ顔も見たいから。ええ、拾っていきましょう。私はそっと近づき、宝箱を開けようと――。
「!?」
悪寒が走った。私は開けて即、手を引っ込めた。そこで鳴ったのは音――噛み潰そうとした音。
「――ミミックか」
名無し殿、腕を組んで観察してらっしゃる……?ええ、彼の言う通り、この宝箱は――。
「み、みみっく、ですの?」
あろうことにも偽モノですの……しかも擬態した魔物……?
「ご、ごめんね!」
ブリジット様は慌てて謝りつつも、宝箱に浄化の魔法をかけていました。それによって消滅していきましたわね。
「いえ、ありがとうございます」
「ううん……こんな罠があるだなんて……もー!」
「そんな、ブリジット様。助かったのですから、落ち込まないで」
「うん……」
ね?と語りかけると、ブリジット様は少し納まったようです。
「なに、倒していけばいいんだ!俺も君にならって脳筋でいこうか」
「ああ、そうだな。先手で討っていけばいい」
えっと、お二方、そうなりますの?私、そのお考えは賛成寄りではありますけれども。
「ぐぬぬ……私も慎重さが足りなかった……私も脳筋だった……?」
「ブリジット……?」
ブリジット様は頭を悩ませてらして?いえ、フォローしましょう!
「先程のは偶々でしてよ!? ブリジット様、しっかりしてらっしゃるではありませんの!」
「そ、そうかな……」
少しは回復されたかしら……?
ああ……補助スキル、その偉大さを思い知らされたのでした。
とはいえ、ここは武の力、癒しの力をもって乗り越えて参りましょう。私は奮い立たせるのでした――。
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