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正直言って、珍道中
しおりを挟む「ひい!」
と、申した矢先でした。進行が難しいことよりも、擬態した魔物よりも。大変なものに遭遇してしまったのです!
今となっては私の天敵なる存在が現れてしまったのです! ……ええ、そうでした、洞窟ダンジョンでありましたでしょう!?
ああ、色鮮やかで愛らしき兎の魔物たちよ――ラッキーラビットたちよ! ああ、トラウマが蘇ってきましたわ。
「わあ、可愛いねぇ。なんか踊れば宝石とか恵んでくれるんだっけ」
「ブ、ブリジット様?」
ブリジット様は御存知のようで……まさか、踊る気ですの!? 大変お可愛らしいとは思いますけれど! 状態異常であっても大変大変可愛らしいとも思いますけれど!
「なんだぁ、アリアンヌ? 随分と怯えているな?」
「え……ええ、色々とありまして。退避が賢明かと、進言させてくださいませ」
私の異変に殿下は早速気づかれました。なればこちらも申したいと。ですが、殿下は。殿下の方針といいますと。
「ふむ。いや――斬ろう。君の憂いを断ち切らないとな」
「こ、困りますわ、殿下! 私を思ってのことなれど、温厚な魔物でもありますから。流す血がないに越したことはないかと!」
「えー?」
殿下にこやかですけれど、腰にある剣に手をかけています。やる気、ですわね……!? ちょっと狂王めいてましてよ? ……お止めしませんと。
「……」
そこで無言でずいっと前に出てきたのは――名無し殿でした。彼も討伐する気かと、私の顔は青くなったのですが。
「……」
ええ、無言のまま……ですわね? 黙られたまま……立ってますわね? それのみの動き、それなのに。
「……?」
ラッキーラビット、逃走していきましてよ? それだけではありません。大量の宝石も置いていって……どういうこと?
「……やはり逃げられるか」
なんだか残念そうな名無し殿の声。これは本人が望んでではないのでしょうか? ――慄いているのはラッキーラビット側と?
「行っちゃった。踊ってみたかったのに」
「行っちゃったな。兎狩りにならなくて良かったのか? いや、良かったんだな。な、アリアンヌ? というか、踊るところ見てみたかったなぁ。な、アリアンヌう?」
拍子抜けではありますが、ええ、これ以上関わらなくて良かったのですぴょん。それにしても、ブリジット様も殿下も悠長過ぎて羨ましいやら……。
「……ぴょん?」
私の体は一瞬にして竦みました。あ……良かった、語尾がまともになってますわ。ええ……完治しているはずですわ!? そう、条件反射のようなものですわね、そう!
その後も道中は続いていきます。奥に進めば進むほど、魔物の出現率は上がっていきました。
「ああ……魔物の数が増えてきたなぁ。うずうずしてきたなぁ……」
「殿下……殿下?」
殿下、目が血走ってきてませんこと? 息も荒くなってましてよ……?
「……ご令嬢。私たちで仕留めていこう」
「ええ、そうですわね……」
私と名無し殿、頷き合いました。下手に殿下に戦わせると、その、また興に乗ってしまう気がしたのです。殿下は後方でぶうたれてましたが、ええ、これは譲れません。
武の力をもってして、癒しの後方支援もあって、私たちは歩き続けていました。
「――ここいらで休息をとろう。火でも起こしておこうか」
焚火の跡があった場所でした。そこで名無し殿が提案してきたのです。
「え、大丈夫? 安全な場所?」
通常に戻られた殿下が尋ねています。名無し殿はその質問を受けて。
「ああ、大丈夫だ。私の勘が告げている」
「ええー……」
堂々と答えられたものだから、殿下は困惑していました。
「ほら、勘も侮れませんわよ」
名無し殿、ダンジョンの覇者ですもの。そうして乗り切って来られたのでしょうし。
「ぶう……」
殿下、今度は面白くなさそうですわね。名無し殿を庇ってと仰る殿下、ぶうたれてますわね。
「ちょっと殿下……私たちもね、ここ休息地点にしていたから。ほとんど魔物が寄りつかなかったよ?」
「むう……」
それでも聖なる力で満たしておくからと。ブリジット様の経験則と対応策によって、殿下は引き下がったようです。
「まあ、俺はろくに戦ってないからな。君たちは体を休めておくといい」
「まあ……」
バレバレでしたわね。とはいえ、疲れているのは殿下もそう。交替で休むことになりました。
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