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フラグは折っておきたい
しおりを挟む「名無し殿。今の季節もそうですが、夏でもご一緒できたらいいですわね。夏休みもありますし、ダンジョン三昧ですわよ」
ごめんなさい、名無し殿。『今』は約束できませんが、いつかは――。
「私は卒業している」
「まあ、そうでしたの。失礼しましたわ」
同じくらいと勝手に思っていましたが、卒業されている方でしたのね。私、彼のこと本当に存じてませんのね。というか、どうして私は学生と思ったのかしら……?
「……だが、楽しそうだな」
「!」
微かな笑い声。名無し殿、笑ってくださいましたのね。
「ひとまずは、ご令嬢が入学前――その前には共にしたいな」
「私の入学前……というか、御存知ですのね」
私は喜びはするも、気にはなってしまいましたの。彼は私を令嬢と呼ぶ。名乗ってませんが、ああ、名乗りそびれてしまっていましたわね……アリアンヌ・ボヌールであると。ですが彼、御存知のような?
「……」
名無し殿? またしても黙られますの?
「……有名だろう? 公爵家のご令嬢は――」
「――それにしては? 詳し過ぎるというか、不自然というか?」
名無し殿の発言に応じたのは殿下でした。いえ……殿下? 起きてらしたの?
「……」
名無し殿、またしても。ただ殿下の方を見ていますわね。殿下はよっと体を起こされていました。
「色々と話は聞かせてもらったぞ? おっと、盗み聞きじゃないからな? 聞こえてきた、聞こえてきたんだ、うん!」
殿下……いえ、殿下はこういう方でしたわね。
「夏を迎えたらねぇ……?」
「……」
殿下、咎めるような口調ですこと。私、冷や汗ものですわよ?
「ま、それは追々として、だ。これ以上良い雰囲気になられても、だ。俺もずっと起きていたわけだしな? ここまでだ、ここまでっ」
殿下はちっとも眠くなさそうでした。私たちを監視しています。ですが、殿下は抜かりない方。見張りの役も兼ねているようです。
「ムードぶち壊しの会話してやるっ」
「殿下?」
「鬼嫁の圧が怖いけど、してやるんだっ」
殿下、あなた……。
「名無し殿、その頭部は本物なのか?」
「でっ……」
殿下、あなた! かなりぶっこんだ話ではありませんの! 名無し殿も困ってらして――。
「本物ではない。作ったものだ」
「え」
さらりと衝撃の事実。いえ、衝撃ではありませんわね。衝撃でなかったことが衝撃というか。私は何を申しているのでしょう。
「……ふわぁ」
いけない、淑女としたことが。かなり欠伸を噛み殺したつもりではありますが……眠くなってきましたわ……?
「っと」
眠りに落ちる寸前、私は誰かに寄りかかったような。誰かが優しく受け止めてくれたような。
「おやすみ、アリアンヌ――」
ああ、殿下でしたのね……急に眠くなって、このようなこと、申し訳――。
「――スキルがない、よく言ったものだ」
「えー?ないけど?……ダンジョンのスキルはな?」
「殿下、あなたのその力は――」
お二人は語られていたようですが、眠っていった私にはよく聞き取れず――。
私、充実した仮眠をとらせていただきましたわ。
それからも交替で見張り役をこなしていき。
十分に休息をとった私たち、旅路を再会したのでした。
奥深く、どんどん進んでいって。魔物を討伐していき、道中で宝箱を回収していき。
そうしてようやく――最終地点に到達したのでした。
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