367 / 442
金策金策金策金策アリアンヌ様
しおりを挟むシルヴァン殿に連れていっていただき、空中にあるダンジョンに到達しました。
『今回、私が隣に座ってもよろしいでしょうか』
そう提案したのはヒューゴ殿でした。積極的ですこと。シルヴァン殿もそれでよし、と。後部座席組の私たちも交えて、話をしていましたわね。帰りはといいますと。
『あ……それじゃ、帰りは僕になるのかな。うん、確かそうなるはず』
イヴが名乗り出てました。ローテーションかよ、とシルヴァン殿。彼はつっこんでいましたわね。
そんなこんなで、私たちは洞窟群の前までやってきたのです。
「そうですわね……」
もう……ラッキーラビットはよろしくてよ……と、いいたいところですが。皆様の目的もありますわね。募ってみましょうか。
「お聞かせくださいまし。皆様の目的はなんですの?」
さあ、お答えくださいまし。
「はいっ! 鍛錬と……その、金策というか、財政の足しになればって……」
気持ちよく挙手なさったのはオスカー殿。ですが後半になると、恥ずかしそうにしていました。
「オスカー殿! 素晴らしい心掛けでしてよっ!」
私は後押ししましてよっ! 募っておいてではありますわね。
「そうです、オスカー! お金があればもう……あのような思いは……!」
ヒューゴ殿、力説されてますわね。確かにヒューゴ殿、切実に金策を求めていた時もありましたわね……ええ?
「そうそう、よきよき。金だよ、金!」
シルヴァン殿もそうなりましょう。
「ええ、私も。金策重視でよろしいと思いますわ」
「はい、僕もっ! それでいいと思います!」
「あら、よいのですか? イヴの希望も取り入れましてよ?」
イヴ、遠慮しているのかしら? 殿下のお言葉を借りるならば、無礼講でもよいのに。イヴは主を立ててくれているのでしょうが……。
「僕の希望っていうなら……あなたが喜んでくださること、かな?」
はにかんでいましてよ……イヴ。なんとも愛らしく、花も恥じらう姿ですこと。
「……」
「……」
あの……オスカー殿もシルヴァン殿も? どうなさったのいうのでしょう? またも重苦しい空気ですわね……?
「……」
って、ヒューゴ殿まで? 彼は他の殿方を順々に観察していますわ? 平静なる態度ではありますわね?
「……まあ、あれですね。鍛錬と金策しつつも、宝箱回収をしていけば良いかと。私は採取に専念さえさせていただけたら」
「ええ、そうですわね!」
ヒューゴ殿、お見事にまとめてくださいましたわ。普段通りのあなたが頼もしきこと!
「……アリアンヌ様、お詳しいでしょう? 効率の良いルートのご提案、お願いしますね?」
「ええ、お任せくださいな!」
ここは私もはりきりましょう! ふふ、ノーマルダンジョンともいえし洞窟タイプ! 私はどれだけ潜ったことか! さあ、頭を張り巡らせましょうか!
「そうですわね、ラッキーラビットは除外しますから。好まない方もおられるでしょうし」
私の発言を受けて、イヴは目にみえてホッとしていますわ。そうでしょうね。踊るあなたは愛らしかったですが、無理強いしてましたわね……今思えば。
「あれ? ラッキーラビットじゃないんだ。うん、俺としても良かったんだけど。踊るとか、さ……」
「まあ、そうですのね」
オスカー殿、ノリノリ派ではありませんのね。表のあなたならいざ知らず、素のあなたはそうなのかもしれません……ん?
「……意外だって驚かないんだ」
と、驚いているのはオスカー殿。あ……私、驚くべきでした? これでは、素のオスカー殿を存じているかのように。
「そっかぁ……」
「……」
どうしてかオスカー殿は本当に嬉しそうにしていて……私までも胸がぎゅっとなるような。
……いえ、集中しましょう、集中。
「――ええ、そうしましょう! 皆様、こちらですわ!」
ルート構築できましてよ! 私は先導することにしたのです。
「おー、えらいえらい。でも、後ろな?」
「!」
シルヴァン殿、やる気のない拍手のあとに――私を彼の背中に回したのです。それだけでなく、イヴも手招きしていて。
「その入口、俺もあまり踏み入れたことないから。イヴ様、探知よろしく」
イヴは探知――そしてシルヴァン殿、あなたはというと。
「突っ走りかねないからな。それに言ったわけだし」
――守りたい、と。
「……」
いつか殿下が仰っていたような。シルヴァン殿の囁くような喋り方、それは、その……自重させてくださいまし。
「あ……俺も俺も! ちゃんと守るから!」
オスカー殿もですの? とても有難きことではあります。
「あ、ありがとうございます……?」
とはいえ、この状況はなんというのでしょう。この不慣れな感覚はなんなのでしょうか。
過ぎ去りし日々、置いてきた思いや記憶。そのはず、そのはずなのです。
ですが、今の彼らはまるで――。
「……いいえ!」
あ、声に出してしまいましたわ。ひとまず、彼らが元々良い方々ですから、それで私にも配慮してくださっていると……ええ、そういうことなのでしょう!
0
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
やっかいな幼なじみは御免です!
ゆきな
恋愛
有名な3人組がいた。
アリス・マイヤーズ子爵令嬢に、マーティ・エドウィン男爵令息、それからシェイマス・パウエル伯爵令息である。
整った顔立ちに、豊かな金髪の彼らは幼なじみ。
いつも皆の注目の的だった。
ネリー・ディアス伯爵令嬢ももちろん、遠巻きに彼らを見ていた側だったのだが、ある日突然マーティとの婚約が決まってしまう。
それからアリスとシェイマスの婚約も。
家の為の政略結婚だと割り切って、適度に仲良くなればいい、と思っていたネリーだったが……
「ねえねえ、マーティ!聞いてるー?」
マーティといると必ず割り込んでくるアリスのせいで、積もり積もっていくイライラ。
「そんなにイチャイチャしたいなら、あなた達が婚約すれば良かったじゃない!」
なんて、口には出さないけど……はあ……。
【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!
白雨 音
恋愛
公爵令嬢アラベラは、階段から転落した際、前世を思い出し、
この世界が、前世で好きだった乙女ゲームの世界に似ている事に気付いた。
自分に与えられた役は《悪役令嬢》、このままでは破滅だが、避ける事は出来ない。
ゲームのヒロインは、聖女となり世界を救う《予言》をするのだが、
それは、白竜への生贄として《アラベラ》を捧げる事だった___
「この世界を救う為、悪役令嬢に徹するわ!」と決めたアラベラは、
トゥルーエンドを目指し、ゲーム通りに進めようと、日々奮闘!
そんな彼女を見つめるのは…?
異世界転生:恋愛 (※婚約者の王子とは結ばれません) 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。
さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています?
※更新について
不定期となります。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる