脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
411 / 442

青薔薇のご令嬢

しおりを挟む

 そして、週末。私は今、アルブルモンド城にお呼ばれしています――夜会の装いで。
 殿下、突然の招集でございました。思い立ったのか、夜会を開くのだと。各国からの要人も招かれるのだと。

「……要人」

 思い浮かぶはサミュエル様。いえ、今までもこうした場にて、お会いしたことはありませんでしたから。

 さあ、参りましょうか。城ともなりますと、煌びやかさも各段と違いますから。



「――今宵はようこそお越しくださいました」

 よく通るお声。この華やかなる場、一層と光っておいでなのが我らが殿下。堂々としていらっしゃいますわ。挨拶とて淀みなく。夫人たちも眩そうに見つめていて。

 挨拶を終えた殿下はこちらへ。私にも視線が集っていますわ。羨望や値踏みするようなもの、いけない、しっかりしなくては。私の喉はごくりと鳴ってしまいますけれど、ここはしっかりと――。

「さあ、我が妻よ――」

 しっかりと……って、殿下? 

「いっけない、間違ったぁ。婚約者、婚約者だった。まだ、な?」 
 
 ……殿下? 公衆の面前で、舌ペロですの? 

「そうそう、その顔」
「……あ」 

 私の緊張は解きほぐされていたのでしょうか。目の前の殿下は優しく笑んでらして。

「一曲お相手願えますか? ――アリアンヌ嬢?」  
「ええ、喜んで。お願いしますわ」

 殿下の差し出された手を、私もとって。会場に鳴り響くは楽団の演奏。軽妙なるリズムに乗って、私たちは踊っていく――。



 一曲を終えた今でも――殿下の手は繋がれたまま。

「さあ、続けていくぞ? 連続だコンボだ!」  
「いえ、殿下……」

 私、視線が痛くてよ? あなたと踊りたい夫人は多いでしょうし、国交ということに関しましても……殿下、まだ離してくださいませんわね。こちらから――。

 突如、沸く会場。

「――遅れまして申し訳ありません」

 遅れてやってきた殿方、艶やかな黒髪に見事なまでの体躯。以前拝見した時は目にかかるような長めの前髪、今は上げられているからこそ。その美貌は際立っていたのです。

 突然の美丈夫にこぞって夫人たちは目を奪われていたのです。それは私も例外ではなく――。

「――国、サミュエル・シエル・フィエルでございます。今宵はお招きに預かりまして、光栄にございます」

 凛とした佇まい――サミュエル様のご来訪でした。

「……え、なにこれ。主役は遅れて登場みたいな」

 私の隣で不満をたれていた殿下でしたが、そこは殿下、何もなかったかのように笑顔で受け入れていたのでした。見事な切り替え。

「いやいや、ようこそ!! 歓迎いたしますよ!! ――是非とも楽しんでいっていただきたい」
「それは僥倖でございます」

 美しき殿方のご対面、乙女は沸き立つもの……ただ、その、なんでしょう? 牽制しあっているというか、火花が散っているというか? 近くにいるからこそでしょうか、感じ取れるのは。
 ……国の中枢たる方々、色々とあるのでしょうか? 

「――さて、ご令嬢」
「私、ですの?」 
 
 婚約者である私も交えての歓談中、私たちの視線が合いました。不思議な感覚、あなたと目が合うだなんて。

「一曲いかがでしょうか」
「まあ……」

 これも交流の一つ、でしょう? 失礼のないようにせねば。

「え、なんで。踊る必要なくないか?」  

 失礼のないように……殿下!! 

「……む、鬼嫁の気配。ほら、名無し殿……違った、サミュエル様はなぁ? 他に踊りたいご婦人もいらっしゃるようだしぃ?」  
「それはあなたにこそ言えたことかと」

 お二方、素の状態ではありませんか。配慮あってのひそひそ声でありますけれど。それにサミュエル様のご指摘通り、殿下に向けられし熱い眼差し。貴婦人たちは待ちわびてましてよ。

「くう……」

 殿下、これもまた大事なお務めですものね。私は笑顔で送り出すことにしました。

「くう……!」  

 殿下、唇を噛み締めておいで。ですが私……存じてましてよ。

「――これはこれは貴婦人方!! 花々が咲き誇っておいでだ!」 
 
 このノリノリっぷり。実に興に乗っているではありませんの。ええ、殿下。あなたが女性好きなのはもう、そうなのでしょうね。

「なんともまあ、読めない方だ……ああ、気を取り直して」
「ええ、踊りましょうか?」 
 
 ふふ、あなたと踊ることになるとは。思ってもみなかったことですわ。彼の巧みなリードに、私は身を任せられてもいて。
 視線が集まっていても、堂々としていられる。ああ、なんて楽しきこと。

 本日の私のドレスは青色。奇遇ですこと。踊ると翻ってもいて――。

「青い薔薇のようだ」
「……ま。そのように例えてくださりますの?」 
 
 照れもしますわ。それでも素敵な例え。私は笑顔で受け取ろうと。

「ああ。一番美しい花だ」
「ま、まあ……」
「ふっ」

 臆面もなく。もう赤面も隠せなくなってしまいました。そうなると、ますます彼は愉快にしておりますわ……!! 

「うう……」

 踊る為だから、体も密着せざるを得なくて。こんなにも反応しているのは私だけ、サミュエル様はさぞかし余裕だと。

「……!」
  
 顔を見上げた先にあったのは――真剣なる眼差し。それでいて、微かに染まった頬。
 こんな、こんなあなたの顔を私は知らなくて。

「あっ……」

 いけない、彼の足を踏んで――。

「……?」
  
 見事でした。サミュエル様は華麗に避けて、何事もなかったかのように私をリードしているのです。

「本当に愛らしい方だ。目が離せない」
「助かりましたわ……とはいえ」
 やはりどこまでも。余裕でした――。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。

しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。 次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。 破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界にお助けキャラとして転生したリリアン。 無事ヒロインを王太子とくっつけ、自身も幼馴染と結婚。子供や孫にも恵まれて幸せな生涯を閉じた……はずなのに。 目覚めると、何故か孫娘マリアンヌの中にいた。 マリアンヌは続編ゲームの悪役令嬢で第二王子の婚約者。 婚約者と仲の悪かったマリアンヌは、学園の階段から落ちたという。 その婚約者は中身がリリアンに変わった事に大喜びで……?!

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...