脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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セレステも私も

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「……ユイちゃん、私」

 ブリジットの力は弱まり、繋がれた手も解かれていく。ああ、彼女は戸惑っている。

「セレステはのこと大事なの……あんなことになっても、それでも……!」  

 ブリジットの震え声。ええ、憂いが、惑いが伝わってきて。

「私、セレステを失いたくないの……だからって、どうすることもできなくて」 

 ――ユイちゃんだって失いたくないのって。彼女の頬に伝う涙。

 ええ、ブリジット様。

 ……うん、ブリジット。そうだね。

「……ありがとう、ブリジット」
「ユイちゃん……?」 
 
 その気持ちが嬉しいんだ。両方、大事に思ってくれるんだよね。セレステも私も失わないようにって。

「うん、それが一番だ――私たちにとってはそうなんだ」

 ユイとして、あなたに伝えたい。

「もう一度イヴに……イヴ君にお願いしてみよう。そして」

 本人と直接――本物のセレステと話しをしよう。

 ねえ、セレステ。あなたはどこの誰に生まれ変わったの? 面白くない、つまらないって。贖罪の路で罪を償ってきて――一緒に大樹の元、笑い合っていたのに? 

「セレステ……」

 セレステ、今、近くに誰かいる? 

 ねえ、セレステ――話をしよう? 

「ブリジットも。私、必ず戻ってきますから」
「そんな……」

 ブリジットも迷っている。私を送り出すこと、不安で仕方ないのでしょう? それはもう、勘違いでもないってわかっているから。ありがとう、ブリジット。でもね。

「お願い、信じて」

 ちゃんと、戻ってくるって。信じてほしいし、私も自分を信じたい。

「……」

 ブリジットは俯いてしばらく、考え込んでいたけれど。

「――セレステのことは調べられなかったけどね」

 そう口にしては、両手を窓に向かってかざす。そこが一番弱そう、とも……? 

「賢者の秘術に関して――その対抗策は調べられたの!」
  
 彼女の両手から放たれるは、強く白き光。一点に集中しています!! 

「くっ……」

 あともう少しなのに、と悔しそうにしている彼女。

「――ええ」

 尽力してくれたブリジット、私とて静観している場合ではないでしょう。
 そうです、力です。パワーです! 力こそパワー!! 

「はああああ!」  

 愛用の鉄の棒を手にし、私は窓に向かって飛び掛かり――激しい衝撃を与えたのです。

 ――光が砕け散った。窓ガラスと共に割れ、開かれた夜空。

「!」  
「!」 
 
 私とブリジットは顔を見合わせ、バルコニーへと踊り出た。

「失礼しますわよっ」
「きゃっ」

 失礼、ブリジットを横抱きにして、私は宙に向かってジャンプ!! 初の試みですが気合でしてよ!! 気合!! 

「……はっ!」  

 ……い、痛い。足がジンジンするけれど、なんとか着地。ブリジットも無事、良かった。

 ああ、邸から騒ぎ声がしますわ。大事にもなることでしょう、それだけのことをしたのですから。
 ブリジットには下りてもらい、私たちは公爵邸から離れることに――。
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