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私を呼ぶ『彼』の声
しおりを挟む『ふふ、朗報でーす。全員攻略のボーナスっていうのかな?』
――アリアンヌ様は戻してあげてもいいと。
「ああ……」
そうだ。セレステならどうにかしてくれるかもって、そう考えて動いていたじゃない。
『だからさ? こっちにおいで? ちゃんと――辿り着くんだよ?』
「ええ、セレステ」
願ってもないこと。
『はは、潔いこと!! はは、はははは』
素体人形に表情はないけれど、あるとしたのなら。さぞ歪んだ笑みを浮かべていることでしょう。
『そうだなぁ、ただ来るだけじゃ面白くないなぁ?』
笑い終えたセレステは、私の方に一歩近づいてきた。
『いつまでも、いつだってそう……光を失わない目』
近づいては私の顔は覗き込まれていた。
『――ねえ、ユイ。一緒に堕ちてきてよ。絶望したあんたでも、壊れたあんたでも』
――大事にしてあげると。
「セレステ……」
私はね、やっぱり思わずにはいられない。
あなたは本当にセレステなの、と。
いえ、それを確かめに行きましょうか。
「待っていて、セレステ」
どれだけの恐怖が絶望が押し寄せてこようとも――必ずあなたに辿り着いてみせるから。
さあ、黒い霧が私を取り巻いてきましたわ。
ああ、そうですわね。イヴにも感謝しませんと。必死だった彼からしたら、たまったものではないですわね。
でもね、イヴ。心の準備が出来ましたから――あのままなら私、闇に呑まれていたかもしれない。
「行ってくるね、ユウ君――」
「――どうして私はこうも、損な役回りなのでしょうね」
「え……」
同じ声だけれど、この声は、話しぶりは違う。
ここで……ここでヒューゴ殿?
「――」
声がした。
確かに、私の耳に届いた。
私を呼ぶ『彼』の声。続いて部屋に突入してくるは――絆を紡いだ彼ら。
「ああ……」
今になって、皆様方を目にすることになるなんて。
――いいえ、最後ではありませんわ。私はちょっと、セレステの元へと参るだけ。
「――行ってきますわね」
だから、挨拶はこちらで。
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