脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
423 / 442

セレステが生きた時代

しおりを挟む


 黒い蝶と一緒に走り続けていた。ただひたすら、セレステを目指して。

 あの混沌とした場所とは違って、淡い光で満ち溢れていた。温かな光。

「――セレステ?」 
  
 セレステ、なのかな? なんだろ、幼い感じもするし……というか、少し若返ったとも? それにセレステだけではなくて、空間まで一緒に映し出されていた。

「ホログラム?」 
 
 そうなのかも。投影されているんだ。私の前を歩き回っているけれど、本人ではない。

「……!」  

 一気に目の前が変わった。私の目の前の世界、そこは想像を超えたものだった。

 高層の建物が連なっていて、人々は空を自由に飛び回っている。見慣れないデバイス、それを容易に扱う人たち。
 結衣が生きてきた世界も発展していたけれど、これはもう遥か先のものなんだと。そうだった、セレステの生きた時代は未来だって。

 そういった機械的なものだけじゃない。突然水を沸かせたり、火も起こしたりもする。それだって何てこともなく。

『今日のランチはっと』

 若い男女が建物に入っていく。食事処、なのかな。にしては、無機質な一室ともいうか。でも、タッチパネルに触れるとすぐに食べたいものが出てきていた。どういった技術かはわからない。

『――今日はっと、このスタイルでいこう』

 ある女性の一室。そう、女性だったのに――彼女は突然、『彼』になっていた。パッド的な何かで操作して、それからそれを自身に照合させ、そうしたら電子的な光に包まれて。それで体型や性別まで変わっていたから。

「未来の世界……」

 機械と魔法が混ざった世界、好きに生きられる世界、飢えも苦しみない世界。

「……セレステが生きていた世界」

 理想郷ともいえる世界、なのかな。 

「ねえ、セレステ? あなたはどうしてなの」

 こんな満ち足りた世界でどうして――罪を犯したというの。 


『そうだな、今日は男の気分。でもって――ふーん、四年後だとこんな感じなんだ』

 セレステの声。聞きなれた声に――大樹で目にした姿。私たちと同じ年頃の、すらりと長身の彼。

 か、かなりの変貌? その、つまり? 成長した姿が私たちが見てきたセレステ、ってなると本当のセレステは――。

『ん、しばらくはこれでいいか。さーて、今日は何をしようかな?』  

 ここはセレステの部屋、研究室? 本棚がいくつもあって、中央にある机にも本は山積みにされていた。
 私、安心したともいうか、不思議な気持ちともいうか。本という存在が残ってくれたこと。身近な存在が残っていたことがなんとも落ち着くもので。

『セレステサマ、オハヨウゴザイマス』
『おはよ。今日もチューニングするから』
『アリガタキシアワセ』

 セレステの近くにやってきたのは、これもまた見覚えのあるタイプのロボット。なんだろ、懐いている感じがして可愛い。メンテするセレステに、ロボットは大人しく待っている。微笑ましい空間だった。

『……やっぱ、この時代が気になるんだよね』

 セレステが手にとった本、私には読めない言語だったけれど。

『――狂王と賢者、か』
「!」 
 
 文献として残されていたの!? それを興味深そうに見ていたのは、セレステ。

『賢者……セレステ。偉大なる賢者。悪しき王を討った者だっけ』
「……?」  

 賢者の名がセレステ? ええと、セレステも賢者と繋がりがあるから、子孫だった的な? 名前はあやかったのかな? うん、混乱してきた。

『はは、どんだけ読んでるの――飽きないんだよ、自分』

 そう言ったセレステが手にしている本、かなり擦り切れていた。ページも一枚落ちたので、それを拾ってもいた。苦笑しつつも、愛しそうに眺めていた。

『……で、この円盤? ディスクっていうんだっけ? これも関連しているとみた!』  
「ななな……!」  

 空間から取り出したのは、パソコン!! 懐かしい!! でもって、ディスク!! そのラベル、すごく見覚えがあるものだった。

 ――脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯。それをセレステがプレイしていたというの? 日本のゲームが、どうしてこの世界の、それも遠い未来に行き渡ったんだろ……。

『あはは、脳筋脳筋』

 椅子に座って胡坐をかいているセレステ。すごい笑っているな……セレステ。

『学校、か……へえ』

 学校に入ってない? それか……学校自体がないとか。必要がなくなった、とか? 

『楽しそう……』

 と、眩しそうに見つめるセレステ。

『――って、独り言やば。どれだけなんだよ、自分』

 と、誤魔化すかのように笑うけれど。ううん、セレステ。私も聞いていたし。

『セレステサマ、ワタシ、キイテマス』

 ロボットもそうだよ。ずっと相槌打っていたんだ。

『はは、ありがとっ』

 セレステもわかってはいるんだと思う。嬉しそうに笑っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。

しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。 次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。 破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...