脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
425 / 442

やっと会えた

しおりを挟む
『……』

 魔力を使い果たしたのか、セレステは落下してきた。

「セレステ!」  

 私は抱きとめようとするも、それは残酷にも通り抜けてしてしまって。映像だって突きつけられてしまった。

『うう……』

 頭から血を流しているセレステはもう、意識が朦朧としていた。今にも、その命が――。

『ガーピピーガー……セレステ、サマ……』

 いくつもの箇所が貫かれたロボットが、セレステのことを呼んでいた。もう、動くこともままならないのに、それでも。

『あああ……』

 セレステは呻く。手を伸ばすけれど、もう何にも届かなくて。

 大切だったロボットも。ただそこで生きていた存在たちも。

 ――罪なき存在だったのに。理不尽にもだった。

『ごめんなさ……』

 それが――セレステが最期にみた世界だった。



 焼け果てた世界から、黒く淀んだ路へ。ここは贖罪の路だと思う。

『――おぬしは被害者ともいえよう。だが弱かったからこそ、あやつの言葉に屈してしまった。受け入れてしまったのだ』

 聞き覚えのあった声。生気を失った目をしたセレステ。

『ああ、罪なき命ぞ。おぬしは多くの命を奪った。それが事実だ』

 歩かされている、そういうべきなのかな。セレステはおぼつかない足取りだった。

『――長き旅だ。心して参るがよい』

 そうだ、ここからだ。セレステは罪を償う為に、長い道のりを歩むことになって。

「……やっぱり触れられないんだ」

 何度も触れようとしては、肩透かしを食らってしまっていた。

「――待ってて、セレステ」

 話をしよう、セレステ。


 私にとっても長い旅だった。もう何日経ったかもわからないくらい。
 不安な気持ちは残るけれど、それでも前を向こう。信じて――。

「そう、だったんだ……」

 淡い光の世界を抜け、私が辿り着いた場所。そう、そうだったんだ。
 高層の建物群は倒壊しきっていて、文明の跡形もない。そうだね……滅ぼされたから。

「セレステ、そうだったんだね。あなたは」

 ――この世界、この時代に転生していたんだ。

「よっと」

 長いドレスを私はたくしあげた。足場が悪いから、慎重に歩かないと。気持ちは急くけれど。ヒールが高めの靴じゃなかったのが幸い。

「うん、よろしくね」

 黒蝶が導いてくれる。セレステの居場所、教えてくれるんだね。ありがとう。

「……」

 本当に滅んでしまったのかな。そう思うには空気は澄んでいて、太陽だって眩しい。

「……あ」



 かつては研究所だった跡地。瓦礫を持ち上げながらも私は分け入っていく。たてつけの悪い扉だってなんのそのっ!! 鍛えた腕力でこじ開けるっ!! まだある扉だって、がんがん開いていく!! 奥へと進んで行こう!! 

 ここは……地下にあたるのかな? とにかく暗い。日の当たりがない。

「ここって……」

 セレステとの夢に出てきた――ブラウン管のモニタールーム。

「……!」  

 映し出されたのは、私たちが暮らしていた世界。ブリジットや彼らの姿まで映し出されていた。

 ただそれは、過去の映像。それを眺めているのは。

「……つまらない」

 椅子の上で膝を抱えて、ぼやくのは。

「……面白くない」

 小さな背中、高めの声で呟くのは。

「こうして眺めているだけ。側にあんたがいないんじゃ――」
「いるよ」

 私は声をかけずにはいられなかった。『あんた』って、私だって確定したわけじゃないのに。

「!?」

 勢いよく立ち上がったセレステ。バランスを崩してしまって、椅子から転げ落ちそうになって――。

「はっ!」  

 駆け寄った私が、ぎりぎりで受け止めた。怪我しなくて良かった。 

「セレステ、なんだよね……?」 
 
 大人っぽい姿が、こんなにも若くなっていた。うん、四年前、成長期前とわかれば納得もいく。

 彼……ううん、もしかして彼女だったりもするのかな。わからない、でもいい。

「セレステ……!」  

 抱きしめられたから。体温だって伝わってくる。

「なんで、ユイが……」

 セレステは信じられない、そういった反応だった。

 うん、そうだね。今回の招き、賢者の介入があってのことだろうから。だから、いい。今はただ。

「わかんないけど、いい……やっと会えた」
「うん、セレステ……」

 セレステも抱きしめ返してくれた。今はただ、こうしていられたら。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな
恋愛
有名な3人組がいた。 アリス・マイヤーズ子爵令嬢に、マーティ・エドウィン男爵令息、それからシェイマス・パウエル伯爵令息である。 整った顔立ちに、豊かな金髪の彼らは幼なじみ。 いつも皆の注目の的だった。 ネリー・ディアス伯爵令嬢ももちろん、遠巻きに彼らを見ていた側だったのだが、ある日突然マーティとの婚約が決まってしまう。 それからアリスとシェイマスの婚約も。 家の為の政略結婚だと割り切って、適度に仲良くなればいい、と思っていたネリーだったが…… 「ねえねえ、マーティ!聞いてるー?」 マーティといると必ず割り込んでくるアリスのせいで、積もり積もっていくイライラ。 「そんなにイチャイチャしたいなら、あなた達が婚約すれば良かったじゃない!」 なんて、口には出さないけど……はあ……。

【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音
恋愛
公爵令嬢アラベラは、階段から転落した際、前世を思い出し、 この世界が、前世で好きだった乙女ゲームの世界に似ている事に気付いた。 自分に与えられた役は《悪役令嬢》、このままでは破滅だが、避ける事は出来ない。 ゲームのヒロインは、聖女となり世界を救う《予言》をするのだが、 それは、白竜への生贄として《アラベラ》を捧げる事だった___ 「この世界を救う為、悪役令嬢に徹するわ!」と決めたアラベラは、 トゥルーエンドを目指し、ゲーム通りに進めようと、日々奮闘! そんな彼女を見つめるのは…? 異世界転生:恋愛 (※婚約者の王子とは結ばれません) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?

榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した しかも、悪役令嬢に。 いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。 だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど...... ※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

処理中です...