脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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世界は続いていた

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 しばらく抱きしめ合っていたけれど、体を離したのはセレステの方から。

「あんたのことだから……全部知っている気がして」
「……うん」

 それはその通りだったから。私も素直に頷いた。セレステは小さく『そっか』とだけ。

「そう、だね。あんたはもう……受け入れてくれていたから」
「うん、そうだよ。セレステ」

 贖罪の路の話、あなたからだった。セレステが教えてくれたし、私は受け入れていたんだ。

「……ごめん、本当はまだドキドキしている。それでも、私はセレステを受け止めたいから」

 映像とはいっても、実際に立ち会ったような感覚だった。今でもまだ、その感覚は残っている。

「……ユイってさ、妙に正直者」
「……うん」

 セレステは苦笑していたし、私も認めるしかなく。

「そうだよ……私はそれだけのことをした。だからまた、この滅びた世界に生まれ変わった。私の罪滅ぼろしは消えたりはしない」

 セレステは深刻そうに打ち明けてくれた。償いの路を経たとしても、残り続けるんだね。罪の意識、消えたりはしないもの。

 ――ましてや、暮らしてきた世界、大切な存在を自らともなると。

「――ねえ、セレステ」

 私はセレステの手をとった。より大きな瞳をぱちくりとさせているセレステ。

「外、出よう?」  
「え――」

 強引だったね、それでも私はその手を引っ張り上げるかのように。逡巡するセレステお構いなしに、扉の先へ。

「え、いやだ、いやだよ……!! 見たくないよ、いやだ……!」  

 泣きそうな顔で、セレステはその場で踏ん張ろうとしている。それから訴えてもいて。

「……そのまんまだよ!! 突きつけられるんだよ、この世界はお前が滅ぼしたって!! わかってるよ、わかってるんだよ!」  

 そっか、セレステはそれからずっと……。

「セレステ……」

 ――自分が滅ぼしてしまったからと? だから目を背けたい、その気持ちはわかるよ。

「……お願い、セレステ。あなたに見てほしいんだ」
「ユイ……」

 本当にお願い。セレステ、あなたの目で確かめてほしいの――この世界を。

「……手、このままでいて」
「うん、もちろん」

 私は手を繋ぎ直した。セレステの表情も少し緩んだ。

 行こう、セレステ。


「――ここも、春を迎えていたんだね」

 外の世界に触れる私たち。春風が心地良いのは、時代も変わらずだね。

 瓦礫の合間から雑草が生えていて、少し遠くに花畑もあった。あ、鳥たちのさえずり。上空を気持ち良さそうに飛び回っていた。

 うん、春だねぇ。私は息を吸い込んだ。

「なんで……」

 セレステは茫然としてた。立ち尽くしたまま――未だに受け入れられないようで。

「終わりじゃなかったんだよ。まだ続いていたんだ」

 世界は滅びてしまったのかも。それでも再生もしていって。生き残った存在だって。

「ガーピピー……」

 そう、生き残った存在だっていたんだよ。その、欠損はしてしまっているけれど、セレステのロボットだって一命をとりとめていたんだ。

 ロボットは辺りを巡回をしていた。私が声を掛けても『ジュウカイチュウ、ケイビチュウ』ってつれなかったけれど。でもね、セレステなら。

「……アーク?」  

 名前、そうだったんだ。セレステがロボット、アークのことを呼ぶと。

「セレステサマ……」

 セレステには反応した。その場で動こうとはしない。そうだ、命令があった。セレステもそれ以上は動けずにいた、だけど。

「……プログラムニ、ソムキマス」

 って、主人の命令に背くように動き、アークは近づいてきた。そして、触れられる距離へ。
 アークはやっと主人と対面できた。嬉しいと思うんだ。

「はは、ははは……」

 セレステだってそうでしょう? だって、早速体を屈ませて。そんな屈託のない笑顔でアークに触れているのだから。

「蝶……」

 私の目の前を漂う二匹の蝶。黒い蝶たちがほどよい距離を保っていた。うん、そうだね――私は友愛エンディングを迎えたんだ。

 ついに――セレステと。書は置いてきてしまったけど、セレステのページも記されているって、そう思えるんだ。

「そっか……この世界が」

 立ち上がったセレステが目に映す世界。
 セレステはその光景を愛おしそうに見つめていた――。
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