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運命の分かれ道
しおりを挟む夜になると冷えてきたね。私たちはさっきの部屋に戻ることに。
アークも一緒だよ。応急処置もしてもらっていた。破損していた箇所は修繕……ううん、治療してもらっていたんだ。
「……ありがとう、ユイ。こっちはもう大丈夫だから」
「セレステ?」
「――元の時代に帰りなよ。つか、ほら」
「あ……」
セレステが映し出すのは、私の時代の映像。イヴたちがそこにいた。ヒューゴ殿の部屋で別れた、あの時から時間は動き出していたよう。
そっか、時間はそれしか経ってなかったんだ。とっくに運命の日は越えていたと思っていたのに。
イヴは掌握していたと言っていた。なら、もう私は――。
「……」
今回のことは、セレステに取り巻く賢者の思念のようなもの? そのことが巻き起こしたこと。まだ――影響は続いているのかな。
私は本当に帰っていいの? セレステは笑うようになってくれた。でも、本当に一人にしていいの?
約束のことがある。でも、もう少しは。許される限りはセレステの側にいたい―。
「私は――」
ふと、視界に入ったもの。背景が暗めなモニター、そこに映った私の姿――それは。
「私……」
黒髪の日本人、学校帰りの制服姿の――小川結衣だった。
そんな、いつから? いつの間に?
「急にユイに……?」
セレステが今になって驚いていた。そう、たった今……。
考えられるのは、運命の日を越えたから? 私は次の日を迎えられたから……?
「ねえ、ユイ!」
セレステが急に大きな声を出してきた。指し示してきたのはブラウン管テレビ。
「ああ……」
私は声を震わせ、口元を覆ってしまった。ああ、ついに、ついになんだ……。
ヒューゴ殿の部屋に突如現れた、金髪の美しき女性。凛とした佇まい、生まれ持った気品、仕草の一つ一つが本当に綺麗で。
「アリアンヌ様……」
私が小川結衣に戻ったように――彼女もアリアンヌ・ボヌールを取り戻した。
私の目的――願いが達成されたんだ。
だから……私はもう、アリアンヌではいられなくなった。
「ユイ……」
「……」
セレステが寄り添ってくれた。アークまでも。ごめん、まともに声にならなくて。本当はお礼を言いたいのに。
「……?」
イヴが焦った様子で術を発動させようとしていた。何らかの術を。
「イヴ・ポルト、こっちに来ようとしている?」
「……!」
セレステがそう判断していた。
「あんたを取り返そうって――イヴ・ポルトだけではないね」
そう、教えてもくれて……そんな、イヴに乗じようというの――『彼』も。
「……あれ?」
不思議そうに呟くセレステ。どうしたの?
「術が発動していない」
そんなことが!? でも、イヴは歯痒そうにしていて、頭をかきむしっていた。本当に悔しそうにしていて……。
使えなくなった理由、それは刻限だったか――元凶なる者の力が弱まったか。
憶測は色々とできるけれど――イヴがこちらに来られなくなったのは確かなこと。
それだけではない。たくさんのテレビ、それが次々と電源が落ちていく。それらにはもう映し出されることもなく。
彼らとの関わりはここまで、そう言われているかのよう。
「……ユイ。本当にこれでいいの? 会いたい人達――大切な人に会えなくなるんだよ?」
セレステからの問い。
私は自身の胸元に手をあてた。そう、アリアンヌ様は戻ってきたんだ。私も存在していられる。でも、本当にそれでいいの?
「私は――」
→本来の転生を果たしたい。
→戻りたい。
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