脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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新たなる日々ED④

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 温かな光に包まれていた。もう随分と長く訪れていなかった場所。

 ――大樹の御許にやってきていた。

 足取りが軽い。服装だって高校の時の制服だ。私――あの頃に戻っているんだ。

「よくぞ戻られた――此度のこと、誠に感謝申し上げる」
「……新門番さん」

 深々とお辞儀をしたのは、新たなる番人さん。私が慌てて手を振っていいですって、それでようやく顔を上げてくれた。

「……」

 そう、そうだった。私たちが接してきた番人さんの方。彼も転生したとは聞いていた。でも結局誰に生まれ変わったかまでは――。

「……?」 
 
 なんだろ、この感覚? 私、会ってないよね……多分? うーん……? 

「ううん」

 番人さんのことも気になるけれど、どうしても聞いておきたいこと、質問させてもらおう。

「あの、聞いてもいいですか? あの後、アリアンヌ様たちは――」

 ――どうなったのか。今だから聞いておきたかった。

「ああ、こちらから話すべきだった。アリアンヌ・ボヌール並びに彼らは――天寿を全うした」
「そうですか……」

 聞けて良かった。私は胸を撫でおろした。未来に伝承とか残されてれば良かったけど、そうではなかったから。

 私たち皆、生きられたんだ。こんな嬉しいことってない。

 もちろん色々と知りたいし、聞きたいこともあるけど。

「……」
「……」

 新番人さん、話す気もなさそう。それに。

「着いて早々に恐縮ではある。あなたはまもなく転生を迎えようとしている」
「!」 
 
 早速だった。もう少し心の準備がしたかったのもあるけど、でもワクワクもしている。
 それにね、期待もするんだ。転生して――。

『また巡り合えるって信じてるから』

 セレステの声? なんだろ……耳にした覚えもなかった。なのに、こんなにも胸が切なくなっていて……。
 でも、そうだね。転生して巡り合えたら素敵だね。

「せめてものだが、大樹の御許にて休まれるといい」
「はい。あの、色々とお世話になりました――」
「それが私の役目だ。これより諸々の手続きを行わせていただく。一度失礼する」
「あ」

 スタスタと新番人さんは行ってしまった。取り付く島もないというか、役目に忠実もいうか。

「……ふう」

 一人になって、改めて緊張が襲ってきた。どんなところになるんだろ? 私はどんな人に……待って。人間とは限らない。動物とか、植物とか……魔物とか? 

「まあ、元気に生きるけどね!」  

 私は開き直っていた。緊張に伴う汗を背中にかきながらも。気合でいこう、気合で。

「――クスクス」
「!?」

 他に誰かいたの!? いや、私は辺りを見回すけど、人の姿なんて――。

「……」

 私は仰ぎ見上げた。そこにいたのは――女性? 
 黄金に輝く髪に、純白の衣を纏った女性が降り立った。あまりにも神々しい存在。うん、彼女は人間ではない――女神だ。

「……」

 私は声を出せずにいた。畏怖せずにいられない、だって神様が目の前に――。

「ちょ、ユイちゃん!? なんでそんなに距離あんのー? 寂しいじゃーん?」 
 
 ……神様? フランクな神様っているんだね――。

「――神様違う、真麻さん!?」

 尋常ではない美しさだけれど、顔立ちは真麻さんだ。いつもの外向き用フルメイク以上の美しさだけど!! 

 あ、あれ? なんで真麻さんが!? しかもその恰好、そんな女神様みたいな……女神様。

 ――女神マーサ。ダンジョンの女神様……神様!! 

「――神様だった、マーサ様!」
  
 私の直感が告げている!! 確かに従姉の真麻さんっぽいけど、彼女は女神マーサでもあると!! 

「大正解ー!」  
「……そう」

 えっと、神様相手に緊張するところなんだけど、でも真麻さんの部分が強いから。それもあって、私は妙に落ち着いてしまった。

「……って、真麻さんもだよね」

 彼女も生を終えたからこそ、ここにいる。日本での事件以来、あれからどうなったか、確認できずじまいだったから。

「私のことはいいんだよ……ユイちゃん、色々大変だったね」
「!」 
 
 彼女は思いっきり抱きしめてきた。私も抱きしめ返す、久々の抱擁だ。

「ごめん、ごめんね……ユイちゃん」

 真麻さんの声が震えていた。ちらりと見ると、彼女は泣いていた。

「……きっかけはあのゲーム。ユイちゃんが、じゃないんだ。あのゲームが引き金となって、良くない思いを引き寄せてしまってたから」

 ごめん、ごめんって何度も。真麻さんはずっと、後悔していたんだ。

 真麻さん、女神としての記憶は無かったようだけど、おそらく前世だったようだから。力は残っていたのかな。

「あんなゲーム、作らなければ良かった……!」  
「それは……それは違うよ、真麻さん」
「……ユイちゃん?」  

 嘆く彼女に私は声を掛けずにはいられなかった。

「私には何が始まりできっかけだったか、わからないよ。ただ、あのゲームの存在はあって良かった」
「でも……」
「ゲームに罪はないよ。だって、私の為に作ってくれたゲームなんでしょ?」 
 
 って、某大学生から聞いているよ? 

「奴め……ばらしおって」

 真麻さん、口がぎりってなっていた。怒りの表情だね、これは。 

「ま、まあ……認めますけど? 結衣ちゃんに笑顔になってほしかったんです!」 
 
 やけくそ気味に言ってきた真麻さん、うん、嬉しかったよ。嬉しかったし。

「楽しかったよ、真麻さん」

 私――やっと伝えられた。大変でもあったけど、本当に楽しかったんだ。

「……ん、なら良かった」

 それならいいかって、真麻さんは小さく笑った。

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