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続いていく日々ED③
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しとしとと雨の降る音。快適な室温、ふかふかの上質な寝具。
「ん……」
見慣れた天蓋付きのベッド。ここはそう――アリアンヌ・ボヌールの私室。
まずはカレンダーを確認。今は六月に入ったところ――運命の日を越えましたのね。
「戻ってきましたのね、私は……」
遥か未来ではなく、今まで生きてきた時代に――。
「……そっか」
もうセレステとは容易には会えない。
「……」
今はただ、この時代を懸命に生きよう。いつかはセレステに届く為に……うん。
「気持ち、上げていこう!! あーああー」
起き上がっての発声、なんて美声なのでしょう。今になって実感ですわ、私の姿はまさにアリアンヌ・ボヌール!! ああー、力が漲って参りまして、よっ!!
さあ、窓際に立って、目覚めの体操を――。
「――目覚めの感動、よくも吹き飛ばしてくれましたね」
心底呆れきった声の――ヒューゴ殿? 窓際の席に着いて、お茶を嗜みながらですの?
……いえ、ユウ君みがありますわ。おそらくユウ君の方でしょう。ええ、そうですわ。ユウ君でなければ、乙女の寝室を断りなく訪れたりはしませんでしょう。ましてや、茶をしばいて寛ぐなど……。
「……あのね、ユウ君? こっちの世界だとね、私は令嬢、あなたは令息なの。家族みたくってわけには――」
しばしご容赦を。結衣として語りかけてみました。今、ユウ君と私だけのようですし。
「って、ユウ君?」
「……」
ティーカップを置いて、立った私を見上げたまま。
「……嘘、感動しています。だって、姉さんがこうして――ここにいる」
「ユウ君……」
私の腰に抱きついてきた。ヒューゴ殿の姿だけれど、私にとってはユウ君。背中の上あたりを撫でてみた。安心するって、言ってくれたよね。
「姉さん……おかえりなさい……」
瞳を閉じて、私に委ねて。そうだね、私からも。
「ただいま――」
「――ちょっと、ヒューゴ様!? まさか、アリアンヌ様の部屋に乱入――」
乱暴な連続ノックのあとの突入、この愛らしき声、姿は――ブリジット!!
「……してるし!! もう、なんでヒューゴ様がぁ」
殿下じゃなるまいし、と。ええ、ありましたわね……。
「しかもなんで、なんで、抱きついてるの!?」
大興奮の彼女、ずかずかと部屋に入ってきます。
「……こちらが聞きたいです」
ここで、青褪める彼。ああ、このタイミングでヒューゴ殿に戻られましたのね……振り回されていて? わざとではないと思いたいところですわ。
それにしても、ヒューゴ殿……? あなた、未だに抱きつかれたままで。紳士たるあなたが……?
「……離れがたい、です」
と。
「ヒューゴ殿……!?」
あまりにも衝撃的。私は驚かずにはいられなくて。
「失礼、自制します。突然の訪問、大変失礼致しました」
ヒューゴ殿は離れていきました。それからかなりの距離をとって。あなた、ついには入口のところまで。隣のブリジットはもう、と肩を竦めてますわね。殿下じゃないんだから、とも。
「……とにかく。目覚めてくれて良かった。私は信じていたけどね?」
と、勝気に笑うブリジット様。自分はこうなるとわかっていたと、そう言いたげで。
「……」
「……」
私も、いえ、私だけではなく。ヒューゴ殿もですわね。ブリジット様のことをじっと見ているのは。
「……な、なに」
目を腫らしていたので、つい。ずっと、泣いていたのだと……ブリジット。
「ただいま戻りましたわ」
どれだけ心配をかけたことでしょう。私も泣きそうにはなるけれど、今は。
「……うん! おかえり、ユイちゃん!」
「ただいま、ブリジット」
ブリジット様が飛びつくように抱きついてきたのです。私もしかと受け止めましてよ。
「――ええ、おかえりなさいませ。お待ちしておりました」
「ありがとう、ヒューゴ殿……」
穏やかに微笑んでくださったヒューゴ殿。ああ、そうですのね……私は戻ってきたのですね。
「ん……」
見慣れた天蓋付きのベッド。ここはそう――アリアンヌ・ボヌールの私室。
まずはカレンダーを確認。今は六月に入ったところ――運命の日を越えましたのね。
「戻ってきましたのね、私は……」
遥か未来ではなく、今まで生きてきた時代に――。
「……そっか」
もうセレステとは容易には会えない。
「……」
今はただ、この時代を懸命に生きよう。いつかはセレステに届く為に……うん。
「気持ち、上げていこう!! あーああー」
起き上がっての発声、なんて美声なのでしょう。今になって実感ですわ、私の姿はまさにアリアンヌ・ボヌール!! ああー、力が漲って参りまして、よっ!!
さあ、窓際に立って、目覚めの体操を――。
「――目覚めの感動、よくも吹き飛ばしてくれましたね」
心底呆れきった声の――ヒューゴ殿? 窓際の席に着いて、お茶を嗜みながらですの?
……いえ、ユウ君みがありますわ。おそらくユウ君の方でしょう。ええ、そうですわ。ユウ君でなければ、乙女の寝室を断りなく訪れたりはしませんでしょう。ましてや、茶をしばいて寛ぐなど……。
「……あのね、ユウ君? こっちの世界だとね、私は令嬢、あなたは令息なの。家族みたくってわけには――」
しばしご容赦を。結衣として語りかけてみました。今、ユウ君と私だけのようですし。
「って、ユウ君?」
「……」
ティーカップを置いて、立った私を見上げたまま。
「……嘘、感動しています。だって、姉さんがこうして――ここにいる」
「ユウ君……」
私の腰に抱きついてきた。ヒューゴ殿の姿だけれど、私にとってはユウ君。背中の上あたりを撫でてみた。安心するって、言ってくれたよね。
「姉さん……おかえりなさい……」
瞳を閉じて、私に委ねて。そうだね、私からも。
「ただいま――」
「――ちょっと、ヒューゴ様!? まさか、アリアンヌ様の部屋に乱入――」
乱暴な連続ノックのあとの突入、この愛らしき声、姿は――ブリジット!!
「……してるし!! もう、なんでヒューゴ様がぁ」
殿下じゃなるまいし、と。ええ、ありましたわね……。
「しかもなんで、なんで、抱きついてるの!?」
大興奮の彼女、ずかずかと部屋に入ってきます。
「……こちらが聞きたいです」
ここで、青褪める彼。ああ、このタイミングでヒューゴ殿に戻られましたのね……振り回されていて? わざとではないと思いたいところですわ。
それにしても、ヒューゴ殿……? あなた、未だに抱きつかれたままで。紳士たるあなたが……?
「……離れがたい、です」
と。
「ヒューゴ殿……!?」
あまりにも衝撃的。私は驚かずにはいられなくて。
「失礼、自制します。突然の訪問、大変失礼致しました」
ヒューゴ殿は離れていきました。それからかなりの距離をとって。あなた、ついには入口のところまで。隣のブリジットはもう、と肩を竦めてますわね。殿下じゃないんだから、とも。
「……とにかく。目覚めてくれて良かった。私は信じていたけどね?」
と、勝気に笑うブリジット様。自分はこうなるとわかっていたと、そう言いたげで。
「……」
「……」
私も、いえ、私だけではなく。ヒューゴ殿もですわね。ブリジット様のことをじっと見ているのは。
「……な、なに」
目を腫らしていたので、つい。ずっと、泣いていたのだと……ブリジット。
「ただいま戻りましたわ」
どれだけ心配をかけたことでしょう。私も泣きそうにはなるけれど、今は。
「……うん! おかえり、ユイちゃん!」
「ただいま、ブリジット」
ブリジット様が飛びつくように抱きついてきたのです。私もしかと受け止めましてよ。
「――ええ、おかえりなさいませ。お待ちしておりました」
「ありがとう、ヒューゴ殿……」
穏やかに微笑んでくださったヒューゴ殿。ああ、そうですのね……私は戻ってきたのですね。
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