皆様、お待ちかねの断罪の時間です!!~不遇の悪役顔令嬢の思うがままに~

古駒フミ

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第一章

個性あふれる新月寮

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 とても、いい湯でした。
「――どう? 落ち着いた?」
「はい、おかげさまでございます」

 寮の食堂で夕御飯いただいていると、クロエ先輩が顔を出しにきてくださった。彼女はまだ制服姿のようだった。なんでも『まだすることがあるから』、と。お忙しい方なのね……早い内にお手伝いできれば。

 そう、これからお世話になる方ですから。それはこちらの寮に住まわれる方々も同様。

「本日は遅いですが、明日にでもご挨拶出来たらと考えております。皆様、朝食時にはお集まりになるでしょうから」
「……うーん。皆、朝もフリーダムだからな。っと、起きる時間もバラバラ。待ってたら、アマリアさん遅刻しちゃうかも」
「さようでございますか……」

 農作業で鍛えた足腰ならなんのその、と返そうとした。でも思いとどまる。奇特な令嬢と思われてもだったので、私は自重することにした。

「あ、そうだ。それならね、点呼手伝ってくれない? ほら、ご挨拶もかねて。どう?」
「はい、ぜひ!」

 なんて素晴らしいご提案。私は乗ることにした。



 薄暗い廊下を二人は歩く。床がきしむ音に懐かしくなった。

 クロエ先輩の点呼について回りながらも、寮の住人達に挨拶していく。ところどころ空室があるので、住んでいる生徒は多くないようだった。

「――なかなか濃かったでしょ? うちの面々」

 ……濃い。ええ、それは、ええ……。

『キミが例のご令嬢か! アマリア……アマっちね! この学園、イケメン多いからさ? 恋バナ、恋愛相談! いつでもウエルカムだかんねー?』

 とてもフレンドリーな女生徒の方。大きな丸眼鏡に、朗らかで素敵な笑顔ね。彼女は寝巻姿だったけれど……個性的なものだった。寮では好きな服装でいて良いのね、素晴らしきこと。

 ……恋バナ、恋愛相談。私は前のめりになりかけた。早速『彼』のことを聞こうと思った。

 と、考えている内にクロエ先輩は次の生徒の部屋へ。そうね、もっと別のタイミングの時にでもと思い直した。

『――お嬢! 今夜もお疲れ様! 俺、待ってたんだよ? ちゃんとお座りしてさ?』

 クロエ先輩を『お嬢』と呼んでいた方、とか。その、大型犬のような方と思ったわ。忠義のある関係なのね、きっと。彼もまた、ど派手な寝巻だった。

「……えっと。ご自分の主張があるのは素晴らしいと思いました。ええ、素敵な人達だと思います……羨ましいくらいです、ご自分があるというのは」
「うん、そうだね。濃いけどいい子達だよ……訳アリな子が集まってる分、団結力もあると思うし」
「はい」

 風変りな人は確かに多かった。同じ訳有り同士。どこか痛み分けなところもあるかもしれないわね。




 クロエ先輩の案内により着いたのは私の部屋。表札はまだない。

「クロエ先輩。本当にありがとうございました」
「いいのいいの。私、寮長だから――ねえ、アマリアさん? これ、聞いてもいいかな?」

 率先して面倒をみてくれたのは、クロエ先輩。彼女には感謝しきれない、そう考えていたところだった。
 ドキッとしてしまった。クロエ先輩の真剣なる顔、何を聞かれてしまうというの?

「スージー……ああ、あの子スーザンっていうんだけどね? なんか聞きたいことがあったんじゃないかなって」
「あ……」 

 クロエ先輩は気にしておられたのね。それでいて、『私で良ければ聞くよ』とも。

 そう、そうね。ちゃんと聞いておきましょう。私のように覚えている人もいるはず。私は彼女に名前と学年、特徴も伝えてみた。成長後の姿はわからないけれど……。

「……」
「……クロエ先輩?」

 彼女は黙ってしまった。それから私の顔を見てくるというか――観察されているともいうか?

「……あ。えっと、ごめん……心当たりなくて」
「……さようでございますか。お答えいただき、ありがとうございます」

 あの沈黙、妙な質問をしてきたと思われてのこと? それも申し訳なさそうにしている彼女。そんな、かえってこちらが申し訳なくて……。

「……ねえ、アマリアさん。きっと好きな人、それでいて大切な人なんでしょ? 力になれなくてごめんね……」
「い、いえいえ?」 

 ああ、恐縮までされてしまってるわ……!

「大切な人……ええ、婚約者ですから」
「そうなんだ……秘密にしておいた方がいい?」
「はい、お願いいたします」
「了解」
 居もしない生徒を婚約者と言い張る。ええ、妙な話極まりないから。ご配慮感謝いたします。

「それじゃ、せめてもの忠告。色々気になるだろうけど――大人しくしていた方が賢明だよ」
「はい、かしこまりました」

 私は先輩の忠告を受け入れることにした。

「そこのところ、よろしくね? それじゃおやすみ」
「はい、クロエ先輩。おやすみなさいませ」
「……この子、とことんくだけないな」

 そう言いながら、クロエ先輩も自室へと向かっていた。廊下の闇へと消えていく彼女の姿をただ見ていた。

「……心当たりない、か」

 渡された鍵で解錠する。こちらが私の部屋、しばらく暮らすことになる。

 吹雪はいつの間にかやんでいた。窓にさす月明りの中、私は自室を見渡す。

 今、立っているのは居間にあたる場所だ。一人用の机と椅子がそっけなく置かれていた。
 個室は二つある。一つは寝室、もう一つは物置か勉強部屋か。簡易的な調理場、そしてシャワー室に隣接してトイレもあった。

「……あれ」

 急激な眠りが私を襲う。疲労がピークに達しているようだ。

「寝ましょう……」

 ここは素直に睡眠をとることにした。先に開いた手前側の個室は寝室で正解だった。明日に備えて体を休める為に、私はベッドで横になる。寝巻だったのが幸いね……。

「明日から頑張る……」

 今はただ、深く眠りに落ちていく――。
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