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聖女を支配するのは
しおりを挟む胸元に花の痣を持って生まれた者が王太子の花嫁となるこの国で、痣を持って生まれたティナは生まれた瞬間から、王太子であるエイベルの婚約者となった。癒しの力を持つティナは聖女と呼ばれた。性に奔放なエイベルは誘惑に負け、ティナではない少女にあっさりと手を出す。そしてティナとの婚約を破棄しその少女を正妻に迎えようとする。
見せつけエロを書きたかっただけなので、それ以外の部分はあまり深く考えてなくて展開が早いです。
残酷な描写あり
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ティナは生まれたときからこの国の王太子の婚約者だ。それは彼女が胸元に花の形の痣を持って生まれたからだ。
痣を持って生まれた女性がこの国の王子に嫁ぐ。それが習わしとなっていた。痣を持って生まれた者の多くは強い癒しの力を持ち、聖女と呼ばれた。
ティナもまた、王太子の婚約者であり聖女として育てられた。
公爵家に生まれたティナは、王太子であるエイベル殿下に相応しい淑女となるよう求められ、幼い頃から教育を施されてきた。
美しく成長したティナは、どこか儚げで危うい雰囲気を纏っている。その美しさは男性を魅了した。彼女を見て守りたいと庇護欲を抱く者もいれば、汚したいと嗜虐心を抱く者もいる。 残念ながら、エイベルは後者のタイプだった。
婚前交渉及び結婚前の接吻やちょっとした触れ合いすら禁忌とされるこの国で、エイベルはとても性に奔放な男だった。隙あらばティナに触れ、口付けようとする。
やんわりと拒めば渋々引いていたのだが、ティナが十六歳を過ぎた頃から、拒んでも強引に迫ってくるようになった。
王宮の一室で、二人でお茶を飲んでいたときだ。もちろんティナはエイベルとの接触を避けるため、彼の正面の位置にあるソファに座る。すると彼は自分の隣に来るよう命じてくる。
「こちらに来い、ティナ。私の隣に」
「いけません、殿下」
「私の命令が聞けないのか?」
「お許しください」
深く頭を下げるとエイベルは舌打ちし、自分からティナの隣へ移動した。
腰に腕を回してこようとするエイベルから逃げるように、ティナは体をずらした。
エイベルは機嫌を損ね、ぎろりとティナを睨み付ける。
ティナは瞳を伏せた。
「お許しください、殿下。私達はまだ結婚しておりません。触れ合いは禁じられています」
「別にいいだろう、二年後には夫婦になる。口外しなければ知られることもないのだ。少し触れるくらい、なんの問題もないだろう」
二年後、ティナが十八歳になったとき、二人は夫婦となる。婚前交渉は固く禁じられているが、夫婦となったあとならば寧ろ触れ合いを推奨されていた。あと二年待てば好きなだけ触れられるのだが、エイベルは待てないらしい。
項垂れるティナに、エイベルの手が伸ばされる。しかしその手は触れる寸前でパチリとなにかに阻まれ、彼女に触れることができなかった。触れようとすると、痺れのようなものが走るのだ。
「な、なんだ……!? どうなってる!?」
「守りの指輪の効果です」
ティナは指に嵌めた指輪に触れながら言った。
「異性が私に触れられないよう、魔力が込められたものです」
「異性? 私は王太子で、貴様の夫となる男だぞ!?」
「申し訳ありません……。指輪の効果は男性全てを対象としてしまいます」
憤慨するエイベルに、ティナはしおらしい態度で謝罪する。
「今は私と二人きりなのだ、そんなもの外せ!」
「いいえ、陛下から決して外さないよう厳命されております。エイベル殿下の婚約者である私が、万が一にも不届き者に純潔を奪われるようなことがあってはならないと。外すことを許されるのは結婚後になります」
「父上が……? くそっ、余計なことを……っ」
エイベルはギリギリと歯を食い縛る。すっかり不機嫌になった彼は、ティナを置いてさっさと部屋から出て行った。元々お茶を飲むというのもただの口実で、あわよくばティナに不埒な行為をしようとしていただけだったのだ。
怒りも露に部屋を出ていくエイベルを、ティナは黙って見送った。
性欲旺盛なエイベルにとって、ティナのように美しい少女が傍にいるのに手を出せないというのはかなりのストレスだった。結婚さえしてしまえば自分の好きにできる。美しい顔を苦痛に歪め、快楽を覚えさせ、自分の体に溺れさせる。夫婦にさえなってしまえば、どんなことさえ強要できるのだ。
あと二年。けれどその二年がエイベルには耐えられないほど長い時間だった。
そんな彼に近づく者がいた。異世界から召喚されたマリアという名の少女だ。
三年前、この国では魔王の討伐が行われた。その際、勇者の補佐としてこの世界に召喚されたのがマリアだ。異世界人は強い魔力を持っている。
勇者も桁違いの魔力を要していた。だが魔王と戦える力を持つ者が勇者以外にいなかった。強いとはいえ勇者がたった一人で魔王に挑むのは無謀すぎる。だからマリアを召喚した。
理不尽にこの世界に来させられたというのに元いた世界で退屈していたというマリアは、面白そうだからという理由で魔王討伐を引き受けた。
そして勇者と数人の戦士と共に見事討伐を成し遂げた。
勇者とマリアはこの国の英雄となった。
その後、彼女は自分の意思でこの世界にとどまっている。賓客として、丁重に扱われていた。
ティナとはまた違う美貌を持つマリアは、性格もティナとは正反対だった。おとなしく控えめなティナと違い、明るく奔放な性格をしている。
欲求不満で不機嫌なエイベルに、マリアは近づいた。
彼の話を聞き、慰め、ティナの態度はよくないと文句を言い、エイベルが可哀想だと同情する。それを何度か繰り返した。
エイベルはすっかりマリアに心酔していた。
それを見計らい、マリアは彼に言う。
「あたしだったら、エイベルを拒んだりしないよ。だって好きな人に触れてもらえたら嬉しいもん」
エイベルにしなだれかかり、マリアは艶然と微笑んだ。
あっさりと、エイベルは陥落した。躊躇もしなかった。ティナへの罪悪感を抱くこともなく、ただ欲を満たすために目の前の少女へと手を伸ばした。
それから、エイベルはマリアの虜となった。正確には彼女の美貌と体に。
だから、城で開かれたエイベルの誕生祝いの舞踏会で、彼は婚約者のティナではなくマリアと一緒に過ごした。王と王妃は眉を顰めたが、基本的に息子には甘いので目を瞑った。
マリアはエイベルから贈られたドレスを着ている。
パーティーなどの催しがあったとき、ティナも毎回彼からドレスを贈られていた。その全てが露出を重視したデザインだった。下品なくらい胸元や背中があいたドレスを、返すこともできずティナは身に付けるしかなかった。
しかし今回はドレスを贈られなかったので、ティナはシンプルなデザインのドレスを自分で選んだ。
エイベルがマリアと共にいるので、ティナは目立たないよう壁際に立って過ごしている。婚約者なので一応参加しているが、この様子なら途中で抜けても問題ないだろう。顔は見せたしお祝いの言葉も伝えたので、仕事は果たしたはずだ。もう少ししたら退席しようと考えていた。
若干顔を伏せ、誰とも目を合わせないようにしながらも、ティナの視線は誰かを捜すように動いている。
そのとき、僅かに会場がざわめいた。
勇者のギルバートが現れたのだ。彼は正装も堅苦しいのも苦手だからと、こういった催しには殆ど参加しない。でも稀に、気まぐれでこうして現れることがある。
精悍な顔つきに鋭い眼光。近寄りがたいけれど、彼に懸想する女性は多い。参加者の令嬢達が、熱い視線を送って声をかけるタイミングを計っている。
ギルバートはまっすぐにエイベルの元へ向かった。祝いの言葉をかけているようだ。
ギルバートの視線が、ティナへと向けられる。
彼の黒く美しい瞳が、ティナを見た。
目が合ったのは一瞬だ。誰も気づいていない。
彼はもうティナを見ていない。
ティナは指輪に触れた。
そこにある感触を確認しながら、ティナは会場を後にした。
エイベルはすっかりマリアに夢中になり、彼女が与えてくれる快楽に溺れた。遊びのつもりだったマリアを、既に手放せなくなっていた。
だから、彼女にティナとの婚約を破棄して自分と結婚してほしいと言われ、それを承諾した。
迷いはあったが、それはティナを手放すのが惜しいという理由だった。出会った頃から、ずっと楽しみにしていたのだ。ティナのあの美しく無垢な顔を汚すことを。
エイベルは悩み、そしてあっさりと解決した。マリアを正妻として迎え、ティナを愛人にすればいいのだと考えた。
エイベルは早速婚約破棄を父に伝えようとしたが、マリアがそれを止めた。
ティナは国が認めた正式な婚約者だ。痣を持ち、聖女と呼ばれる存在なのだ。婚約を破棄したいと直接訴えても認められはしないだろう。だから、人が大勢集まる公の場で破棄を宣言するのだ。そうすれば、国王も無視できなくなる。
マリアにそう言われ、エイベルも納得した。
ティナが十七歳を過ぎたときに開かれた夜会で、それは行われた。
会場の中央に呼ばれたティナ。彼女の正面に、エイベルとマリアが立っていた。
少し離れた場所に王と王妃がいる。周囲には大勢の貴族達。
エイベルは彼らの前で堂々と宣言した。
「私は、ティナとの婚約を破棄する」
言われたティナは、まるで他人事のように無表情だった。
反対に、周りは騒然となる。王が、血相を変えて怒鳴り声を上げていた。
喧騒は、ティナの耳にはとても遠い。
けれど彼の声だけは、しっかりと届いた。
「やっと言ったか」
いつの間にか、ティナの背後に寄り添うように立っていたのは勇者のギルバートだ。
彼はティナのドレスの襟をずらし、胸元を見た。
そこにあったはずの痣がなくなっていた。
「忌々しい痣が、漸く消えたな」
ギルバートの指が、痣のあった箇所を撫でる。
ティナは抵抗しない。嫌がることもない。
彼女は蕩けるような笑みをギルバートに向けていた。
「ギルバート……」
「ちょっと待ってろ。勇者として、最後の仕事が残ってるからな」
ティナの頭を優しく撫で、ギルバートは彼女から離れた。
「眠れ」
彼が魔力を込めて言葉を発すると、会場内にいた殆どの人間がバタバタとその場に倒れた。彼らは全員眠りに落ちていた。
意識があるのはギルバートとティナと、エイベルとマリアだ。
エイベルはなにが起きたのかわからず、呆然としている。
「さてと」
ギルバートは剣を抜き、二人に近づいた。
エイベルはビクッと肩を竦める。
「な、なんだ、なにをする気だ、ギルバート……!」
叫ぶエイベルに、ギルバートはニヤリと笑う。
剣を構え、エイベルを狙って突き出されたそれは、しかしギリギリでエイベルを避けた。剣が貫いたのは、マリアの体だった。
エイベルもマリアも、目の前の光景に愕然となる。
「なにを……どういうつもりだ、ギルバート!!」
エイベルの怒号が会場に響く。
ギルバートは動じることなく、淡々と答えた。
「どういうつもりもなにも、勇者として当然のことをしただけだ」
「当然のこと!? マリアはこの国を救った英雄だぞ! その彼女を手にかけるなど、許されることではない!!」
「残念ながら、それは違う。こいつは英雄ではない。異世界から召喚された人間でもない」
「は……?」
「こいつこそが、魔王なんだよ」
ギルバートの言葉に、マリアはぎりっと歯を食い縛る。
「……気づいていたのか」
「ああ。最初からな」
「ならば、なぜ今の今まで野放しにしていたのだ。なぜもっと早く殺さなかった……?」
「お前の計画を知って、利用できると思ったからだ。だが、もう用は済んだ。だから、死ね」
ギルバートはマリアの体を切り裂いた。血塗れの死体を、魔法で燃やす。すぐにただの灰と化した。
ギルバートはなんの感情も籠らない目でそれを見ていた。
魔王は人間の国を内側から崩し、自分のものにしようと考えていた。人間に紛れ込み、魔王討伐のために異世界から人間を召喚するという話を耳にする。それを利用することにした。人間の少女に化け、召喚されたかのようにその姿を人前に現した。
そして勇者達と共に、魔王討伐へ向かった。魔王城には、あらかじめ偽物を用意していた。計画のために大量の魔族を殺し、魔王の偽物を倒す手伝いもした。そうしてマリアは人間の信頼を得た。
まんまと城に居座ることができたマリアは、元々目をつけていたエイベルに近づく。誘惑に弱いエイベルは、非常に動かしやすい人間だった。
ギルバートは、マリアがエイベルに目をつけていたことに気づいていた。エイベルを利用し、この国を手に入れようとしていることを知っていた。
だからこそ、見て見ぬ振りをした。マリアには是非、エイベルを誘惑してほしかったからだ。
思惑通り、まんまとエイベルはマリアの誘いに乗った。そのことにほくそ笑んだのは、マリアだけではなかった。
マリアのお陰で、エイベルの興味がティナから逸れた。
そして遂に、婚約を破棄するまでに至ったのだ。
そのことについては、ギルバートは魔王に感謝していた。
様々な思惑が交錯していたことに全く気づいていなかったエイベルは、放心したようにマリアの残骸を見つめる。
「マリアが、魔王……? そんな、まさか……」
呆然と呟くエイベルを一瞥し、ギルバートは剣を投げ捨てた。そして後ろを振り返り、腕を広げる。
「待たせたな、ティナ。おいで」
「ギルバートっ」
ティナは迷わず彼の胸に飛び込んだ。そのままぎゅうっとしがみつく。
ギルバートはティナを抱き締めたまま、再びエイベルへと向き直る。
「助かったよ、エイベル。お前が婚約を破棄してくれたから、ティナの痣が消えた。この痣だけは、俺の魔力でも消せなかったからな」
「……は?」
「ま、うまくいかなきゃ、お前を脅して無理やり破棄させてたけどな。攫うにしても、この痣だけは消しておきたかったし」
「なにを、言ってるんだ……」
エイベルには理解できない。
理解していないのはわかっていたが、ギルバートはわざわざ説明しようとも思わなかった。
彼はもう、エイベルを見てもいなかった。
「ティナ、遅くなって悪かったな。辛かっただろ」
「ううん、大丈夫。ギルバートのこと、信じてたから」
ティナは頬を染め、うっとりと彼を見上げる。
エイベルは一度だって、彼女のそんな表情を見たことがなかった。エイベルの知っているティナは、まるで人形のようにただ薄く笑みを浮かべ、殆ど感情を見せることがなかった。
その彼女が、自分の婚約者だったはずの彼女が、知らない女の顔をして、自分以外の男を見つめている。
衝撃を受けているエイベルには目もくれず、二人は口づけを交わした。
柔らかく、感触を楽しむように何度も唇を重ね、そこから徐々に口づけは深くなる。舌を絡め合い、唾液を交換し、互いの口を味わった。
ぴちゃぴちゃと、濡れた音がエイベルの耳にまで届いた。
目の前が真っ赤になり、エイベルは怒りのままに声を上げる。
「やめろ、やめろぉ!! その女は私のものだ! 私のものに触れるなぁ!」
「うるせぇな」
ギルバートはぞんざいにエイベルへと掌を向ける。
「ティナの声が聞こえねぇだろ」
ギルバートの放った魔法が、エイベルの声と動きを封じる。
エイベルは声も出せず、指一本動かせなくなるが、意識ははっきりしている。エイベルの目には、二人の姿がしっかりと見えていて、声も聞こえている。許されているのはそれだけで、一切干渉はできなくなった。
「ティナがお前のものだったことなんて一秒だってねぇんだよ。なぁ、ティナ」
「うん、私はずっと、ギルバートだけのものだから」
即答するティナに、ギルバートは微笑む。
二人は再び唇を重ねた。キスに夢中になるティナの体を、ギルバートの手が這う。
「んぁっ……んん……っ」
ドレスの上から胸を揉まれ、大きな掌に包まれる心地よさにティナの瞳はとろんとなる。
指が、コリコリと突起を摘まんだ。布越しの愛撫はもどかしく、ティナは思わず胸を突き出した。
気づいたギルバートが、喉の奥で笑う。
「物足りねぇか? あとでたくさん可愛がってやるからな」
ギルバートの低く艶を帯びた声が、耳に吹き込まれる。
ぞくぞくっとティナは背筋を震わせた。
その反応を見て、ギルバートは耳に舌を這わせる。
「ひゃあんっ」
ティナの口から一際甘い声が漏れ、それを引き出そうとギルバートは更にそこを攻めた。ぴちゅりと音を立てながら、耳をねぶる。
「あっ、あんっ」
ちゅくちゅくと耳朶を吸われ、全体を舐め回され、かりかりと優しく歯を立てられ、ティナは快感に喘いだ。
その間も胸への愛撫はつづけられ、布越しでもわかるほどに尖った乳首をぐりぐりと押し潰される。
秘所から蜜が溢れるのを感じ、ティナは太股を擦り合わせた。
「ん? 下も弄ってほしいか?」
ギルバートはドレスを捲り、ティナの太股の間に脚を捩じ込んだ。下着の上から、蜜を零す秘所を陰核ごと擦り上げる。
「ひあぁっ、あんっ、あっ、あっ」
「ははっ、気持ちいいのか? 腰が動いてるぞ」
「あぁんっ、いい、気持ちいいの、ギルバート、あっ」
はしたなく腰を振り、秘所を男の脚に擦り付けるその姿に、聖女と呼ばれていた頃の面影はない。
男を知らず、清楚で、エイベルが触れることを決して許さなかった彼女が、いやらしい声を上げ、乱れている。
愕然としながらも、エイベルの視線はティナに釘付けだった。
エイベルの存在など既に意識の外にあるティナは、ただ愛しい男から与えられる快楽に耽溺した。
「んんっ、ギルバート、ぎる、好き、好きぃっ」
「エロくて可愛いティナが、俺も好きだ。指で弄ってやるから、裾持ってて」
ティナは恥じらいつつもドレスの裾を持ち上げた。
彼女の腰を支えながら、ギルバートはもう片方の手を下肢へ伸ばす。
漏らした蜜で下着はぐっしょりと濡れていた。下着の上から秘所を撫でると、くちゃりと恥ずかしい音が鳴った。
「すげーびしょびしょ。ほら、下着越しなのに俺の指濡れちゃってるじゃん」
「あっ、あんっ、ギルバートが好きだから、ギルバートに触られると、いっぱい、溢れちゃうのっ」
「じゃあもっと弄ってやらないとな」
ギルバートは下着をずらし、直接陰部に触れた。にちゅにちゅと花弁を撫で回し、蜜を纏った指で陰核を転がす。
「ひゃんっ」
痺れるような快感が走り抜け、新たな蜜がとぷりと溢れる。
ぷっくりと膨らむまで肉粒を嬲られ、ティナは嬌声を上げつづけた。
足はがくがくと震え、力が入らないティナの体を、ギルバートがしっかりと支えてくれた。
愛液を滴らせる蜜口に、ゆっくりと指が差し込まれる。きつく閉じられた膣内が、丁寧に優しく解されていく。
動き回る指に翻弄され、ティナは必死にギルバートにしがみついた。
汗の滲んだティナの額に、ギルバートの唇が触れる。
「あっ、ぎる、ぎるばーとっ」
「ティナの中が俺の指をぎゅーぎゅー締め付けてるな。指じゃ物足りなくなってきたか?」
「うん、うん、ギルバートが、ほしいの……っ」
すりすりと胸元に頬擦りしながらねだれば、ちゅぽんと指が引き抜かれる。
ギルバートの腕がティナの片足を持ち上げた。
くぱりと口を開ける花弁に、熱い塊が押し付けられる。柔らかく解れた媚肉を掻き分けるように、ずぷずぷと陰茎が押し込まれる。
「ひ、はっ、あっ、あっ、あぁっ」
「ティナ、そのまま力抜いてろよ」
「ああぁ────!」
一気に根本まで突き入れられ、ティナは悲鳴を上げる。
破瓜の痛みは癒しの力ですぐに和らいだ。残ったのは膣内を押し拡げる圧迫感と、好きな人と結ばれた幸福感だ。
「ギルバート、好き、大好き……っ」
「愛してる、ティナ」
優しく口付けられ、ティナの体は蕩けていく。
男の熱を受け止めた胎内が甘く疼いて、きゅんと中が締まった。すると膣壁が擦られ、ティナは快感に震える。
キスをしたまま、ギルバートはゆっくりと抽挿をはじめた。
愛し合う二人を、憎悪と嫉妬と興奮が入り交じった目でエイベルが見ていた。
自分のものになるはずだった女が。自分が純潔を散らし、快楽を教え込み、苦痛と快感に悶えさせ、凌辱し、支配するはずだった女が。
あっさりと目の前で奪われた。
激しい怒りを募らせながらも、ティナの淫らな姿にエイベルの下半身は熱く滾る。蓄積する情欲が、指一本動かせないエイベルを苦しめた。
エイベルの苦しみなど気づきもせず、気づいたところで気にも留めないだろうティナとギルバートは、ただ夢中で互いを求め合った。
ギルバートの動きはどんどん激しくなり、膣内を貫かれる快感にティナは身悶える。
「あっ、あんっ、ぎるばーと、あっ、あぁっ」
「ティナ、ティナ……っは、イく……っ」
「ひあっ、あ──ッ」
どぷどぷと熱い体液を注がれ、ティナも絶頂に身をくねらせた。
全てを吐き出し、ギルバートは慎重に陰茎を引き抜く。
がくりとくずおれそうになるティナの体をしっかりと両腕で支え、そのまま抱き上げた。意識を失ってしまったティナの顔を見て、愛しげに目を細める。
それから、おもむろにエイベルへと視線を向けた。彼にかけた魔法を解除する。
「あ……っ」
体と声が自由になったことに気付き、エイベルはギルバートを睨み付けながら口を開く。
「きさ、貴様っ、こんなことをして、許されると思っているのか……!?」
「はっ、誰の許しが必要なんだ?」
エイベルに向けられるギルバートの視線は、どこまでも冷たく凍てついている。
「俺は魔王を倒し、愛する女を抱いただけだ」
「ふざけるな! その女は私の……私のものだ!」
「言っただろ、ティナがお前のものだったことなんてないって」
「違う! 返せ! 私のものを返せ!」
喚き散らしながら、エイベルはその場から一歩も動かない。ギルバートに威圧され、一歩も動けない。
そんなエイベルに、ギルバートは言った。
「エイベル、お前が本当に、本気でティナを自分のものにしたいと願うなら、死ぬ覚悟で向かってこい。相手になってやるよ。ま、確実に息の根を止めるけどな」
「っ……」
殺気を向けられ、エイベルはその場に膝をついた。
「死ぬ覚悟もないなら、もうティナの前に姿を現すな。声を聞かせるな。二度と近づくな。ティナをその汚い目に映すな」
恐怖に体が竦み、エイベルはもう声を出すこともできず、ただその場で震えていた。
エイベルの瞳にはギルバートに対する怒りも、ティナへの執着も消えていた。結局その程度なのだ。
ギルバートは冷めた双眸でエイベルを見下す。
「ん……ぎるばーと……?」
ギルバートの腕の中でティナが目を覚ました。
途端にギルバートの纏う空気が甘くなる。
「用は済んだし、帰ろうな、ティナ」
「うん」
花が綻ぶように微笑んで、ティナはギルバートの首に腕を回した。
彼女は一度もエイベルに目を向けなかった。彼女にとってエイベルは最初から、道端に転がる石と変わらぬ存在だった。道端の石など眼中にないのだ。
ギルバートはティナを連れ、一瞬でそこから移動した。
ついた場所はティナと暮らすために用意した屋敷の一室だ。屋敷は誰も近づけないような深い森の中にある。
ギルバートはベッドの上にティナをそっと下ろした。
「さあ、たっぷり可愛がってやろうな」
「ギルバート……」
これからの触れ合いを想像し、ティナの頬は赤く染まる。
熟した果実のように甘い匂いを放つティナに、ギルバートは舌舐めずりした。邪魔な衣服を剥ぎ取り、自身も裸になる。
柔らかなティナの体に覆い被さると、貪るように口付けた。滑らかな唇を舐め、優しく食んで、ぬるりと舌を差し込む。
「んんっ、ふ……あ……」
上顎をつうっと舌でなぞられ、ティナはぴくりと背中を震わせた。動き回る彼の舌を追いかけ、舐めて、ちゅくちゅくと吸う。ティナも彼の口を味わいたくて必死に舌を伸ばせば、捕らえられ、じゅるりと強く吸い上げられた。
しっとりと汗ばむ乳房を、大きな掌に揉み込まれる。柔らかい肌に指が食い込み、いやらしく形が歪む。つんと尖った乳首が掌に擦れ、快感に涙が滲んだ。
「んはっ、はあっ、ギルバート……っ」
離れていく唇が、嗜虐的な笑みを浮かべる。濡れた唇を舐めるギルバートの瞳は肉食獣のように獰猛で、ぞくぞくと背筋が震えた。彼に食べられたいと、心も体も訴えていた。
ぱくりと、ギルバートに乳房を食まれる。はむはむと味わうように口が動き、もう片方は変わらず手で愛撫されつづけていた。
固く膨らんだ乳首を舐めしゃぶられ、吸い上げられる。指でくにくにと磨り潰され、摘まんで引っ張られる。両方の乳首を同時に刺激され、ティナは背中を反らせて快感に鳴いた。
「あんっ、あっ、あっ、ぎるばーとぉ」
「可愛い声だな。ティナの声で名前を呼ばれるとすげー嬉しい」
胸から離れたギルバートが、徐々に下へと移動する。白い腹にちゅっと吸い付き、臍を舐め、下腹に辿り着く。
「ティナの体はどこもかしこも綺麗で甘くて、美味い」
意地悪く笑って、ギルバートはティナの脚を広げた。
陰部が丸見えになり、ティナは赤面する。
「あ、恥ずかしい……」
羞恥に震えながら、ティナは抵抗しない。拒まない。ギルバートがすることは全て許し、自らを曝け出すことを厭わない。
顔を真っ赤にして恥じらうティナを楽しみつつ、ギルバートは秘所に顔を埋めた。先程の刺激で色が濃くなった陰核に、優しく唇を落とす。
「あんっ」
少し触れられただけでもびくびくと体が震えてしまうのに、ぬるぬるの舌で舐められたら、快感で頭がおかしくなりそうだった。
「ひあぁっ、あっ、ぎる、あっ、あぁんっ」
根本を舐め回され、ぷくりと膨らんだ肉粒を口に含まれる。口の中でも執拗に舐められ、吸われ、ティナは首を振り立てて快感に喘いだ。
「あっ、あっ、あっ……〰️〰️!」
ティナは涙を流し達する。
陰核を味わいながら、ギルバートはぐちゅりと蜜壺に指を差し込んだ。そこは彼の放った精とティナの愛液で潤っていた。指を出し入れさせれば、にちゅにちゅと淫猥な音が鳴る。
「あっ、だめ、ギルバート、だめなの……っ」
出し入れされる指と一緒に、彼の精液も掻き出されてしまう。せっかく注いでもらった体液を零したくないと伝えれば、ギルバートは僅かに目を見開き、それから嬉しそうに微笑んだ。
「心配しなくても、好きなだけ注いでやる。これから何度でも愛してやるから」
ギルバートはティナの脚を抱え、滾った肉棒を秘裂に押し当てた。
ティナの瞳はとろりと蕩け、彼を受け入れるために自然と体の力が抜けた。
自分の体は間違いなく彼の、ギルバートの為だけのものなのだと感じ、ティナはこの上ない幸せを感じた。
ぬぷぬぷっと陰茎が埋め込まれる。
「あぁっ、ぎるばーと、あっ、あっ」
ティナが両腕を伸ばせば、すぐに抱き締めてくれた。
最奥まで胎内を満たされ、ぴったりと体が重なり、彼の体温と息遣いを至近距離で感じることができる。
ティナは彼の腰に足を絡め、自分からキスをした。
「んんっ、あっ、ぎるぅ、ん、ふぅ、んんぅ」
「ん、は……ティナ……っ」
濃厚な口づけを交わしながら、膣内を掻き混ぜられる。
ティナは頭の中も心も体も全てをギルバートに満たされていた。
「ん、すき、すき、んん、ぎるぅ」
「っ……ティナ、愛してる」
聖女でもなく、王太子の婚約者でもない。愛する男に溺れるただの女となったティナを、ギルバートは飽きることなく何度も抱いた。
求め、求められ、誰に邪魔されることもなく、二人は愛し合った。
ティナが婚約者である王太子とはじめて出会ったのは十歳のときだった。
十四歳のエイベルは値踏みするようにティナを見て、それから満足げに笑った。
ぞくりと悪寒が走り、ティナは直感的に感じ取る。
彼の中の黒い感情。醜く歪んだ性質。
ティナが感じたものは勘違いではなく、エイベルは確かに相手を痛めつけ苦しめることに喜びを感じる男だった。
顔合わせの間、エイベルはずっと舐めるような視線をティナに向けていた。
それが嫌で嫌で仕方なくて、それでも逃げることもできず、早く終わってくれることを祈っていた。
屋敷に帰り、その夜、ティナは衝動的に部屋を飛び出していた。
なにもかもが嫌だった。自分の娘が王太子の婚約者になったことを喜ぶ父と母を見るのも、周囲から向けられる羨望の眼差しも、期待も、妬みも、なにもかも嫌になった。一人になりたかった。一人にならなければ、泣くこともできなかったから。
今思えば、誰にも見つからず屋敷を抜け出せたのは奇跡だ。
そう。ティナにとって確かに奇跡だったのだ。
無我夢中で走り、森に入り、人のいない奥へ奥へと足を進めた。やがて森が開け、大きな泉がそこにあった。
ティナは足を止めた。
「うわああぁっ」
漸く一人きりになり、ティナは大声で泣き喚いた。止めどなく涙が溢れ、それを我慢することなく泣きつづけた。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。あんな男と結婚なんてしたくない。あんな男の妻になりたくない。あの男はティナの幸せなど考えない。自分の欲を満たすことしか考えていない。そんな男にこれから死ぬまで寄り添わなくてはならないなんて嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
「やだ、やだ、しにたい、しにたい、しにたい……っ」
目の前の泉に、飛び込んで死ぬのは簡単だ。でも、そんなことはできないとティナはわかっている。してはいけないと理解している。
ただ、この感情を吐き出したかった。吐き出さなければ耐えられなかった。
誰にも聞かせられない自分の本心を、抱えきれなくなる前に口に出してしまいたかった。
誰にも聞かせるつもりはなかった。だから、後ろから声をかけられ、ティナは心臓が飛び出るほど驚いた。
「なんで死にたいんだ?」
「ひぃっ……!」
ばっと振り返ると、自分よりも年上の少年がそこに立っていた。
誰にも聞かれてはならない自分の心の内を知られてしまったことに動転する。
「あ、あ……」
「なあ、なんで死にたいの?」
少年の手が、ティナの手を握る。
ティナを見つめる少年の目は、今まで向けられたことのないものだった。
痣を持って生まれたせいで、生まれたときから王太子の婚約者として、聖女としてしか見られなかった。
でも目の前の少年は、ティナを王太子の婚約者として、聖女として見ていない。
そのことが、たったそれだけのことが、ティナは堪らなく嬉しかった。
彼はなにも知らない。ティナの置かれた立場もなにも。
だからティナは全て話した。聞いてもらえるだけでよかった。今まで誰も、ティナの気持ちなど聞こうともしてくれなかったから。
全てを話し終えると、少年は「そうか」と頷いた。
「だったら、俺がティナを助けてやる」
自信満々に言って、少年は魔力でなにかを作り出した。
呆然とするティナの顔が、温かな魔力の光に照らされる。
「今はまだ無理だけど、でもいつか、必ずティナを救い出す」
魔力で作り出されたものが、少年の掌の上に転がる。
それは指輪で、少年はティナの手を取り、その指輪をそっと指に嵌めた。
「それまで、この指輪がティナを守る。だから、死ぬな。俺を信じて待ってろ」
ティナは少年と指輪を交互に見つめる。
逃げることの許されないティナを、助けてくれると彼は言った。王太子の婚約者であることが当然で、それ以外の選択など一つも与えられなかった。それだけがティナの全てで、ティナの存在はそれだけのためにあるのだと思わされてきた。
「私、王子様の婚約者じゃなくてもいいの……? そうじゃない私でいいの……?」
「当たり前だろ。ティナはティナだ。そんな肩書きがティナじゃない」
生まれてはじめて、ティナという自分の存在を認められた気がした。
涙で滲む瞳で、頼もしく微笑む少年を見つめる。
「名前を教えて……?」
ティナの問いかけに、彼は笑って口を開いた。
ティナは夢から醒めた。瞼を開くと、目の前には少年から青年へと成長したギルバートの顔があった。
仰向けになる彼の上に、ティナはうつ伏せの状態で重なっている。彼の体の上で眠っていたようだ。膣穴にはまだ彼の欲望を咥え込んだままで、ずっと繋がっていたのだと思うと嬉しくなった。
ぼんやりと見つめるティナを、慈しむように彼は目を細める。
「目が覚めたのか?」
「うん……」
ギルバートの顔を見て、小さく笑い声を漏らす。
「どうした?」
「ギルバートと、はじめて会ったときの夢を見たの……」
ティナは自分の指に嵌まる指輪を撫でた。
彼と出会ったあの日から、ずっとここにある。魔力で作られた指輪はティナの成長に合わせて大きさが変わるので、ぴったりのままだ。
エイベルには陛下から渡された守りの指輪だと言ったが、それは嘘だ。エイベルは全く気づいていないが、指輪を嵌めた状態で彼にエスコートされてきた。だから異性が触れられないように魔力が込められているというのも嘘だ。ティナが触られたくないと拒んだときに魔力が発動するのだ。幼いときからエイベルに会うときもいつも指輪を嵌めていたのに、彼は全くそのことに気づいていなかった。気づいていないとわかっていたので、ティナも平気で嘘をついたのだ。
嘘をついたことも、ティナの記憶にはもう残っていない。エイベルの存在自体、既に気にかけることさえない。
ティナの頭を占めるのは、ギルバートのことだけだ。
ギルバートも笑い、ティナの指に嵌まる指輪に口付けた。
「やっとティナを助けられたな」
「ありがとう、ギルバート。私を助けてくれて」
微笑み合い、触れるだけのキスを交わす。
ギルバートの手が背中を撫で、ティナは熱い吐息を漏らした。
「……外がうるせえな」
「外……?」
「魔族どもが、騒いでる」
「えっ……もしかして、ギルバートを狙って……?」
ティナの瞳が不安に揺れる。
魔王を倒しても、魔族が全滅したわけではない。ギルバートに報復しにやってきたのだろうか。
ギルバートには危険な目に遭ってほしくない。
怯えるティナの頭を、ギルバートが優しく撫でる。
「俺に用があるのは確かだが、命を狙ってるわけじゃねえ」
「え……?」
「魔王を殺す力のある俺に、敵うとは思ってない。無駄死にする気はないようだな」
「じゃあ、どうして?」
「新たな魔王にならないかって、誘いだ」
「勇者様を、魔王に……?」
ぽかんとして、それからくすくすと笑う。
「ま、それも楽しそうだけどな」
二人の密やかな笑い声が室内に溶けていく。
勇者でも魔王でも、ティナはどちらでもいい。彼が何者であろうと、彼の傍にいられるのなら、それでいい。
痣が消え、ティナは王太子の婚約者ではなくなった。でも、癒しの力は残っている。
けれど、ティナは自分が聖女だとは思えなかった。
だって、ギルバート以外の人間も、魔族も、どうでもいいと考えている。ギルバート以外がどうなろうと、生きようと死のうと、どうでもいい。両親も、生まれたときから同じ屋敷で暮らす使用人達のことすら、そう思っている。
そんな自分が、聖女であるわけがない。
それでも、ギルバートはティナを否定しない。聖女じゃなくても、ティナをティナとして認めてくれる。
出会ったときからずっと、ティナの心を支配するのはギルバートだけだ。
だから彼以外の他の誰かがどうなろうと、ティナは心を動かさない。
「大好き、ギルバート」
子供のように無垢な告白に、ギルバートは優しい笑みを浮かべる。
交わした口づけは、二人の体がこのまま溶けて一つになってしまうのではないかと思うほど、どこまでも甘かった。
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