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目が合っただけなのに 1
しおりを挟むヤバそうな雰囲気の男と目が合って、その男が友達の彼氏の上司で、友達を介して会いたがっていることを伝えられ、逆らえなくて男に会いに行きいいようにされる女子高生の話。男に愛はあるけどヒロインはそれに気づいてません。
いやいやしながらしっかり感じてます。無理やりですが痛い表現はありません。
現代 無理やり 淫語
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美織は顔を真っ青にして、高級車の後部座席で身を縮めていた。
乗り心地を楽しむ余裕もなく、周りの景色も目に入らない。
ただ顔を伏せ、膝の上できつく手を握り締めていた。
今すぐ逃げ出したい。怖くて怖くて堪らない。体の震えが止まらない。
これから自分がどうなってしまうのか、考えただけで心臓が止まるほどの恐怖を感じた。
そんな美織の心情など気にも留めず、車は颯爽と走り続ける。車内の空調も座席の広さも快適で、こんな状況じゃなければ無邪気にはしゃいでいただろう。
しかし今、美織はそれどころではない。
永遠に目的地に着かなければいいのに、と願わずにはいられなかった。
白くなるほど強く握り締めた自分の手の甲を見下ろしながら、唇を噛み締める。
事の発端は数日前の些細な出来事。
その日、美織は幼馴染みで親友の杏奈と一緒に街をぶらぶら歩いていた。学校帰りに彼女とこうして過ごすのはいつものことだった。美味しいものを食べたり、ショッピングを楽しんだり、他愛ない話で笑い合う。それが美織の日常だ。
おしゃべりしながら二人で歩いていたとき、ふと杏奈が足を止めた。つられて美織も足を止め、杏奈を見ると彼女は横に顔を向けていた。美織も自然とそちらに視線を向ける。
そこには、スーツを着た数人の男性が立っていた。近寄りがたいオーラを放ち、周りは彼らを避けるように通り過ぎていく。
じっと見てはいけない気がして、美織もすぐに視線を逸らした。
「恭司……」
杏奈が呟いたその名前は、彼女の彼氏のものだ。会ったことはないが、名前は聞いていた。
どうやらあのスーツの男性の中に杏奈の彼氏がいるようだ。思わず、捜すように美織の視線がまたそちらへ向く。
そのとき、一人の男性と目が合った。美織は慌てて顔を背けた。
一瞬だったけれど、それだけで恐怖に心臓がばくばく脈打った。
「行こう、美織」
杏奈に腕を引かれ、その場を離れる。
声をかけなくていいの? とは言わなかった。とても声をかけられる雰囲気ではなかったから。
杏奈の彼氏については、下の名前と、年上だということくらいしか知らない。顔を見たこともなく、どんな仕事をしているのかも聞いていない。
関わってはいけない空気を纏ったあの中に、杏奈の彼氏がいるのかと思うと不安になった。
しかし、詮索はできない。杏奈は訊かれたくないことは言わない。彼氏について詳しく話さないのは、訊いてほしくないからだ。
なにも知らない美織が、あれこれと心配して口を挟むことはできない。
だから美織はなにも言わず、なにもなかったかのように振る舞い、平穏な日常へと戻った。
しかし、翌日から杏奈の様子がおかしくなった。憔悴して、ひどく思い詰めたような顔をしている。
今まで、そんな彼女を見たことがなかった。大人びていて、いつもの落ち着いている彼女らしからぬその姿に、どうしたの、と声をかけずにはいられなかった。しかし杏奈はなんでもないと言うだけで、それ以上の追及を拒んだ。
心配で堪らないのに美織はなにもしてあげられず、もどかしい思いを抱えていた。
二日後、杏奈は美織を家に呼んだ。美織はもちろん承諾した。授業を終え、二人で杏奈の家へ向かう。
杏奈の部屋に入り、並んでベッドに座った。
杏奈はなかなか話を切り出さなかった。美織は急かすことなく、彼女が話すのを待つ。
杏奈の顔色は悪い。蒼白な彼女の顔を、美織は痛ましげに見つめる。
やがて杏奈はじっと下に視線を落としたまま、震える唇を開いた。
「あのね、美織に、お願いが、あって……」
「うん! なに? 私にできることなら、なんでもするよっ」
美織は勢い込んでそう言った。
顔を上げた杏奈は泣きそうな顔で美織を見つめ、また視線を落とす。
「恭司、の……あたしの、彼氏の上司が、美織を、紹介してほしいって……」
「…………え?」
「少し前に、一緒にいたとき、偶然、見かけたでしょ……? そのとき、向こうもこっちに気づいてた、みたいで……それで、恭司の上司の人が、美織を見て、気に入った、とかで……美織に会いたいって、言ってるらしくて……恭司が、あたしに頼んできて……」
杏奈の掠れた声を聞きながら、美織は言葉を失った。
思い出したのは、あのとき一瞬だけ目が合った、あの男。
視線を交わしただけで、恐怖にぞくりと悪寒が走った。
とてもじゃないが、普通のサラリーマンには見えなかった。彼らの放つ空気が、それを物語っていた。
なにより、杏奈のこの様子。明らかに怯えている。どんなときも気丈に振る舞い、弱っている姿など見せない彼女が、確かに恐怖していた。
彼女の頼みは普通ではないのだ。まともなことではない。でなければ、こんなに思い詰めることなどないのだから。
もし美織が断れば、杏奈の彼氏が、そして杏奈自身が酷い目に遭うのかもしれない。
ならば、美織の答えは決まっている。
小さい頃からずっと一緒で、いつも美織を引っ張ってくれた杏奈。
彼女を助けたい。
「わかったよ、杏奈。私、その人に会うよ」
笑顔でそう言った。
杏奈は、受け入れてもらえて安心したような、どうして断らないのかと責めるような、複雑な表情で美織を見つめる。
辛そうな彼女に、大丈夫だと笑って見せた。
そして、その翌日。迎えの車が美織のところへやって来た。
学校から少し離れた場所に停まる、生で見たこともないような高級車に乗り込む。
心配そうにこちらを見る杏奈に手を振り、美織はそのまま走り出す車に身を委ねた。
それからずっと、美織は俯いていた。
後悔はしていないが、恐怖は増す一方だ。
大丈夫、大丈夫、と何度も自分に言い聞かせるが、大丈夫なことなど一つもない。怖くて堪らない。体の震えは止まらない。
そして遂に、車は目的地へと到着してしまう。
目も眩むような高さの高級マンションの一室に、迎えに来た運転手の男性に案内される。
ドアを開けると、スーツの男が美織を迎え入れた。
ここまで美織を送り届けた男は、すぐに立ち去った。
美織は部屋の中にいた男と二人きりになる。
杏奈の彼氏の上司だというこの男の名前は、黒崎礼一。
美織はびくびくしながら、目の前に立つ礼一の様子を窺った。
背が高く、逞しい体つき。黒髪は後ろに撫で付けられている。眼鏡の奥の瞳は切れ長で、野性味の溢れる容姿は驚くほどに整っていた。
数日前に目を合わせているはずだが、一瞬だったので殆ど覚えてはいなかった。
やはり、纏う空気は堅気ではない。
美織はすっかり怯えきっていた。
嫌な想像ばかりが頭を過る。
ガチガチに強張る美織の顔を見て、礼一はにこりと笑った。
「はじめまして、美織ちゃん。今日はわざわざ呼びつけてごめんな」
「い、いえ……」
「俺、どーしても美織ちゃんと仲良くなりたくて」
礼一の笑顔が怖い。その笑顔の裏でなにを考えているのかわからなくて怖い。
怖くても、なにをされても、美織は逃げられないし、拒めない。逃げたり抵抗したり、彼の機嫌を損ねるようなことをすれば、杏奈の彼氏が咎められるかもしれない。そうなると、杏奈まで責められるかもしれない。
どうなるのかわからないから、逆らえない。
美織はぎゅっとスカートを握った。
「あ、あの、私、どうすれば……」
「はは、そんな怯えないでよ。俺は美織ちゃんと仲良くなりたいだけなんだから」
美織を宥めるように優しい笑顔を向け、優しい声をかける。
それでも美織の恐怖が薄れることはなかった。
だって普通は、自宅かどうかはわからないが、いきなりマンションの一室に呼びつけたりしない。常識的に考えれば、外で会うだろう。ここに連れてこられたということは、つまりはそういうことなのだろう。
そしてやはり、礼一に連れていかれたのは寝室だった。
並んでベッドに腰掛け、美織は硬直する。全身から嫌な汗が噴き出した。
「可愛いなぁ、美織ちゃん。がっちがちに緊張しちゃって」
ははは、と声を立てて笑いながら、礼一は美織の体に腕を回す。
美織の顎を撫で、指で唇をなぞる。
「っ……」
「あー、美織ちゃんの唇、やーらかいなぁ。ぷにぷにで、触ってるだけで気持ちいい」
「っ……、っ……」
感触を楽しむように、指の腹で唇を撫で回される。
かさついて骨張った男らしい手に顎をとらえられ、美織はされるがままだった。
身を縮め、ぶるぶると震える。
やめてほしいけれど、そんなことは言えなかった。
「美織ちゃん、顔上げて。こっち向いて」
嫌でも、怖くても、美織は男の言葉に逆らえない。
恐怖で固まった状態で、どうにか首を動かし礼一の方へ顔を向ける。
間近で視線を合わせ、一気に恐怖が押し寄せた。
眼鏡の奥の瞳は一見穏やかだけれど、美織は獰猛な肉食獣に見つめられている小動物のような気分だった。
滅茶苦茶に食い荒らされる自分を想像し、涙が滲む。
「はは、そんなそそる顔しちゃって」
男は唇の端を吊り上げる。
「ほんと、食べちゃいたくなるなぁ」
「ん……っ」
顔が近づき、唇が重ねられた。
ただただ恐怖に支配されていたので、嫌悪感を抱くことはなかった。気持ち悪いなどと感じることはなく、とにかく怖い。それだけだった。
こういうことを、されるのだろうという予想はしていた。
男にとっては気まぐれで、美織は散々弄ばれて、ボロ雑巾のように捨てられるのだろうと。
想像はしていたけれど、実際に直面すれば想像を絶する恐怖に襲われた。
ガタガタ震える体を男に抱き締められる。
啄むようなキスを繰り返され、小さな音を立てて唇が離れた。
礼一は楽しそうに目を細めて美織を見つめる。
「初々しい反応だなぁ。もしかして、はじめてだった?」
「っあ……」
男の言葉に、美織は愚かにもはじめて交わしたキスを思い出してしまった。
美織のその表情を見て、礼一の纏う空気が一気に冷えた。彼は笑顔のまま詰め寄ってくる。
「あれ、はじめてじゃないんだ? いつ? 誰と?」
「あ、あ、あの……っ」
「答えて」
笑顔で圧をかけられ、美織は泣きそうになる。
早く答えなくてはと、焦燥に駆られながら必死に口を動かした。
「しょ、小学生の、低学年のとき、同じクラスの、男の子と……っ」
「へーぇ、その子のこと好きだったの?」
美織はぶんぶんと首を横に振った。そうしなければいけないと思った。
「なんか、一緒にドラマ観てて、キスシーンになって、それで、興味本位で、してみようってことになって、それでしてみただけで、全然、好きだったわけじゃ、ないです……っ」
なぜこんな言い訳をしているのか、わからないけれど気づけばペラペラと口をついて出ていた。言い訳じみているが、嘘ではない。
青ざめる美織の頬を撫でながら、礼一は微笑む。
「そうなんだ? じゃあ、相手の名前は覚えてる?」
「わ、忘れました……」
それは嘘だった。下の名前は覚えている。でも言ってはいけない気がした。
礼一はにこにこと笑顔を絶やさない。
穏やかな笑顔を浮かべたまま、男からの質問は続く。
「そっかぁ。キスしたのは、それっきり? それから誰かとキスした?」
「してませんっ」
それは本当だ。色恋に奥手な美織は、彼氏ができたことがない。
「ふぅん。じゃあ、はじめてのキスを忘れるくらい俺といっぱいキスしようね。そうしたら、美織ちゃんとキスしたのは俺だけになるよね」
「んむ……っ」
わけのわからないことを言って、礼一は再び唇を重ねてきた。美織は反射的に目を瞑り、ぎゅっと唇を結ぶ。
はむりと唇を食まれた。はむはむと、本当に味わうように繰り返し食まれる。
美織はどうしていいのかわからず、唇をきゅっと締めたままでいた。
やがて気が済んだのか、今度は唇を舐められる。
ぬるりとした感触が表面を這い、びくりと肩が跳ねた。
ぬるぬると、唇が男の唾液で濡れていく。
口を開けるべきなのかもしれない。ずっと口を閉じたままでは拒絶していると思われて、機嫌を損ねてしまうかもしれない。
でも、緊張と恐怖でガチガチの美織は口を開くことさえできなくなっていた。
礼一はちゅうちゅうと美織の唇に吸い付いてから、唇を離す。
美織は恐る恐る瞼を持ち上げた。口を開けなかったことを怒られるかもしれない。
半泣きの美織を見て、礼一は笑う。
「泣きそうになって、どうした?」
「ぁ……」
漸く口を開けられた。
「わ、私……うまく、できなくて……すみません……」
震える声で謝罪するが、男は怒っていなかった。
「はじめてなんだから、うまくできないのは当たり前だろ」
どうやらもう美織のファーストキスの相手は礼一になっているようだ。
「俺が一から教えるから、ゆっくり覚えていこうな」
「は、ぃ……」
頷くしかなくて素直に頷けば、礼一は満足そうに頬を緩める。
「じゃあ口開けて」
「は……ぁ……」
「もっと大きく」
「ぁ……あ……」
口を開けたみっともない顔を、じっと見られる。
羞恥に、顔にぶわっと熱が上がった。
「真っ赤になって、可愛いなぁ。美織ちゃんは口の中も可愛い。ああ、涎が溢れてきた。まだ閉じちゃ駄目だよ。俺が飲ませてもらうから」
とんでもないことを言われ、羞恥で頭が沸騰しそうになる。
からかい混じりの口調で、でも美織を見つめる男の瞳はぞくりとするような情欲を孕んでいた。
食べられてしまう、と思わずきつく目を瞑った瞬間、唇を貪られた。
「はんんんっ……んうぅっ」
じゅるるっと音を立てて唾液を啜られ、その卑猥な音と行為に、恥ずかしくて堪らなくなる。
恐怖に占められていた心は、どんどん羞恥に上塗りされていく。
口の中を、男の舌が動き回っている。熱くてぬめった粘膜が触れ合う感覚に美織は怯え、礼一の腕に縋りついた。
すると、一層キスが激しくなる。後頭部を押さえられ、深く唇が重なり、奥まで舌を差し込まれた。
「ぁんんっ、んっ、ふうぅっ、んーっ」
息が苦しくて酸素を求めて口を開けば、呼吸さえ許さないというように唇を塞がれる。
パニックになりかけたところで、鼻で息をすればいいのだと気づいた。若干落ち着きを取り戻し、肩の力が抜ける。
「はふっ、んんっ、んぁ……っ」
口腔内を男の好き勝手に蹂躙される。初心者の美織はただ口を明け渡し、貪られ続けた。
口の中を散々に舐め尽くされる。混ざり合う二人分の唾液が、だらだらと零れていく。
だんだん頭がぼうっとしてきた。
男の舌先に上顎を擦られるとぞくぞくして、ぴちゃぴちゃと響く水音に羞恥が募る。
凌辱されているような一方的なキスに、体の熱が上がっていく。
わけのわからない感覚に戸惑った。
下半身がむずむずするような感じがして、僅かに腰を捩る。
やがて、つう……っと糸を引きながら唇が離れた。
耳まで真っ赤にして必死に呼吸を整える美織の顔を、礼一は楽しそうに真上から見下ろす。
「はは、美織ちゃん、口べたべた」
「はっ……ごめ、なさ……っ」
「泣きそうになんなくて大丈夫。俺といーっぱいキスしよう。そしたらすぐ上手になるよ」
そう言って、美織の口許をぺろぺろと舐める。
舐めながら、礼一は美織の制服に手をかけた。
「制服、脱ごうか」
「えっ……!?」
思わず大きな声を出してしまった。
慌てる美織を見て、男は眼鏡の奧で目を細める。
「皺になっちゃうから」
「あ、ぅ……」
「恥ずかし?」
こくこくと頷けば、ちゅ、と唇にキスを落とされた。
「あー、かわい」
言いながら、礼一はブレザーのボタンを外していく。やめてくれるつもりは一切ないようだ。迷いのない手付きで、あっという間にブレザーを脱がされた。
「あ、あ……」
恥じらい狼狽える美織に構わず、ブラウスのボタンを外し、スカートのホックを外し、チャックを下ろし、着実に衣服を剥いでいく。
ブラジャーとショーツだけの姿にされ、下着姿を恋人でもない男に晒している羞恥に泣きたくなった。
「美織ちゃんの下着、かーわいい」
「っ……」
美織は肩を窄めて身を縮める。
フリルとリボンで飾られた下着が恥ずかしい。美織は普段からこういう可愛い下着を好んで身に付けている。だから、別に着飾ってきたわけではない。持っている下着が全部こんな可愛らしいデザインなだけだ。なのに、まるで男のために可愛い下着を選んできたみたいな感じになっているような気がする。
恥ずかしくて、なにも言われていないのに、違うと言い訳したい衝動に駆られた。
男の指が、ブラジャーの肩紐を弄る。
「脱がせちゃうのもったいないなぁ」
「っあ……」
「でも脱がせちゃおうか。そうしないと、美織ちゃんのおっぱい可愛がれないし」
「っ、っ、あ、ぁ……」
美織は真っ赤になって、制止の声を上げそうになるのを耐えた。
背中に回された手が、ブラジャーのホックに触れる。
それは呆気なく外され、美織は咄嗟に自分を抱き締めた。
ぷるぷる震えて体を隠そうとする美織を、男がにんまりと見つめる。
「恥ずかしい? 男に裸見られるのはじめて?」
声も出せず、首を縦に振る。
「はは、嬉しいなぁ。美織ちゃんの体、俺だけに見せて」
「ぅ……」
耳元で囁かれ、羞恥にじわりと涙が滲む。
けれど、拒絶することはできない。
のろのろと腕を下ろす。
ブラジャーを脱がされ、美織はショーツだけを身に付けている状態にされた。
裸の胸が露になり、眼鏡越しに男の視線が突き刺さるのを感じ、一層激しい羞恥が襲いかかる。
男の大きな掌に、ふにゃりと乳房を揉まれた。
「んっ……」
「あー、美織ちゃんのおっぱい柔らかい」
ふにふにと、男の指が胸の肉に食い込む。
「乳首、ピンクで美味しそう。自分で弄ったりしないの?」
「っは……ぅ……」
「美織ちゃん?」
「っ、して、ませ……っ」
「じゃあ、こんな風に美織ちゃんのおっぱい触るのは俺がはじめてだ」
「はぃ……っ」
「ああ、可愛いなぁ……。手加減できなくなりそ」
僅かに息を乱した礼一に、ベッドに押し倒される。
男にのし掛かられ、羞恥に塗り潰されていた恐怖がぶり返した。
室内は最適な温度に設定されていて、羞恥で体温が上がって暑いくらいなのに、寒気を感じたようにぶるりと体が震える。
胸を揉みながら、礼一は再び唇を塞いだ。
先程の貪るようなキスではなく、甘やかすように優しく口の中を舐められる。
「ふぁ……ん……っ」
「美織ちゃん、舌出して。俺の口の中に入れて」
「っは……ふ……」
胸を触られる感触に落ち着かない思いを抱えつつ、男の言葉に従い舌を伸ばした。
礼一のぬめった口内に舌を引き込まれ、思わず引っ込めそうになるのをこらえる。
「んふぅっ、んっ、んんっ」
優しく舌を吸われて、ねっとりと舌が絡み付いてくる。粘膜の擦れ合う感覚にぞくりと震えが走った。
じゅるっと音を立てて吸い上げ、舌を愛撫しながら、礼一の手は変わらず美織の胸をやわやわと揉み続けている。
どんどん体が火照っていくのを感じた。羞恥だけではない、別の理由で体温が上昇していく。下腹がむずむずして、無意識に内腿を摩り合わせた。
胸を揉む指が、中心の突起に触れる。その瞬間、びくっと肩が跳ねた。
「んんっ、ふぁっ、んっんっ、ぁんんんうぅっ」
両方の突起を指でくにくにと撫でられ、びくびくするのが止まらない。
唇を離され、美織は舌を伸ばしたままの状態で身悶えた。
「んはぁっ、あっ、あうぅっ」
唇の端から垂れた唾液を、礼一が舐め取る。
「気持ちい、美織ちゃん?」
「あっ、んっ、わか、な、あっ、あっ」
指に挟まれた突起を、きゅ、きゅ、と優しく摘ままれ、背中が仰け反る。
美織の反応を楽しむように、礼一は乳首を弄り回した。
「美織ちゃんのピンクの乳首、膨らんで固くなってる。ほら、指で弾くとこりこりって」
「やぁんんっ、あっ、あっ」
美織は真っ赤になっていやいやと首を振った。
恥ずかしくて堪らない。
「嫌なんだ? 気持ちよくない? やめてほしい?」
美織ははっとして礼一に視線を向けた。
彼が怒っている様子はない。眼鏡の奧の双眸は穏やかにこちらを見下ろしている。
けれど美織が彼の言葉を肯定すれば、どうなるかわからない。美織も、杏奈だって。
考えるよりも先に口が動いていた。
「や、じゃない、です……っ」
「ほんと?」
微笑む礼一に、こくこくと頷く。
礼一の笑みは深くなる。
「俺に触られんの、好き?」
「っ、っ、す、き、です……っ」
喉を詰まらせながら、無理やり言葉を吐き出した。
礼一はにっこり笑う。
「よかった。じゃあ、たくさん触ろうね」
「んぁんんっ」
摘ままれた乳首を捏ねられ、美織の口から甘い声が漏れる。
「あー、勃起乳首うまそう……。味見させてね」
「え、あっ、あぁんっ」
なにをされるのか理解する前に、ぺろりと突起を舐められた。ぬるぬるの舌で指と同じようにくにくにと撫で、弾かれ、美織は嬌声を上げ続けた。
この未知の感覚が快感なのだと、美織にもなんとなくわかっている。これが気持ちいいという感覚なのだと。
こんな状況で快感を得る自分が信じられなかった。
相手は、今日、はじめてまともに顔を合わせた男だ。恋人でもなんでもない、好きでもない。寧ろ恐怖の対象でしかない男にいいようにされ、感じてしまうなんて。
自分がひどく淫乱な人間に思えた。
本気で怖いと思っているはずなのに、男の愛撫に体は快感を得てしまう。
ねっとりと、押し潰すように乳首を舐められ、自分の口から漏れる甘ったるい喘ぎ声を信じられない気持ちで聞いていた。
「ふあぁっ、あっ、あんっ」
「ふ、かーわいい声。こりこり乳首舐められんの気持ちいい?」
「っ、は、ぅ……」
羞恥に涙を滲ませながら、美織は小さく頷いた。
男は嬉しそうに目を細め、大きく口を開いてぱくりと胸の先端を咥えた。
ぬめった粘膜に敏感な突起を包まれる感覚に、美織はぞくぞくと胴震いする。
男の口の中で尖った乳首を舐め回され、音を立てて吸い上げられ、美織は背中を弓なりに反らせてよがった。
「んあぁあっ、あぁっ、はあぁんんっ」
強い快楽に、触れられていない下半身が疼く。美織は何度も内腿を擦り合わせ、その疼きを紛らわそうとした。
しかし両方の乳首を繰り返し嬲られ、疼きはどんどん強くなっていった。下腹がなにかを求めて蠢いているようだった。
「ひあっ、あっ、あっ、あぅんっ」
「美織ちゃんのこりこり乳首おいし……。食っちまいたいなぁ」
「んゃああぁっ」
乳首を甘噛みされ、微かな痛みと強い快感に甲高い悲鳴が上がった。
柔らかく歯を立てながら、もう片方は指で挟んで扱かれる。
初心者の美織には受け入れきれない刺激だった。
「んひぁっ、やぁっ、こわぃ、こわいぃっ」
「ありゃ、泣かせちゃった?」
子供のように泣きじゃくる美織に気づき、礼一は顔を上げた。
宥めるように頭を優しく撫でられる。
「美織ちゃん、はじめてだもんな。気持ちよすぎて怖くなっちゃった?」
触れる男の手付きは優しい。一縷の望みにかけるように、美織はこくこくと頷いた。
泣いて縋れば、許してもらえるのではないかと思った。
「そっかぁ。じゃ、早く慣れるように、いっぱい気持ちよくしてやろうな」
希望はすぐに打ち砕かれた。男に逃がすつもりはないのだろう。泣き叫んだところで同情は得られない。美織が泣こうが喚こうが、それが男の行動を止める理由にはならないのだ。
ぐすっと鼻を啜る美織に、男はちゅっと口づける。
仕種はまるで恋人に対するようだが、これは一方的な凌辱に過ぎない。支配する側とされる側で、美織の意思など当然のように考慮はされない。
男の優しさに縋ろうとしても無駄なのだと思い知らされた。
絶望する美織の唇を甘く啄みながら、男の手が再び胸に触れる。やんわりと揉み込み、乳首を爪の先でカリカリと引っ掻いた。
そっと撫でるような弱い力加減だったが、すっかり敏感になった突起はそれだけで強い快感を拾い、美織は唇を塞がれたままびくびくと震えた。
僅かに唇を離して礼一は言う。
「乳首、いい感じに敏感になってきたなぁ。いっぱい弄って、乳首だけでイけるようになろうな」
「ひっ、うぅ……」
男の卑猥な発言に、美織は否定も肯定もできず与えられる快楽に身を捩った。
胸を弄っていた男の手が、するりと下に下りていく。腹を撫で、臍を擽り、下腹を摩る。
そうされると、また腹の奥の疼きがぶり返してきた。下腹がむずむずして、きゅうっとなるのだ。わからないけれど、じっとしていられなくなる。
もじもじと腰を揺すれば、礼一は薄らと笑って更に下へと手を伸ばした。
「あっ……」
触られてはいけないところに触られてしまう。
反射的に拒絶反応が出てしまいそうになるのを、寸でのところでこらえた。
それを褒めるように頬にキスを落とし、礼一は美織の太股に触れる。
「んんっ……」
ぞくんっと背筋に震えが走った。
怖いのに、嫌なのに、気持ちよくて、もっと触れてほしいとすら思ってしまう。
男は指で脚の付け根を撫で、くすりと笑みを零した。
「はは、美織ちゃん、もうぐっしょりだ」
「っ…………」
「えっちな汁が漏れちゃってる。ほら、くちゅくちゅって聞こえる?」
「ぁっ、う……」
「処女なのに、パンツぐっしょりになるくらいおまんこびしょびしょにしちゃったんだ」
言葉で辱しめられ、美織は消えてなくなりたいほどの羞恥に見舞われた。
「ふっ……ぅ……ごめ、なさい……」
「泣かないで、責めてるわけじゃないから。感じやすいエロい体だって褒めてんだよ」
それは美織にとって決して褒め言葉ではない。
「あーあ、可愛いパンツがびっちょり。先に脱がせておけばよかったな」
礼一の指がショーツのゴムにかかる。そのまま、するりとずり下ろされた。
「あー、すげ、糸引いてるし。えっろ……」
独り言なのか、美織の羞恥を煽るために言っているのかわからない言葉を吐きながら、濡れたショーツを足から引き抜いた。
そして美織は完全に全裸になり、男はスーツを着たままで、その差が一層恥ずかしかった。
脚の間に男の手が差し込まれ、陰部を撫でられる。
「ふぅっ……ん、ふっ……」
「唇噛まないの。お口開けて、声出して」
唇を噛み締めれば、それを咎めるように耳を噛まれた。
「ひぅっ、んっ、あっ」
礼一はそのままぴちゃぴちゃと耳をねぶり、秘部に触れる指を動かす。
「美織ちゃんのおまんこ、ぬれぬれでぷにぷに」
「んゃっ、あっ、あっ」
ふにふにと花弁を弄られ、思わず脚が閉じて男の手を内腿に挟んでしまう。
男は気にせず指を動かした。
美織の漏らした蜜が、彼の指を汚している。
礼一が美織の耳をしゃぶり、そこから生まれる快感にまた新たな蜜が溢れた。とろとろと滴るそれを、止めることなどできない。
蜜を纏った指が、肉芽に触れた。その瞬間、痺れるような快感が全身を駆け抜ける。
「んひっ、あっ、あっ、あぁっ」
そこを撫でられるたび、びくんびくんと勝手に腰が跳ねる。じっとしていられない。
気紛れに耳を舐め、礼一は吐息のような笑い声を漏らす。
「いい反応。ぬるぬるで擦られるの気持ちいい?」
「ひあぁっ、あっ、ま、待っ、あっ、んあぁっ」
「クリも乳首と一緒で、膨らんでこりこりしてきたよ。はは、腰びくびくして止まんねーな」
「んやっ、ひ、んっ、あっ、まって、くださ、あっ、まってぇっ」
「んー?」
「おかし、あっ、へん、なっちゃ、あっ、あっ、んんあぁっ、ひあっ」
待ってと礼一の腕に弱々しく縋りつくが、指の動きは止まらない。寧ろどんどん擦るスピードは速くなり、ぞくぞくとした感覚が込み上げてくる。
それが恐ろしくて、逃げるように腰を捩るけれど、巧みな男の指に追い詰められ、体は上り詰めていく。
「んはっ、あっ、あっ、ああぁあぁっ」
一層激しく体が跳ね、美織は絶頂に達した。ぶるぶる体を痙攣させながら、呆然と宙に視線をさ迷わせる。
しかし肉粒を嬲る男の指は止まらない。敏感に育ったそこを、優しく擦り続ける。
「んひぁあっ、待っ、あっ、おねが、しま、あぁっ、そこ、もっ、ぅんんぁっ、あひんんっ」
蜜をまぶすように捏ね回され、強すぎる快楽に体がおかしくなりそうだった。
「ひやぁあんっ、おねが、おねがぃ、します、くろさきさんんっ、んあっ、あんんぅっ」
「黒崎さん、なんて他人行儀だなぁ。キスまでしたのに。名前で呼んでくれなきゃ」
耳に舌を差し込みながら言われて、美織は必死に彼の名前を思い出す。
「ひんんっ、んっ、れぃいち、さぁ、んんっ、んあっ、あっ」
「そうそう。ちゃんと呼べて偉いな、美織」
「んやぁっ、あっ、れい、ち、さぁ、あんんっ、あっ、ふっ、んあぁっ」
名前を呼べばこの快楽の攻め苦から解放してもらえると思ったのに、それは美織の思い違いだった。
男の愛撫は終わらない。
撫でられ、擦られ、扱かれ、押し潰され、あらゆる方法で弄られた。
もう辛いと感じているのに、体はその快感に悦ぶように蜜を漏らし続ける。美織の愛液で、男の指もシーツもびしょびしょだ。
「美織ちゃんのクリ、真っ赤になってぷりぷりしてる。摘まみやすい大きさになったね」
「ひあぁああっ、あっ、あっ、んっ」
「すっかりクリイキ覚えて、いい子。もう自分で腰揺らして俺の指にクリ擦り付けてんの、わかってる?」
はしたなく脚を広げ、美織は腰を浮かせて動かない男の指にクリトリスを押し付けるように揺らしていた。
「ぁっ、やあぁあっ、ごめ、なさいぃっ」
自分の痴態に美織はぽろぽろと涙を零す。
「恥ずかしがっちゃって、可愛いなぁ。俺の前でなら、どんだけエロくなってもいいんだよ」
「ひっ、んうぅ……っ」
甘やかすように頭を撫でられると、助けを求めて縋りつきたくなった。けれどこの男は、決して美織を助けてくれることはないのだ。頭の片隅に残る理性が、沸き上がる衝動を押さえつける。
「美織ちゃんのおまんこ、ぐしょぐしょだね」
不意に、蜜口に指が差し込まれた。
「んひっ……」
「どう? 痛い?」
「あっ、んっ、痛く、なぃ、です、ぅんんっ」
素直に答えると、そのまま指を抜き差しされた。
違和感は拭えないが、痛みはなかった。
蜜で濡れそぼった膣穴を、指がぬぽぬぽと行き来する。
礼一は再び唇で胸を愛撫しながら、中に差し入れた指をぐちゅぐちゅと動かした。
「あんっ、んっ、あっ、あっ、ひんっ」
ちゅうっと乳首を吸われる快感と、肉襞を擦られる感覚に身悶える。
指が徐々に解れてきた膣内の敏感な部分を撫で、びくっと足が浮き上がった。
「ひぁっ、あぁっ、あんっ、あっ、あっ」
「おまんこのここ、なでなでされて気持ちいい?」
美織の顕著な反応に、礼一は乳首から口を離して笑みを浮かべる。
「美織ちゃんのとろとろまんこ、俺の指にちゅうちゅう吸い付いてんの、わかる?」
「あぁんんっ、んっ、あっ、だめ、そこ、ぅんんっ、んあっ、あんっ」
ぬぷりと二本目の指を挿入される。綻んだ蜜口は痛みもなくそれを受け入れた。
肉壁を擦りながら、指が内部を掻き回す。ぬちゅぬちゅと卑猥な水音が絶えず耳に届いた。
「ぬるっぬるのおまんこが、美味しそうに俺の指あむあむしてんの、堪んねーなぁ。処女のくせに一生懸命ちんぽねだって、ほんと、美織はエロくて可愛い」
くくく、と男の低い笑い声が遠くに聞こえた。
否定することもできず、美織はただ与えられる刺激に悶える。
中を強く擦られ、同時にクリトリスを弾かれ、美織はまた絶頂を迎えた。
「ひあぁあっ、あっ、んっ、~~~~!」
びくんっと体が硬直し、それからくたりと力が抜けた。
しどけなく足を開いてシーツに身を沈める美織に、礼一の情欲の滲む視線が突き刺さる。
「美織ちゃん、まだへばんないでね」
にゅぽ……っと膣穴から指を引き抜き、礼一は舌舐めずりしながらジャケットを脱ぎ捨てた。
引き締まった男の肉体は、しっかりと筋肉がついているのがワイシャツの上からでもわかった。
ぼんやりと男の動きを視線で追っていたら、彼の手が自身の下半身に伸び、寛げたズボンの中からペニスを取り出す光景をしっかりと目に映してしまう。
ぶるんっと反り返ったそれを見て、美織は目を瞠った。
太くて長くて大きい。ごつごつして、びくびく脈打っていて、先端の出っ張りは恐ろしく、美織は羞恥よりも恐怖を感じた。
「はは、美織ちゃんの顔、わかりやすく引きつってんなぁ」
礼一は楽しそうに唇を歪める。
「ちんぽ見るのはじめて? 俺のちんぽなら好きなだけ見ていいからね」
あまりの衝撃になにも言葉を返せない美織の両脚を、彼は大きく開いて抱える。
蜜で濡れた花弁に陰茎の先端を押し当てられ、一気に血の気が引いた。
男は避妊具をつけていない。
美織は必死に声を上げた。
「ひっ、あ、待っ、待って、くださいっ」
「だいじょーぶ。おまんこ壊さないようにゆっくり入れるから」
そんな心配はしていない。いや、あんなでかいものを突っ込まれるのはとても心配だけれど、今はそうではない。
「お願、待って、礼一さ、ひぁっ、待って待って、待ってくださ、あっ、ああぁっ」
「ほら、ちゃーんと入ってく。美織ちゃんのおまんこ、上手にちんぽ飲み込んでるよ」
「いやっ、や、だめっ、やだぁっ」
美織ははじめて拒絶の声を上げた。
大きく見開いた目で、ぬぷ、ぬぷっと先端が埋め込まれていくのを凝視する。
胎内を圧迫される感覚に息を乱しながら、必死に男に縋った。
「礼一さ、あっ、おねがぃ、お願いしますっ、ごむ……つけて……んっ、ふ……、避妊、してくださいっ」
涙を流し、懇願する。そうする以外になかった。
礼一はゆっくりと腰を進め、ぬかるむ隘路を男根で押し広げていく。そうしながら、美織を見下ろしうっそりと微笑んだ。
「美織ちゃん、俺のものになるって約束してくれる?」
「んっ……え……?」
「美織ちゃんが俺のものになってくれるなら、この後すぐ病院に連れていってあげる。お薬処方してもらおう」
つまり、避妊薬を用意してくれるということだろう。アフターピルを飲ませてくれるのだと。
しかし、すんなりと頷くことはできない。
「私が、れ、ぃち、さんの、もの……に……?」
「そ。美織ちゃんが俺のものになってくれたら、俺も約束するよ、ちゃんとお薬飲ませてあげる」
「っ……」
それを承諾してしまえば、美織はどうなるのだろう。なにをされるかわからない。いっぱい酷いことをされるのかもしれない。
想像もできなくて、怖くて、混乱して、まともな判断などできなかった。
答えられずにいる美織を笑顔で見つめたまま、礼一は言葉を続ける。
「もし嫌だって言われても、このまま孕ませて、俺のものにするけどな」
「っ、っそん、そん、な……」
絶望の滲む瞳で男を見上げた。
悪辣な笑みを浮かべた男と目が合う。
軽い口調で告げられた、冗談みたいな言葉が本気なのだと、眼鏡の奧の男の双眸が物語っていた。
選択肢など存在しない。
美織はもう、彼のものになるしかない。
どうしてこんなことになったのだろう。
あのときこの男と目を合わせなければ、こんなことにはならなかったのだろうか。
考えたところで、もうどうにもならない。
掠れる声で美織は言った。
「なり、ます……。礼一さんの、ものに、なります……」
それを聞いて、礼一は笑みを深めた。
「そっかぁ、嬉しいなぁ。美織ちゃんが、俺のものになってくれるなんて」
「んんんぅっ」
ぐぐっと、剛直を奥へと押し込まれる。
お腹の中を押し上げられるような感覚に、美織は顔を歪めた。
腰を揺すりながら、礼一が拗ねたように唇を尖らせる。
「でもなぁ、なんかショックだわ。俺との子供、欲しくないって言われたみたいで」
「んぁっ、ち、が、あっ、まだ、こわぃ、からぁっ、あかちゃ、できたら、んんっ、がっこ、行けなく、なっちゃ、あっ、あぁっ」
媚びるような発言が、勝手に口をついて出る。
男の機嫌を損ねれば、本当に妊娠させられるかもしれないという恐怖がそうさせていた。そもそも、この男が約束を守ってくれる保証もない。
「学校なんて辞めちゃっても、俺がちゃーんと面倒見るから大丈夫だよ」
「ひんっ、んっ、せっかく、入った、から、あっ、あっ、そつぎょ、したぃ、ですっ、んぅっ、んっ」
「それもそうか。いきなり結婚して夫婦になるのもいいけど、恋人同士の期間も楽しみたいしな」
「んっ、ひ、あっ、あっ」
男がなにを言っているのかわからない。理解できない。したくない。
「晴れて恋人同士になれたわけだし、ラブラブセックス楽しもうなー」
「ひあっ、あっ、あぁううぅっ」
「ん、美織ちゃんの子宮口に届いた」
礼一は動きを止めた。
胎内をいっぱいに埋め尽くされているような感覚だった。内部を圧迫され、美織は浅い呼吸を繰り返す。
「あー、ぎっちぎちなのにぬるぬる。ちんぽ吸われてるみたいでスゲーわ。ガンガン突きたくなる」
「ひうぅっ、うっ……ふ……っ」
恐ろしいことを言われて涙が溢れた。
すると慰めるように涙を舐め取られる。
「はは、泣かれると、余計にめちゃくちゃにしてやりたくなるんだけどなぁ」
「っ……」
仕種は優しくても、決してそれに絆されてはいけないのだと心に刻む。
「美織ちゃんの可愛いおまんこ、壊さないように、気持ちいいことだけしような」
「んんぁっ、あっ、あっ」
礼一がゆっくりと腰を引き、ずるる……っと陰茎が抜けていく。肉壁を擦られる感覚にぞくぞくと体が震えた。
「可愛い、美織、好きだよ、いっぱい愛し合おう」
熱っぽく囁かれる。
男の顔を見たくなくて、美織はぎゅっと目を閉じた。
そんなのは嘘だ。美織に対する気持ちなんかない。気紛れに手を出して、やるだけやって、飽きたら捨てるのだ。だからこそ、こんなことができるのだろう。
そんな言葉は聞きたくない。
この男の言葉など、なに一つ信用できない。
信じてはいけない。
固く瞼を閉ざした美織の唇に、男の唇が重なる。
「んんんっ、うんんっ、んぁっ、あっ」
礼一は美織の口腔内を舌で掻き回しながら、緩く腰を振った。
膣内の浅い部分を固く太い陰茎が何度も擦る。指でも擦られた敏感な箇所を雁で押し潰すように擦り上げられ、強い快感が込み上げてくる。
「ぁんんっ、んあぁっ、んっ、ふうぅんんっ」
舌を吸われてまともに声も上げられないまま、与えられる快楽に身悶える。
律動を続けたまま、男の指が再びクリトリスに触れた。
「んひんんっ、はぁっ、ぁんっ」
肉芽を擦られ、膣内を抉られ、宙に浮いた爪先がばたばたと跳ねる。
「んうっ、うっ、~~~~っ」
美織はまた達した。
肉壺がぎゅうっと陰茎を搾り、礼一は唇を離して息を詰める。
「っすっげ、締まる……」
「んあぁっ、あんっ、んっ、んんっ」
絶頂の余韻に、ぶるぶると痙攣する太股で男の腰を締め付ける。
だらしなく開いた美織の唇を舐めながら、礼一は剛直を最奥へと埋め込んだ。とろとろに蕩けた膣内は、先ほどよりもスムーズにそれを受け入れる。
「あー、美織ちゃんのまんこヤバ……気持ちよすぎて、がつがつ腰振っちゃいそ」
「んあっ、あっ、あっ、あんっ」
とんっ、とんっ、と一定のリズムで奥を突かれる。その間も、優しくクリトリスを撫でられた。
少し前まで苦しかったのに、今は胎内を埋め尽くす圧迫感が心地よいとすら感じている。
その変化に怯えや戸惑いを感じる余裕すらなくなっていた。
気持ちよくて、頭の中もそれだけでいっぱいになっていく。
「んはぁっ、あぁっ、あっ、んっ、あっ」
「美織ちゃんもちんぽ気持ちよさそうだなぁ。顔とろとろになっちゃってるし。もうちょっと速くしても平気かな」
肉豆を弄っていた手が離れ、両手で腰を掴まれた。
男の腰を振るスピードが速くなる。奥を突く衝撃も強くなった。
「はひっ、んんっ、んあっ、あっ、あっ」
「はあっ、このまんこスゲ、ちんぽに媚びてうねってる、美織ちゃん、美織、みお、みお」
「ひあっ、あんっ、あっ、んっ」
「わけわかんなくなっちゃってんの可愛いけど、ちゃんと俺の顔見ててね、ねえ、誰に犯されてんのかわかってる? なあ、誰のちんぽ突っ込まれてんの?」
「あぁっ、あっ、あっ、ひんっ」
「答えろよ、美織」
「んひあぁあっ」
ごちゅっと子宮口を突き上げられ、美織は悲鳴を上げる。
定まっていなかった焦点が、礼一を捉えた。
「あうっ、んあっ、あっ」
「そうそう、ちゃんと見て。で、俺の名前は? 美織ちゃんの彼氏の名前」
「あっ、れ、いち、さん、んっ、あっ」
「うんうん、ちゃんと俺の名前呼んでてくれなきゃ」
「ごめ、なさ、あっ、あっ、れぃいちさぁ、んんっ」
わけもわからぬまま謝罪し、何度も男の名前を呼び続けた。
「んぁんっ、れぃ、ち、さん、んあっ、あんっ、れいぃ、さあ、あんんっ」
「はは、ちゃんと呼べてねーの、可愛いなぁ」
抽挿はどんどん激しさを増していく。
男の動きに合わせ、美織の足はガクガクと揺れた。
硬い楔に繰り返し内奥を貫かれる。既に体は快感しか感じず、分泌し続ける蜜が結合部から溢れて泡立っていた。
「ひぁんんっ、れい、ち、さんんっ、んあっ、あっ、あっ、あっ」
「はっ、美織、またイきそう? 中、ぶるぶるしてる」
「あんっ、あっ、あっ、んぁうぅっ」
「俺もイきそう、出すよ、美織の中に、精液全部出すからね」
「んあっ、あっ、ひっ、れ、ぃち、さ、あっはあぁんっ」
更に激しく、何度も最奥を突かれ、なにを言われているのかもわからないまま、美織は絶頂へと導かれた。
「あっ、あっ、あ────っ」
「っく……はあっ……」
きつく体を抱き締められ、次の瞬間、お腹の奥で熱が弾けるのを感じた。どぷどぷっと、熱い体液が注がれている。
美織は呆然と下腹を摩った。
男の精液を胎内で受け入れ、心は恐怖しているのに、体は悦ぶように快楽を得ている。
自分の体なのに、思い通りにならず、心とは違う反応を示し、もう自分のものではないような感覚だった。
放心状態の美織から、男がゆっくりと体を離す。
「んはぁっ……んんうぅっ」
ぬぽぽ……っと陰茎が引き抜かれ、口を開けた膣穴から混ざり合った二人の体液が溢れた。
漸く終わった。
身も心も疲れきった美織は身動きがとれない。指一本動かすのさえ億劫だ。
ぼんやりと宙を見据えていると、男の笑顔が視界に映り込んできた。
「はは、美織ちゃん、まだ終わってねーから、意識飛ばさないでね」
美織の心は絶望し、それに反して体は期待するように子宮が疼いた。
「ひゃあぁああっ、あんっ、んっ、んっ、~~~~~~!」
「っ、きっつ……。美織ちゃん、また勝手にイッちゃって……イくときはどうするんだっけ?」
「んはあぁんんっ、ごめ、なひゃ、ひあっ、いくって、言うの、んあっ、あっ、ひあぁああっ」
「っはあ、しょーがないか、美織ちゃん、さっきから、イキっぱなしだし」
「はひっ、ひうぅんんっ、んあっ、いくっ、あっ、あーっ」
うつ伏せになった美織に馬乗りになった状態で挿入された礼一の肉棒が、ごちゅんっ、ごちゅんっと膣内を貫く。
ピンと伸ばした爪先をぶるぶると震わせながら、何度も絶頂を迎えた。
男から与えられる暴力的な快楽に溺れ、もうなにも考えられない。
美織の漏らす愛液と、胎内に注がれた男の精液が溢れ、シーツはぐちょぐちょだ。
「ふあぁうぅぅっ、れぃちしゃ、あんんっ、んひっ、いく、また、いっ、ああぁぁあっ」
「っは、あー、すっげー、締まる……美織ちゃんのどろどろのおまんこでちんぽしゃぶられんの、ほんと堪んねーわ」
ぐぽっぐぽっと絶えず内奥を穿たれる。すっかり男に慣らされた膣穴は柔軟にそれを受け止め、快感に蠕動し陰茎に吸い付く。
「っあー、イく、美織ん中、出る、出す……っ」
「んぁあああっ、んっ、んんんんっ」
これで何度目の射精なのか、もう覚えてはいない。数える余裕もない。
背中に覆い被さった礼一に、強く抱き締められる。
精液を奥へ奥へと流し込むように、ぐちゅぐちゅと亀頭を子宮口に擦り付けられた。
「美織のお腹、もう俺の精子でたぷたぷだね」
「ふはあぁっ、んっ、ふうぅっ、ふっ、んんんっ」
男の陰茎はまだ萎えず、体積を保ったままだ。
美織はもうくたくたで意識が薄れそうになっても、与えられ続ける強烈な快楽にすぐに呼び戻される。
縋るものを求めて握り締めたせいでシーツはぐしゃぐしゃに乱れ、枕は止まらない涙と唾液でしっとりと濡れていた。
男が射精するたびに、これで漸く終わったのだと希望を抱くのはもうやめた。
「美織のおまんこ気持ちいい……もうずっと突っ込んでたいな」
「んひぃっ、ひ、ふっ、んんっ」
首筋にじゅうっと吸い付かれ、走った痛みに肩を竦ませる。
「はあっ、かわい……美織、みお、可愛い、好きだよ、愛してる」
抱き締められ、男の体温に包まれ、まるで恋人に愛されているかのように錯覚する。
勘違いしてはいけない。僅かに残る理性が揺らぐ心を立て直す。
愛されてなんかいない。これはこの男の遊びなのだ。
快楽に翻弄されながらも、繰り返し自分に言い聞かせる。
「ああ、まだ足りない、ちんぽ全然萎えない、美織のおまんこで扱かせて」
「ひあぁっ、あっ、あんっ」
「美織のおまんこ、もう俺の形になったね、俺専用のおまんこだから、俺のちんぽしか入れちゃダメだよ、ねぇ、わかってんの? 美織はもう俺のものなんだからな?」
「はひっ、んっ、んっ、れ、いちさんの、もの、れす、んんあっ、あっ」
「ん、いい子だね。俺の彼女だって忘れないように、これからもたくさんエッチしよう」
「んあっ、あっ、あっ、あっ」
「こうやって、いっぱいちんぽでおまんこずぼずぼしてあげる」
「ひっ、はっ、あんっ、あっ、あぁっ」
「嬉しい、美織?」
「っは、あ……うれひ、れす……うぅっ」
「ああ、みお、可愛い」
ぎゅうっと力を込めて抱き締められ、流れる涙を舐め取られた。
「みお、みお、気持ちいい?」
「んあっ、あっ、ふ、んあぁあっ」
「みーお? 気持ちいいか訊いてんだけど?」
「ひはあぁああっ」
どちゅんっと最奥を穿たれ、その衝撃に美織は目を見開く。足がばたばたとシーツを叩いた。強烈な快楽に暴れそうになる体を押し潰すように押さえつけられ、どちゅっどちゅっと膣内を突き上げられる。
「きもちいっ、きもちいい、れふぅっ、れい、ぃちしゃ、あぁっ、きもちいいっ」
「はは、かーわいい。いっぱい気持ちよくして、たっぷり可愛がってあげるからな」
「んひぁあっ、あっ、あぁっ」
また激しい抽挿がはじまり、快楽の波へと突き落とされる。
掠れた嬌声を上げながら、美織はとんでもない男に目をつけられてしまった自分の不運を呪った。
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