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3.魔道具名人(幼女)
6話
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「あーーっ、違うの違うの!今レヴィアスさんが寝てて……!」
違うに決まっているじゃない!と慌てて繰り返し否定する。
ガルオンはしばし狼狽えていたものの、ピクリとも動かないレヴィアスの姿を見て納得したのだろう。
レヴィアスの体を支えるようにしながら、ソファへと横たえるのを手伝ってくれた。
「いや……本当に焦るから、やめてくれ」
「ごめんなさい、でも机で寝かせておくのも忍びなくて……」
冷や汗をかいた様子のガルオンに、シオンは礼を言う。
一人ではここまで移動させている間に、レヴィアスを起こしてしまっていたかもしれない。
ソファで小さな寝息を立てるレヴィアスの姿に、ガルオンは困ったようにため息をついた。
「こうなる前に、休んでほしいって思ってはいるんだがな……」
まあ、俺なんかが口出しできる事じゃないんだけど、と少し落ち込んだ様子でガルオンが頭を掻いた。
やはり、レヴィアスの無茶な働き方に思うところがあるのだろう。
ガルオンに確認したところ、予定されている報告などはすべてキャンセル可能とのことだった。
レヴィアス配下の他数名へも共有しておいてほしいことを伝えると、ガルオンは快く引き受けてくれた。
てっきりハーピーの里で作業をしているところかと思っていたが、ちょうど報告のために魔王城に戻ったところだったらしい。
居合わせたのが縁のあるガルオンで良かった、とシオンは幸運に感謝した。
「……なあ、本当にレヴィアス様とは何もないのか?」
ぼそっとガルオンが呟く。
「ないですって!本当にさっきバルドラッドさんが……」
「いや、今の話じゃなくて」
恋仲とかじゃねえの?
ぶっきらぼうにガルオンが問いかける。
……こいなか?
「いやいや、ないでしょう。私みたいなどこの馬の骨とも知れない人間と」
「どこの馬の骨でも好きになるのは自由だろ」
すごいことを言っている。
「……意外と情熱的なんですね、ガルオンさん」
シオンが驚いてそういうと、ガルオンはバツが悪そうに鼻を鳴らした。
それにしてもだ。
……好き?
私が、レヴィアスさんを?
もしくはレヴィアスさんが、私を?
「お前はここに来たばっかりだから知らないだろうけど、レヴィアス様にこんなに近づける奴なんて中々いないからな」
「え?いやでもナナリーさんとか、それこそガルオンさんとか……」
「ナナリー様とは幹部同士だから、そりゃあ会話もあるだろ。俺なんて、会話はほとんど報告事項だけだ」
「それは……コミュニケーション面でちょっとお互い課題がありますね」
じゃなくて!とガルオンが苛立ちを見せる。
(いや、大切なことだと思うんだけどな、上司と部下の関係性)
そんなことを考えながら、うだうだと何かを言っているガルオンの話に耳を傾ける。
こんな、社内の恋バナみたいなものにガルオンが興味を示しているのが意外でならない。
「別に茶化そうとしてるわけじゃねえよ。……お前みたいなのがレヴィアス様のそばにいるなら、俺たちも安心だなって思ってるだけ」
思いのほか真剣な顔で返されて、シオンは面食らっていた。
だいたい、社内恋愛みたいなことは、もといた世界でも考えたことが無かったのだ。
学生時代以来、まともに恋愛なんてしてきていない。
ド直球なガルオンの言葉に、少しだけ動揺している自分に気が付いた。
「執務室の中で二人でいられるなんて、よっぽどだぞ、多分」
「それは、仕事が……」
「別に、書類受け取って終わりにだって出来るだろ」
ガルオンは、どうしてもレヴィアスとシオンの間に特別な関係性を見出したいらしい。
セクハラですよともんくも言いたくなるが、ガルオンの目があまりに真剣だ。
そうなると、思わずシオンもうーんと考え込んでしまう。
自分がどうこう、というよりも、レヴィアスが自分なんかを相手にするだろうか?という気持ちが大きい。
あの、活動時間の九割九分を仕事に費やしているレヴィアスが。
「シオンは、レヴィアス様のことをどう思ってるんだよ」
……ド直球。
「どうって言われても……」
困惑しながらも、この世界に来てからのことを思い返してみる。
仕事の関係上、確かにレヴィアスとのかかわりは多かった。
実のところ、無表情で淡々とした様子の彼に、最初は少し恐怖心を抱いていた。
必要最低限で返される言葉や端的な行動から、彼の性格を読み取ることが難しかったのだ。
(安心できるようになったのはいつからだっけ……)
その態度が、決して自分を遠ざけたりないがしろにするものではないと気が付いた。
むしろ、公正で、向き合いとして誠実だとも感じられるようになったのだ。
それに、初めてバルドラッドと向き合った時にも、彼の容赦無い追求から守ろうとしてくれていた。
あれは、決して他者に対して無関心な人がとる行動ではなかったと思う。
「……誠実で優しい方だと思うけど」
その答えを聞いて、ガルオンは少しだけ誇らしげに笑った。
ほら、彼はこうして部下にも愛されている。
「なら、良かった」
それからもあれやこれやとガルオンから質問をされたが、シオンの頭の中をその言葉たちが素通りしていく。
仕事に戻るガルオンの後姿を見送りながら、シオンはぼんやりと考え事をしていた。
ぱらぱらと、レヴィアスの承認サインが書き込まれている処理済みの書類を集めながら、ガルオンの言葉を反芻する。
レヴィアス様にこんなに近づける奴はいない…?
これまであまりにも必死に仕事をしていて、考えたことも無かった。
(レヴィアスさんをどう思っていのか……か)
一緒に仕事をすると、安心する。
仕事漬けになっているのは少し心配だ。
彼のためにも、何とか業務を整理して力になりたいと思っている。
頭の中を整理しながら、シオンは未だ少しも動かないレヴィアスの姿をちらりと見た。
ふと、先ほど背負った時のレヴィアスの体温を思い出す。
初めて飛竜に乗った時、後ろから支えてくれた腕の強さも。
(あれっ……?)
今更どきどきと鼓動が早くなる。
(わ、やだやだ、変に意識しちゃって)
じわじわと顔が赤くなっていることを感じて、シオンは手の甲を押し当てて頬を冷やす。
なんだか急に焦りを感じ、手早く書類をまとめると、足早にレヴィアスの執務室を後にした。
廊下を急ぎ足で歩く。
頬に感じる風が、冷たくて気持ちいい。
「あら、シオン、お疲れ様」
「あっ、ナナリーさん!お疲れ様です」
「……どうかした?」
「へっ?あ、いえ……そうだ、レヴィアスさんが今眠っているので、一旦お仕事がストップします」
「あら、そう。……わかったわ、ありがとう」
ペコリとお辞儀をして、また足早にその場を立ち去る。
しばらくナナリーがこちらを見ていたような気がする。
(顔、赤くなかったかな……)
湧き上がった感情を落ち着かせるように、シオンはもう一度頬をごしごしと手のひらで擦った。
違うに決まっているじゃない!と慌てて繰り返し否定する。
ガルオンはしばし狼狽えていたものの、ピクリとも動かないレヴィアスの姿を見て納得したのだろう。
レヴィアスの体を支えるようにしながら、ソファへと横たえるのを手伝ってくれた。
「いや……本当に焦るから、やめてくれ」
「ごめんなさい、でも机で寝かせておくのも忍びなくて……」
冷や汗をかいた様子のガルオンに、シオンは礼を言う。
一人ではここまで移動させている間に、レヴィアスを起こしてしまっていたかもしれない。
ソファで小さな寝息を立てるレヴィアスの姿に、ガルオンは困ったようにため息をついた。
「こうなる前に、休んでほしいって思ってはいるんだがな……」
まあ、俺なんかが口出しできる事じゃないんだけど、と少し落ち込んだ様子でガルオンが頭を掻いた。
やはり、レヴィアスの無茶な働き方に思うところがあるのだろう。
ガルオンに確認したところ、予定されている報告などはすべてキャンセル可能とのことだった。
レヴィアス配下の他数名へも共有しておいてほしいことを伝えると、ガルオンは快く引き受けてくれた。
てっきりハーピーの里で作業をしているところかと思っていたが、ちょうど報告のために魔王城に戻ったところだったらしい。
居合わせたのが縁のあるガルオンで良かった、とシオンは幸運に感謝した。
「……なあ、本当にレヴィアス様とは何もないのか?」
ぼそっとガルオンが呟く。
「ないですって!本当にさっきバルドラッドさんが……」
「いや、今の話じゃなくて」
恋仲とかじゃねえの?
ぶっきらぼうにガルオンが問いかける。
……こいなか?
「いやいや、ないでしょう。私みたいなどこの馬の骨とも知れない人間と」
「どこの馬の骨でも好きになるのは自由だろ」
すごいことを言っている。
「……意外と情熱的なんですね、ガルオンさん」
シオンが驚いてそういうと、ガルオンはバツが悪そうに鼻を鳴らした。
それにしてもだ。
……好き?
私が、レヴィアスさんを?
もしくはレヴィアスさんが、私を?
「お前はここに来たばっかりだから知らないだろうけど、レヴィアス様にこんなに近づける奴なんて中々いないからな」
「え?いやでもナナリーさんとか、それこそガルオンさんとか……」
「ナナリー様とは幹部同士だから、そりゃあ会話もあるだろ。俺なんて、会話はほとんど報告事項だけだ」
「それは……コミュニケーション面でちょっとお互い課題がありますね」
じゃなくて!とガルオンが苛立ちを見せる。
(いや、大切なことだと思うんだけどな、上司と部下の関係性)
そんなことを考えながら、うだうだと何かを言っているガルオンの話に耳を傾ける。
こんな、社内の恋バナみたいなものにガルオンが興味を示しているのが意外でならない。
「別に茶化そうとしてるわけじゃねえよ。……お前みたいなのがレヴィアス様のそばにいるなら、俺たちも安心だなって思ってるだけ」
思いのほか真剣な顔で返されて、シオンは面食らっていた。
だいたい、社内恋愛みたいなことは、もといた世界でも考えたことが無かったのだ。
学生時代以来、まともに恋愛なんてしてきていない。
ド直球なガルオンの言葉に、少しだけ動揺している自分に気が付いた。
「執務室の中で二人でいられるなんて、よっぽどだぞ、多分」
「それは、仕事が……」
「別に、書類受け取って終わりにだって出来るだろ」
ガルオンは、どうしてもレヴィアスとシオンの間に特別な関係性を見出したいらしい。
セクハラですよともんくも言いたくなるが、ガルオンの目があまりに真剣だ。
そうなると、思わずシオンもうーんと考え込んでしまう。
自分がどうこう、というよりも、レヴィアスが自分なんかを相手にするだろうか?という気持ちが大きい。
あの、活動時間の九割九分を仕事に費やしているレヴィアスが。
「シオンは、レヴィアス様のことをどう思ってるんだよ」
……ド直球。
「どうって言われても……」
困惑しながらも、この世界に来てからのことを思い返してみる。
仕事の関係上、確かにレヴィアスとのかかわりは多かった。
実のところ、無表情で淡々とした様子の彼に、最初は少し恐怖心を抱いていた。
必要最低限で返される言葉や端的な行動から、彼の性格を読み取ることが難しかったのだ。
(安心できるようになったのはいつからだっけ……)
その態度が、決して自分を遠ざけたりないがしろにするものではないと気が付いた。
むしろ、公正で、向き合いとして誠実だとも感じられるようになったのだ。
それに、初めてバルドラッドと向き合った時にも、彼の容赦無い追求から守ろうとしてくれていた。
あれは、決して他者に対して無関心な人がとる行動ではなかったと思う。
「……誠実で優しい方だと思うけど」
その答えを聞いて、ガルオンは少しだけ誇らしげに笑った。
ほら、彼はこうして部下にも愛されている。
「なら、良かった」
それからもあれやこれやとガルオンから質問をされたが、シオンの頭の中をその言葉たちが素通りしていく。
仕事に戻るガルオンの後姿を見送りながら、シオンはぼんやりと考え事をしていた。
ぱらぱらと、レヴィアスの承認サインが書き込まれている処理済みの書類を集めながら、ガルオンの言葉を反芻する。
レヴィアス様にこんなに近づける奴はいない…?
これまであまりにも必死に仕事をしていて、考えたことも無かった。
(レヴィアスさんをどう思っていのか……か)
一緒に仕事をすると、安心する。
仕事漬けになっているのは少し心配だ。
彼のためにも、何とか業務を整理して力になりたいと思っている。
頭の中を整理しながら、シオンは未だ少しも動かないレヴィアスの姿をちらりと見た。
ふと、先ほど背負った時のレヴィアスの体温を思い出す。
初めて飛竜に乗った時、後ろから支えてくれた腕の強さも。
(あれっ……?)
今更どきどきと鼓動が早くなる。
(わ、やだやだ、変に意識しちゃって)
じわじわと顔が赤くなっていることを感じて、シオンは手の甲を押し当てて頬を冷やす。
なんだか急に焦りを感じ、手早く書類をまとめると、足早にレヴィアスの執務室を後にした。
廊下を急ぎ足で歩く。
頬に感じる風が、冷たくて気持ちいい。
「あら、シオン、お疲れ様」
「あっ、ナナリーさん!お疲れ様です」
「……どうかした?」
「へっ?あ、いえ……そうだ、レヴィアスさんが今眠っているので、一旦お仕事がストップします」
「あら、そう。……わかったわ、ありがとう」
ペコリとお辞儀をして、また足早にその場を立ち去る。
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