白砂の夜に踊る

晴なつちくわ

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第一部

32.答え合わせ

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 どれほどそうしていただろう。
 ゆっくりと緩んでいく腕の力。それに倣うように、ヴェルナも身体を離す。至近距離で見つめた水宝玉は、熱で溶けた飴玉のような温度をしていた。いつもは冷静そのものの色を灯しているのに、その影もない。少しの気恥ずかしさと嬉しさを誤魔化すように、咳払いを一つ間に落とす。

「えーっと、立ち話も何だし、とりあえず歩くか?」
「ヴェルナがそうしたいなら」

 瞳と同じ温度の声が鼓膜を揺さぶる。俺に骨抜きにされ過ぎでは。そんな一抹の不安を抱いてしまうほど、ミュトラの纏う空気が甘ったるくて、逆にヴェルナが動揺してしまう始末。
 兎にも角にもこんなところでいつまでも話すのは良くないだろう、と大通りに出ようとした時だ。

「待て、ヴェルナ」

 腕を掴まれて振り返る。ミュトラの視線が、足元に落ちている。そこでようやく己が裸足のまま逃げてきたのを思い出した。何気なく足の裏を見れば、ところどころ赤くなっている。あー、と声を出したのとミュトラが背を向けてしゃがんだのはほぼ同時だった。

「こんぐらい大丈夫だよ。問題ない」
「駄目だ。これ以上怪我をしたら困る。それとも横抱きにするか?」

 肩越しにじろりとこちらを見ながら、そんなことを言ってくるミュトラ。ウッ、と言葉に詰まる。ミュトラはやると言ったらやる男だ。衆目なんて全く気にしない。それに、ヴェルナがやめろと言ってやめるような人間なら、今此処にいない筈だ。
 この年になっておんぶかよ。そう思いはするが、背に腹は変えられない。横抱きよりはマシだ、と己を納得させてミュトラの言う通りに背中に身体を預ける。
 ミュトラはそのまま難なく立ち上がると、大通りではない方へと足を進め始めた。

「え、大通りはあっちだけど」
「まだあの男がいるかもしれないだろう。こちらからでも宿にはたどり着ける」
「そうなんだ。よく知ってるな」
「ヴェルナよりはな」

 のんびりと歩きながらミュトラは笑った。
 二人の間に落ちた沈黙を、夜の街の活気が埋めてくれる。ミュトラの背中の温かさと、ゆるやかな振動にだんだんと意識が緩み始める。聞きたいことは山程あるのに、どれも言葉にはなってくれない。
 会いに来た、で会いに来れるような身軽な立場ではないのに、どうやってミュトラは此処まで来たのだろう。それに、この街にいることだってミュトラは知らなかった筈だ。次はどこの国に向かうとかそんな話は一切しなかった。いや、もしかしたら国王に誰かがいったのかもしれないが。
 ミュトラは、どんな返事をするつもりで此処に来たのだろう。此処にいるということは、あの書状の仕掛けを解いたに違いない。そうでなければ、柔らかな笑みも甘ったるい声色も見せてはくれないはずだから。
 肩を掴んだ手にぎゅっと力が入る。
 そもそも俺は、ミュトラからどんな答えが欲しいんだ。
 そう自問する。番になるならミュトラがいいと思ったのは、紛れもない本心だ。でもその想いが返ってくるとは正直思っていなかった。あぶりだしはラナキアにはない文化で、一生気付かれなくても良いと思って想いを認めた。だからこうして今ミュトラがいることが、正直信じられない。夢を見ているのでは、と思ってしまうくらいには。
 番になろう、と言われたとして、それを受け入れる覚悟までは持っていなかった。別の誰かと番になるだろうと勝手に思い込んでいたから。
 あんなに気付いてほしいと思っていたのに、今は答えを聞くのが少しだけ怖い。番になって、己は各国を回りながら、ミュトラはこの国で過ごすのだとしたら。その間に心変わりなんてされてしまったら。想いに応えて貰わなかったときよりも、絶対にもっと深く傷付くに決まっている。
 悶々と一人で考えているうちに、もう目の前に今夜世話になっている宿屋の前に辿り着いていた。ミュトラはそのまま中に入っていく。

「お、おい。そろそろ下ろしてくれ」
「駄目だ。このまま部屋まで連れて行く」
「そんなこと言ったって、俺の部屋分かるのか?」
「ああ。お前に会う前に座長と話をしているからな」

 目を見開く。まさかジアノと先に話をしていたなんて。
 ミュトラの言葉通り、受付にいた番台はヴェルナを背負ったミュトラを見ても、おかえりなさいませ、とにこやかに頭を下げてキーを渡してきただけで、咎めることはなかった。
 受付の横にある階段を登り始めたミュトラに問いかける。

「ていうか、ジアノと何話したんだよ」
「知りたいのか?」

 少し誂うような逆質問に、むっとしながら言い返す。

「そりゃあ知りたいだろ。俺に関わることだったら余計に」
「そうだな。端的に言えば、ヴェルナに会わせてほしい、と彼に言った」

 馬鹿正直にジアノにそう伝えるミュトラが簡単に想像できてしまって、思わず笑った。何でもかんでも真っ直ぐに直球で伝えてくるミュトラに、さぞかしジアノも面食らっただろう。喉で笑いながら、聞いてみる。

「ジアノ、すげー顔しただろ」
「不服そうな顔だったな。何故です、と低い声で威嚇された」

 そうだろうな、と思う。ミュトラに告白された、と報告したときも複雑そうな顔をしていたのをよく覚えている。王都を出る前も気にかけてくれていた。何も言わなくて良いのか、というジアノを振り切ったのに、こうして頭を悩ませる張本人が目の前に現れたら、不服そうな顔にもなるだろう。

「ははっ、そこで怯まないのがお前だよな」

 ジアノの威嚇は結構怖い。過去にも数度ヴェルナに求婚してきた輩を、その威嚇で返り討ちにしていた。質問責めにして相手が言い淀めば、ジアノが相手を追い返すのが常だった。
 なのに。
 ミュトラはヴェルナの前に現れた。つまり、ジアノが納得したのと同義だ。ジアノが許したのなら、あとはヴェルナ次第ということになる。
 部屋の前に着いても下ろしてもらえず。器用に扉を開けたミュトラに連れられて、寝台まで辿り着いたところで、やっと身体を支えてくれていた腕が離れていく。

「悪かったな。ありがとう」
「構わない」

 寝台に腰を下ろしたヴェルナに、少し待っていろ、と言ったミュトラが、浴室へと消えていく。すぐに戻ってきたミュトラの手には、濡れたタオルがあった。足を拭けということだろうな、と手を差し出したのだが。見事に無視したミュトラは、小さな笑みを灯したままヴェルナの足元に腰を下ろした。
 まさか、と思ってタオルに手を伸ばす。なのに、ミュトラは手の届かないところぎりぎりでそのタオルを持っている。

「それくらい自分で出来るって」
「俺がやりたいんだ。やらせてくれ」

 仮にもこの国の第三王子に、汚れた足を拭かせるなんてとんでもない。こんなことをやらせているのを知られたら、不敬罪に問われたっておかしくない。だというのに、ミュトラは頑なだ。一生懸命手を伸ばしても、すいと躱されてしまう。

「なあ頼むよ、俺のためだと思って俺にやらせてくれ」
「嫌だ。これに懲りたら、今後は一人で夜に裸足で踊らないことだ」

 ミュトラの言う通りだ。夜の踊りはやめろと言われていたのに、勝手に一人で踊った挙げ句、厄介な輩に目を付けられた己が悪い。ある意味、仕置きなのだろう。ぶすりと口を尖らせて大人しくすることにする。ミュトラは満足げに笑みを深めると、ヴェルナの足先をそっと持ち上げて、ゆっくりとタオルで包みこんでくる。
 もっと適当にやっていいのに、大切にしたくて仕方がない、と言われているような拭き方だ。心臓が少しずつ速度を上げていく。勘違いするな、と自分に言い聞かせながら、気を紛らわせるように口を動かす。

「で? 王都にいるはずのミュトラ王子が、何故此処に?」
「お前に会いに来た、とさっきも言ったが」
「もう会っただろ。それの他にも理由があるのかと思ったけど」

 ぴたりとミュトラの手が止まる。寝台の上で握り締めた手のひらに、じわりと汗が染み出した気がした。やおら持ち上がった彼の視線とかち合う。水宝玉の瞳が、やけどしそうなほどの光を帯びて、ヴェルナを射抜いた。背中にぴりっとした電流が走る。
 ミュトラが静かに息を吸ったのを、確かに見た。

「初めにあの書状を見た時、俺はお前に拒絶されたのだと思った」

 うん、と相槌を打つ。口を挟んではいけないと思った。

「でも違った。お前はあの紙面には収まらないほどの大きな想いを、あれに詰め込んでいた。俺はそれに気付かずに、みすみすお前の手を放してしまった。自分でも馬鹿だと思う。お前の気持ちに気付かなくてすまない」

 寝台の上で握り締めていた手に、ミュトラの手のひらが重ねられる。その温かさが、血が出そうなほど強く握り締めていた拳の力を抜いていく。

「お前が望むなら手を放すのが最善だと思った。だが、まだお前が望んでくれるのなら、まだ手を伸ばしてくれるのなら、俺はそれを掴んで、もう二度と離さない。そう言いたくて、此処まで来た」

 その言葉通りに、手が握り締められる。上から握りしめるだけでは飽き足らず、指先を絡めて強く握られた。熱すぎるほどの視線が、注がれている。ふ、と笑ってその視線から逃げるように、足先を見つめた。

「お前の気持ちは嬉しい。……本当に嬉しくてたまらないんだ。でも俺は、お前の伴侶になる資格がない」
「……何故そう思う?」

 ミュトラの声は穏やかだった。責めるつもりは一切ないのだろう。優しく問いかけられて、胸の内に留めようとしていたものが、ぽろぽろと口からこぼれ落ちていく。

「お前は王族だ。もしもの時は王位を継がなければいけない。そうなった時、別の妃を娶ることになるだろう。それを見たくないんだ。俺にはお前が唯一無二で、お前だけが傍に居てくれたらいい。そして、お前にもそうあってほしい。その願望は、間違いなくお前の重荷になる。そんな俺がお前の伴侶になる資格があるとは到底思えない」

 もしもの確率は低いだろう。ヴィシラに持病があるとは聞いたことがないし、ヴィシラに子が生まれれば、王位継承権はその子に受け継がれる。でも絶対にないとは言い切れない。嫉妬に狂った自分が国益を損ねるようなことをして、恥を晒すくらいなら、最初から関係を結ばないほうが良い。
 ミュトラの人生の汚点になるくらいなら、一生伴侶にならないほうがマシだ。
 ハッ、と自嘲が漏れる。

「自分がこんなに欲張りな人間だなんて知りたくなかった。もっと軽薄で淡々とした人間だと思ってたのに。お前と関わったらこのザマだ。自分でも呆れるよ」

 いっそこれで幻滅してくれたら良い、とすら思ってしまう。それほど自分を制御できる自信がないのだ。こんなことまで思わせるのは、きっと後にも先にもミュトラだけだろう。好きな踊りだけをして上澄みだけの人間関係の中で、生涯を終えると思っていたのに。とんだ誤算だ。こんなみっともない一面が自分にあるなんて、知りたくなかった。
 沈黙が落ちる。
 やっぱり呆れ返ってるよな。そう思いながら、視線を上げた。
 ミュトラは手の甲で口元を覆っていた。その目元は見たことがないほど緩んでいて、甘さだけを映し出している。思っても見なかった表情に、目を瞬く。目が合うと、ふっと息だけで笑ったミュトラは言った。

「すまない。お前があまりにも嬉しいことをいってくれるから、言葉が出なかった」
「……はぁ? 何が嬉しいんだよ。面倒くさいことしかいってねーのに」
「それが嬉しいんだ」

 全くもって意味がわからない。顔をしかめたヴェルナをなだめるように、ミュトラの手が頬に触れる。

「いつものお前は冷静で賢く、感情は二の次だ。何を相手に伝えて、何を胸の内に秘めるべきか常に的確に判断して、なかなかお前の本心を見せてはくれない。だが今は、お前の胸の内を吐露してくれた上に、情熱的な想いを差し出してくれた。これが嬉しくないはずがないだろう?」

 これでもかというほど緩んだ目元に見つめられる。そんなはずあるわけないだろ、という気持ちが少しずつ絆されて、そうなのかもしれない、と思い始めている。何も言えないままのヴェルナに、ミュトラは更に言葉を重ねた。

「この国の行く末まで案じられる賢さは、尊敬に値する。だが、心配しなくてもお前以外を伴侶にする気はないし、父上もそれを許してくださった」
「……は? え? どういう意味だよ」
「つまり、俺が王位を継ぐことはない、ということだ」

 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。なんと突飛なことをしてきたのだろうと思う。つまり、王位継承権を放棄してきた、と言っているのだ、この男は。そんなことが許されて言い訳がない。
 王位のゆらぎは、ひいては国家のゆらぎにも繋がる。
 それを見透かしたのか、ミュトラは言う。

「勿論、有事の時はその席に座ることもあるかもしれない。が、次期国王のつなぎの仮の王としてだ。それで良い、と父上も許してくれた。それよりもヴェルナの傍にいてやってほしい、と」
「だ、だとしても! 国を離れることはしないだろ?」
「そこも父上には伝えた。ヴェルナとともに各国を巡ることで、他国の知識を取り入れ、国益に繋げたい、と。父上も、それで構わないと言っていた」

 ということは、だ。
 ヴェルナが属するウルウィ一座とともに、ミュトラも行動するということだ。ちなみにジアノにも伝えてあるし許可も貰った、と付け加えられてしまった。はっ、と一笑が漏れ出て、そのまま寝台に身体を倒して脱力した。

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