白砂の夜に踊る

晴なつちくわ

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第一部

33.全てをあなたに※

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「なんだこれ、夢か?」

 悶々と一人で考えていたのが馬鹿みたいに思えてくる。くすっと笑ったミュトラがタオルを置きながら立ち上がって、上から覗き込んできた。

「それは、夢にしたい、ということか?」
「いやだってあまりにも俺に都合が良すぎるから夢かと思って」
「残念ながら夢ではない」

 肩をすくめたミュトラが身を屈めたと思ったら、額に温さと湿っぽさが触れた。ちゅっと可愛らしい音を立てて離れていく温もり。額に口付けられたのだと気付いた時には、こちらを見下ろすミュトラが、やわらかく笑っていた。
 ぎゅ、と心臓が鷲掴みされたような気がして、思わず顔を背ける。耳まで真っ赤になったのを、勿論ミュトラは見逃してはくれないだろう。喉で笑う声がする。恥ずかしいやら嬉しいやらで、暴れまわる感情を全く制御出来ない。なんだこれ。どうしたらいいんだよ。うー、と唸って両腕で顔を隠す。

「……なんか罠に嵌められた気分だ」
「あながち間違いではないな。……嗚呼、でも」

 寝台がもう一人分の体重を受け止めて沈む。ちらりと腕の隙間から伺えば、さっきよりも近い距離でヴェルナを見下ろしてくるミュトラと目が合った。

「ジアノから出された条件が一つある」
「……なんだよ、条件って」

 笑みを深くしたミュトラは、更に顔を近づけて言った。

「番の居ないαは一座への同行を認めない、だそうだ」

 なるほど。ニンマリと笑って、ミュトラの首を両腕で抱き寄せる。鼻が触れ合いそうなほど至近距離。水宝玉の瞳の奥で、ゆうらりと揺らめく炎があった。その炎に呼応するように温度を上げる身体。それを自覚しながらそっと囁く。

「それで? お前はどいつを選ぶんだ?」

 するりと頬に添えられた手に懐けば、目の前の瞳がよりいっそう蕩けた。

「ヴェルナ、お前に決まっている」

 吐息混じりに囁かれたのと同時に、呼吸を奪うみたいに口付けられた。初めて味わうそれ。熱く甘く、脳の奥から全身が痺れていく。唇を柔く吸われて、一度離れていく熱。
 至近距離で見た薄水色が、高温の炎のように揺らめく。吸い寄せられるように、今度は自分から口付けて、やわらかい唇を淡く噛んでから離れた。ふ、と笑ったような息が頬に当たって散っていく。

「あまり可愛いことをするな。加減出来なくなる」

 囁くようにそう耳に吹き込まれて、擽ったさに笑う。どちらかといえば自分は可愛さよりも、生意気さの方が勝っている気がするのだが。まあミュトラがそう思ってくれるなら、わざわざ訂正しなくてもいいか、と思う。
 
「そういえば、番になる方法は分かるのか?」

 揶揄うように聞いてみる。なのにミュトラは怒るどころか微笑んだ。ミュトラの五指が、服の上からヴェルナの腹に触れる。そのまま手のひらまで付けると、やわく押し撫でながら言った。

「お前の胎を俺で満たした状態でうなじを噛む」

 ぞわりと肌が粟立った。恐怖に似た興奮のせいだった。腹の奥がきゅっとして、背筋にゾクゾクとしたものが走っていくのと同時に、秘部がじっとりと濡れた感覚がする。はっ、と熱い息が無意識に口から漏れたのを、他人事のように認識した。
 いま頭の中を染め上げている目の前の男が欲しい。喉に手があったら、そのまま引き寄せて、胃の中に収めていたかもしれない、なんて思う程に。

「合っているか?」

 小首を傾げながら聞いてくるミュトラに、ん、と返事をしながら、腹に乗った手の指に己の指先を絡ませて握りしめる。片腕で彼の頭を抱き寄せて、耳元で囁く。

「じゃあ早く、お前の番にして」

 ごくりと喉が鳴る音がした。言わずもがな、ミュトラだ。
 背中と寝台の間に入ってきた両腕に強く強く抱き締められた。苦しいのに、このまま一つになってしまいたいと思ってしまうから、我ながら笑ってしまう。こんなに誰かに溺れることになるなんて、思ってもみなかった。でも自分だけじゃない。下腹部に感じる熱が、それを教えてくれるから。
 だからこそ、早くこの男と一つになりたい。

「ヴェルナ、これ以上煽らないでくれ。お前を傷つけたくない」

 なのに、目の前の男が何かを押し殺すようにそう言うから。ぐっと肩を押して、額を合わせる。目の前の薄水色がゆらゆらと揺れていた。そんなに不安そうにするなよ。柔らかな気持ちが胸に湧いたまま、喉で笑って言ってやる。

「お前ならいいよ、ミュトラ。お前の全部、俺に見せろよ。受け止めてやる」

 実を言えば、もうヴェルナも限界だった。さっきから自分が運命だと決めたミュトラの匂いが全身を包みこんでいるせいで、発情期でもないのに身体は正直で、股がいろんなものでぐっしょりと濡れているのが自分でよく分かる。
 まだ動かないミュトラに痺れを切らしたのは、ヴェルナの方だった。
 ふーっと息を吐いて、ミュトラの腕の中で己の服に両手を掛ける。あっという間に脱いで寝台の下に放り投げた。それだけでは飽き足らず、下着も脱ぎ捨てて、裸体をミュトラの前に晒す。
 びしょびしょになった股も彼には丸見えだろう。浅ましい姿だと罵られたって構わなかった。ミュトラの強固な理性を砕くことが出来るならなんだって。
 目を見開いたまま固まっているミュトラに見せつけるように、口角を釣り上げて首輪の付いた首筋を己の指先で撫でた。

「……これ以上俺を焦らす気かよ? ミュトラ」

 水宝玉の瞳が、ギラリと光る。荒くなった呼吸音を聞きながら、それでも乱暴に暴こうとしないミュトラの意思の固さに内心苦笑する。
 荒い呼吸のまま、彼自身の胸元を探ったミュトラが取り出したのは、この世でたった一つだけの鍵だ。みっともなく顔が緩む。身体を反転させて、項を見せる。ぴったりと嵌る鍵穴がそこにあるのだ。
 興奮なのか緊張なのか手が震えているらしい。カチカチ、と金属がこすれる音が数度する。こういうところ可愛いよな。なんて思っていたら、カチャン、と解錠した音が響いた。ふっと首元が軽くなる。絢爛な首輪が寝台に沈んだのを見てから、ミュトラに視線を合わせる。
 フーッ、フーッと獣のような呼吸音。
 歯を食いしばって情動に耐えている目の前の男。
 嗚呼、と思う。胸に広がる何か。熱いのに心地よさすら感じるその何かが全身に広がっていくのを感じながら、ヴェルナは笑って両手を広げた。

「俺の全部貰ってくれよ、いとしい王子サマ」


 ***

 
 ヴェルナの全身に、口付けを落としていく。たったそれだけで息を乱す彼に、腹の奥底が重さを増していく。興奮してくれているのだろう。普段は真っ白な肌が淡い桃色に染まって、更にミュトラの欲を煽ってくる。
 唇を落とす度、肌を撫で上げる度、秘部を指先でかき混ぜる度に、わずかに跳ねる身体。ヴェルナの唇から漏れる淡く熱い息。涙に濡れた紫翡翠の瞳。縋るようにやわく腕を掴む手。そのどれもが愛おしくて仕方がない。
 薬で侵されたヴェルナを抱いた時とは、全然違う。
 ヴェルナから発せられる全てが、熱をさらに高温にして、胸の奥をじりじりと灼いていく。その全てが心地よいと思ってしまうから、ヴェルナという人の魅力に取り憑かれて、一生離れられないと思う。

「も、いいっ、からっ、ンッ、おまえの、いれて」

 秘部を暴く手ではなく、笑みを浮かべて凶悪なほどに勃ち上がった陰茎に触れるところが、ヴェルナらしいな、と頭の片隅で思う。
 どれだけ優しくしたいと思っても、ヴェルナはそうさせてはくれない。ミュトラが隠しておきたい粘ついた支配欲と底知れない情欲を、これでもかというほど暴いてくる。
 全部見せろよ、と言われた時、どれほどの歓喜が体中を駆け巡ったか、ヴェルナは知らないだろう。
 全部隠しておくつもりだった。
 ぐちゃぐちゃにして自分から一生離れなくなれば良い、なんて醜い感情も、この人の全部を自分のものにしたいという傲慢な独占欲も、際限なく求めてしまう情欲も。全部胸の奥にしまい込んでおくつもりだった。
 好きでたまらない人に全部を見せたら、きっと引かれてしまうと思っていたから。なのにヴェルナという男は、隠しておいた泥濘の感情を全部笑い飛ばして、受け止めてやる、なんて言うのだ。その言葉通り、ミュトラが見せた己でも呆れるほどしつこい愛撫も、なんてことはないと言わんばかりに笑って受け止めた。
 これ以上俺をどうしたいのか、と聞きたくなるほど、ヴェルナは包み込むように、ミュトラの全てを許してくれる。
 一体どこまで許してくれるのだろう。どうしてこんなに懐が深いのだろう。ヴェルナの全てを知りたいと思うけれど、この人にこそ底がないのではないかと思ってしまう。
 そんなヴェルナが、自分を選んでくれた。
 これ以上の幸福なんて、この世のどこを探してもきっとない。

「ミュトラ、っ、はやくきて」

 どこまでも深い海のように笑うヴェルナに、心臓が震えた。あぁ、と頷いた声はきっと震えていた。みっともない。でもそれでも良い。ヴェルナが、全部貰って、と言ったのと同じように、ミュトラも全てを晒したって構わないから。
 赤黒い己の男根の先端を、ヴェルナの秘部の入口にぴたりと付ける。熱い息がどちらのものかなんてもうどうでもよかった。一度ヴェルナを見る。目が合うとヴェルナは目元を緩ませて、頷いた。
 胸に広がる熱い情動に任せて、ヴェルナのナカに己を埋めていく。

「――ッうぁ、アァッ、んぅッ」
「くっ……」

 ぎゅうぎゅうと締め付けてくる内壁にうめきながら、少しずつ割り開くように腰を進める。気を抜いたら、全て持っていかれそうだ。
 熱い。気持ちいい。苦しい。好きだ。やっと一つに。
 てんでばらばらな言葉が頭の中を巡る。ゆっくりと、確実にナカを暴いて、奥に到達したところで、ヴェルナ、と呼びかけながら顔を上げた。見えた光景に目を見開く。
 ヴェルナの腹を汚した大量の白濁。激しく上下する淡い桃色の胸。真っ赤に頬を染めて、荒い呼吸を繰り返す唇。焦点のあっていない濡れそぼった紫水晶。
 達したのだ、と頭で理解した刹那、頭の奥の糸が切れた音がした。

「っ、ぁ!? まて、みゅと、ァッ、ああッ、――ッ!」

 腰をぶつける度に、白濁を吐き出すヴェルナの陰茎。ミュトラの律動にまた達したのか、ぎゅうぎゅうと締め付けてくるナカ。ビクンビクンと震えるヴェルナの身体が、脳の奥を灼いていく。もっと乱れてほしくて。もっと達したところを見たくて。凶暴な本性にまかせて、うつ伏せにしたヴェルナの身体を貪る。
 かわいい。きもちい。すきだ。あいしてる。もっとみたい。おくまで。いっそとけあえたら。おれのものだ。だれにも。わたさない。

「すきだ、ヴェルナッ、すきだっ」

 好き勝手に揺さぶって、ナカを抉る。それに応えようと、ヴェルナの雄膣もミュトラを離さないように蠢いて強く抱きしめてくるようだった。それがまるでヴェルナの意思のように感じて、胸の奥にいとおしさが無限に募っていく。
 最奥にこすりつけたのと同時に、一等強く締め付けられて吐精した。全てを搾り取るように脈動するナカ。促されるように項に舌を這わせて、思い切り噛み付いた。
 脱力する身体。二人で寝台に沈む。ヴェルナの身体を押しつぶしていると分かっていても、今は離れたくなかった。
 二人分の荒い呼吸が響いている。だんだんと落ち着いてきた呼吸音に割って入ったのは、ヴェルナの笑い声だった。

「ふっ、ははっ。お前、はげしすぎんだろ」

 詰るような言葉。でもやわらかな声色が、怒っているわけではない、と教えてくれる。
 こんなに醜態を晒したのに、それでも受け入れてくれるのか。また熱いものが胸を満たして、溢れてしまいそうだった。何も言えずに抱き締めれば、また笑った声がする。

「たまにはいいけど、いつもこんなだと俺いつか死ぬかも」
「…………、死んでもらっては困る」
「わかってるよ。だからちょっとずつ加減を知ってこうな」

 ふふ、と笑う声と共に、後ろ手に頭をくしゃくしゃに撫でられた。
 嗚呼、また募った。言葉がうまく出なくて抱き締める腕に更に力が入ったら、くるしいぞばか、とまた笑った声がした。


――――――――
あと一話くらい蛇足のような後日談(?)があります!
よろしければ最後までお付き合いください!
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