永遠のきみへ

晴なつちくわ

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0.はじまりの少し前

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 少し開いたレースのカーテンの隙間から、ほろほろと月明かりが差し込んでいる。
 そんな窓枠に腰を掛けた男――トワは、夜空を見上げて溜息を吐く。
 トワの髪は月明かりに照らされた右半分だけ、空に瞬く星のように白銀に光り、月明かりを浴びる右目も、宝石のように真っ赤に煌めいていた。月明かりを浴びていない左目と残りの毛髪は、赤茶と闇に溶けそうな黒であるにも関わらず、だ。
 左右で色の違う目と髪を気にすることもなく、トワは静かに瞼を下ろす。
 感覚を研ぎ澄まして、気配を探る。
 出来るだけ、遠くまで。
 しかしいくら遠くまで探っても、探しているモノは見つからない。
 はぁ、とまた溜息を漏らして、トワは重たい瞼をゆっくりと持ち上げた。

――必ず貴方のもとに戻ってくるから。

 未だに覚えているその言葉と声を幾度、頭の中で繰り返したか分からない。
 窓の外の星は幾度となく夜を迎えるのに、約束する、と小指を差し出して微笑んだ彼だけが此処にいない。彼が隣にいない夜が、幾度となく過ぎていった。
 立てた膝に額を擦り付けて、抱え込む。
 守れない約束なら、口に出してほしくなかった。
 未だに期待している自分が嫌だ。いつ果たされるか分からない言葉に縋って、ずっとこの場所に留まっている自分が、だんだん馬鹿みたいに思えてくる。
 こんな思いをするくらいなら、隣に誰かがいる心地よさを知りたくなかった。
 ずっと独りで、鳥籠に囚われていればよかった。
 ぽつりと言葉が漏れる。

「出来ない約束ならするなよ、ばか」

 恨み言をどれだけ垂れても、結局此処を離れられないことをトワ自身が一番知っていた。
 何度目かもわからない溜息をその場に落として、トワは立ち上がる。

 きっと明日の朝も、枕が濡れている感覚で目を覚ますんだろう。
 そんな確信に似た思いを抱きながら、足を寝台へと向けた。

 残されたのは僅かに揺れているカーテンと、月明かりだけだった。
 
 
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