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196. ドラゴンスレイヤーになる俺3
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結論から言うと、ニーズヘッグは「最古の龍」ということだった。
昨日ミカエルとご友人が救出されてから後、聖騎士団員と王国騎士団員が結界を警護しつつ、洞窟内をくまなく調査した所、滝の奥に隠し通路があることを発見した。
隠し通路の先は狭い空間があり、小さな湖があって、そこには石碑が建っているという。
黒龍の名が、ニーズヘッグということ。
世界樹の根を食い荒らす為、封じられたということ。
封じられ、神と世界を呪っていること。
殺した者には、魔剣ダーインスレイヴを与えること。
ダーインスレイヴは持ち主の能力を増大させ、魔の領域においても守護される、とのことだった。
「魔剣?ニーズヘッグを解体したら、出てくるのかな」
バージルの疑問に、冒険者ギルド本部のマスターが手を挙げた。
「解体しようにも、鱗が堅すぎて、ナイフも鉈も通りません。これは特殊な技術を持つ者でないと、不可能ではないかと思われます」
「…そんなに?…試してみよう。どこを斬ればいい?」
「こちらからこう、斬ってみて頂けますか」
「…かた…!剣が通らない…。これ、ミカエルよく斬れたな…」
全員の視線がミカエルへと集中したので、ミカエルは気まずい思いをしつつ、マジックバッグから剣を抜いて、近づいた。
ここで、自分も斬れません!ってなったら、恥ずかしくてもう生きていられないんですけど。
下限レベルは満たしていたし、攻撃自体は通っていたので、大丈夫だとは思うのだが。
虹水晶の刀身を見て、誰もが感嘆のため息を漏らした。
ジルは、嬉しそうにしていた。
「…ここでいいですか?」
「はい、腹のここを、こう…」
一文字に斬れと言われたので、その通りに剣を入れた。
「うおぉぉおおすごい…!ミカエル王子殿下すごい…!!」
ギルドマスターが興奮した声を上げ、近くで見ていた勇者パーティーとカノラド王、ジルもまた、納得したように頷いた。
「満場一致で決定だな」
ジルの言葉に反対の声を上げたのは、予想通り、ソウェイサズ王国の役人達だった。
「お待ち下さい。ミカエル殿下は本当に、この龍を殺したのでしょうか?」
「…何を今更?」
ジルに睨まれ、役人達は竦み上がったものの、反対意見は曲げなかった。
「だ、誰も、殿下が龍を殺した所を、見ていないではないですか!」
「では、貴様がこの龍の解体をしてみるがいい」
「…は?い、いやいや、なぜわたくしが…」
「鱗の一枚でも剥がせたら、疑問の余地ありと認め、再調査すれば良い」
「……」
役人達は顔を見合わせ、おまえ行け、おまえが行け、と押しつけ合いをしていた。
押し付けられ、第三騎士団長が近づいて来たが、自身の剣は抜かず、ミカエルにしゃあしゃあと言ってのけた。
「殿下の剣を、お貸し頂けませんか」
「ハァ?」
ミカエルより先に、ジルが殺気立った。
彼が、ミカエルの為に作ってくれた剣である。
怒りは当然だった。
殺気に当てられ、第三騎士団長は蒼白になっていたが、身体を震わせながらも、もう一度言った。
「殿下の腕ではなく、剣が素晴らしいから、斬れたのではありませんか?」
無礼にも程があった。
「…貴様は今、ミカエルに斬られても仕方のないことを言った。自覚はあるか」
「ヒッ…、わ、わたくしは、ミカエル殿下に、申し上げております!」
この国の、ミカエルに対する扱いの酷さは折り紙付きである。
誰もが知っている。
他国の誰もが、内政干渉に配慮して口出しせずにいるのを幸いと、堂々と自国の王子を蔑むような発言をする意味は、真実ミカエルを貶める為だった。
誰も、何も言わないから、貶めてもいいものだと勘違いしている。
ジルが怒るより前に、本当はミカエル自身が怒らなければならないことだった。
慣れすぎてしまった。
でも、他国の王族が大勢いる前で、黙っていてはいけない。
ジルに、代わりに怒らせてはいけないのだ。
ミカエル自身が、己の価値を証明しなければならない。
ミカエルを庇うように前に立ってくれていたジルの背中に触れ、隣に回った。
さらに一歩前に出て、右手に持っていた抜き身の剣を差し出した。
「では、卿がこの剣で龍を斬れなかったら、私を侮辱した罪で処刑されても、文句は言わないということで、構わないな?」
「は…?な、なぜそんなことになるのです」
でかい図体に厳つい顔をした四十代後半の騎士団長は、男爵家出身の次男であった。
騎士団長になった時点で男爵の地位を得ており、力自慢でありながらも、頭の切れる男として有名であった。
「王族への侮辱罪は、斬り捨て御免である。卿は第三騎士団長でありながら、我が国の法を知らないのか?一兵卒からやり直してはどうか」
「…っぐ…っ」
「卿は、私より強いのだろう?いい武器を持ってさえいれば、龍を斬れるのだろう。ならば斬ってみせるがいい。見事やり遂げた暁には、罪には問わぬ」
「き、斬れなかったら、どうなるのですか」
「死ね」
「…な、なんという横暴な!!」
役人達が後ろで騒いでいるが、ミカエルが視線を向ければ押し黙った。
「卿達は勘違いしているようだから言っておくが、この場に集まって下さった方々は、私が龍を殺したか否かを議論しに来たのではない。私が殺したモノが、龍か否かを議論しにいらしているのだ。本筋を理解出来ぬのならば、この場にいる資格はない。消えろ」
ミカエルが言い切ると、なぜかジルが満面の笑みで拍手をした。
「ミカエル最高…!」
「……」
今ここで、その反応はちょっとなぁ…と思いつつ、ミカエルは思わず笑ってしまった。
咳払いで誤魔化したものの、ミカエル王子の見慣れない威圧に圧倒されていた役人達が、我に返った。
「な、……、…っゆ、許されませんぞ、その横暴!我々は、妃殿下の厚い信頼を受けて、ここに参っておるのです!!」
「だから?」
「だ、だから、ですと…?」
ミカエルは、王妃など相手にしていない。
だから問うたのだが、役人達は理解出来ないようで、鸚鵡返しをした。
「この頭の悪さ、本当に宰相府から来た役人なのか?身分を詐称していないだろうな」
ジルが馬鹿にするように鼻で笑い、役人達は憤慨した。
「な、なにをおっしゃるのか!我が国を、愚弄なさるのですか!」
「先に、ミカエルを愚弄したのは貴様等だ。そして、俺が愚弄しているのは貴様等であって、国ではない。言葉、わかるか?意味、理解出来ているか?母親の胎内からやり直せ」
「なっ…!!」
「もう喋るな。国際問題にしたいのならば、止めないが」
「……っ」
思い通りにならないミカエル王子の味方、というくくりで敵対してしまったが、相手はオシウィアド帝国の皇帝だった。
隣国を、ドラゴンを使って侵略した皇帝だった。
そのことを、思い出した。
黙り込んだ役人達にはもはや見向きもせず、ミカエルは第三騎士団長へと視線を向けた。
「剣を取るがいい。龍の鱗一枚でいい、剥がしてみせよ」
「……」
今までの威勢はどこへやら、第三騎士団長は手を伸ばすことなく、その場に立ち尽くしていた。
「命がかかっているのだから、さぞや見事な手際でやり遂げてくれることだろう。楽しみだね、ミカエル」
「そうですね」
ジルは楽しそうに笑っていて、ミカエルも、余裕を持って微笑んでみせた。
人殺しなんて、したくない。
…でも、今後の為には、やらねばならない。
ミカエルの前で言うだけなら、まだ見逃してやれた。
でも、これだけの前で侮辱されたら、王子としてけじめをつけなければならない。
護衛騎士がいないのなら、自らの手で。
名誉を守らねばならないのだ。
第三騎士団長は、ミカエルとジルの笑みを見て恐怖にひきつった顔をして、身体を震わせた。
助けを求めるように周囲を見渡し、絶望に染まった顔で、俯いた。
この場に味方など、いるわけがない。
王族は皆、ミカエルと同じ立場なのだ。
侮辱した者を、許しはしない。
他国の調査団は皆、ミカエルを千年に一度の英雄として、敬ってくれていた。
侮辱する者に向ける視線は、軽蔑だった。
「いつまでミカエルに剣を持たせているつもりだ?第三騎士団長とは、王子よりも偉いのか」
カノラド王の催促に、第三騎士団長はようやく動いた。
震える手で剣を取り、滑り落とす所を慌てて掴んで、手のひらに怪我をした。
「…け、怪我をして、しまいましたので、…」
「ああ、いけませんねぇ。剣が汚れてしまったではありませんか」
即座に治癒と浄化をかけたのは、最高司祭だった。
「ミカエル王子殿下の剣は、買おうと思って買えるものではございません。触れさせて頂けるだけでも、泣いて感謝する代物ですよ。大切に扱って下さいね。怪我は治癒させて頂きました。最高司祭であるわたくしが、見守らせて頂きます。主神もきっと、あなたを見守っておられますよ」
美貌の最高司祭の言葉は、第三騎士団長にとっては、死刑宣告にも等しかった。
ドラゴンスレイヤーは、千年前に勇者パーティーが獲得した、初にして唯一の称号であった。
それを、魔力なしの無能王子が一人で獲得する、と聞いて、王妃が許すはずがなかった。
何としても阻止しろと厳命を受けてやって来た彼らは、ミカエル王子を侮っていた。
ちょっと脅してやれば、引き下がるだろうと思っていた。
龍を殺したことすらも、嘘だろうと思っていた。
目の前にニーズヘッグの死骸を見ても、ミカエル王子ではなく、他の者が代わりに倒したのだろうと思っていた。
だから、挑発した。
今第三騎士団長は、ニーズヘッグの死骸を間近に見て、己の過ちにようやく気が付いた。
先程、ミカエル王子が容易く斬って見せた死骸の斬り口は、鮮やかだった。
一目見てわかる。
腐っても、騎士団長にまで上り詰めた男だった。
ミカエル王子の剣は、確かに素晴らしい。
勇者の剣と言われても差し支えない程に、虹水晶で出来た剣は恐ろしい斬れ味であると、見た瞬間にわかる代物だった。
傑作であり、名剣であり、騎士団長が一生かけても手に入れられない、宝剣でもあった。
それを持ってしても、鱗一枚剥がせる気が、しなかった。
この龍は死してなお偉容を誇り、近づくだけで動悸がした。
見たこともない形状の鱗を、ミカエル王子は易々と斬ってみせたのだった。
「…ここに剣を刺して、剥がして下さい」
ミカエルに対してのテンションの高さとは雲泥の差で、ギルドマスターが指示をした。
震える両手で名剣を構え、指示された場所めがけて、剣を刺す。
キン、と、軽い音を立てて、剣が弾かれた。
ついでにバランスを崩し、騎士団長は尻餅を付いた。
オシウィアド皇帝に剣を奪われ、呆れたように鼻で笑われた。
「騎士団長が聞いて呆れる。ミカエルに土下座して詫びてから、死ね」
騎士団長は呆然と、弾かれた鱗を見ていた。
傷一つなく、どこを刺したのかすらもわからない。
ミカエル王子は、易々と斬って見せたのだ。
なぜ。
なぜだ。
虹水晶の剣を浄化してから、ミカエルに渡す皇帝の顔は、とても優しいものだった。
なぜだ。
「ああ、この剣で首を斬るなんて、アレにはもったいない。ミカエル、この剣使って。ヴェルンドが試し斬りして来いつって、寄越したやつ」
「…これ、アダマンタイトとオリハルコンの合金…?いや、これももったいなくない?」
「いいよ。ミカエルに使ってもらえるなら、この剣も本望だよ」
「じゃあ借りるね」
「うん」
わきあいあいとした雰囲気から一転、ミカエル王子がこちらを見た瞬間、騎士団長は背筋が凍る思いがした。
見くびっていた。
この顔だけの美しい王子は、愛玩動物では、なかったのだ。
なぜ忘れていたのか。
この王子は、剣術大会で優勝していたではないか。
…いや、あの王太子ですら優勝出来る出来レースの順位など、価値はないと判断したのは、自分だった。
あれが、真実実力であったのなら。
「ま、ままま待って下さい!!もう一度、もう一度、やらせて下さい!!」
「は?」
答えたのは、ミカエル王子ではなく、皇帝だった。
極寒の瞳で見下ろされ、背に汗をかきながら、土下座した。
「手が、手が滑ったのです!!もう一度、お慈悲を…!!」
「おい、聞いたか諸君。この国の騎士団長は、死骸相手に手を滑らせる程度の実力でも、なれるようだな」
嘲笑したのは、カノラド王だった。
「それでよく、ミカエルを侮辱出来たな。どういう神経をしているのか」
呆れたようにため息をつくのは、公国の公子だった。
騎士団長は顔を上げ、公子へと縋った。
「こ…、公子殿下なら、おわかり頂けますよね…!?公子殿下も、斬れなかったのですから!!」
この男は、言ってはならないことを言った。
ミカエルは、バージルが反応する前に、第三騎士団長の顔面を蹴り飛ばした。
巨躯が吹っ飛び、ニーズヘッグに背から激突し、血を吐きながら地面へと蹲る。
静まり返った洞窟内に、ミカエルが歩く音だけが木霊した。
「…貴様は、自国の王子だけでなく、他国の公子殿下まで貶めた。その罪は、死をもってしか、贖えない」
「…っが、ひ、…ヒィ…ッ」
騎士団長は恐怖にひきつった顔を晒し、尻で後ろにずり下がろうとしたが、死骸に邪魔されて、動けなかった。
両手足をばたばたと動かして、必死に逃げようとする騎士団長を拘束魔術で拘束したのは、カノラド王だった。
「…心配するなミカエル。我ら四国とオシウィアド帝国が、その痴れ者が死に値する罪を犯したことを、証言する」
「ありがとうございます、カノラド王」
「鎮魂の祈りは、わたくしにお任せ下さい」
「お任せします、最高司祭殿」
「我々は、ミカエル王子の味方です」
「その通り」
「…ありがとうございます、ロベルト王太子。バージル」
王族に対する侮辱は、斬り捨て御免。
王族に対する罪は、一族郎党死罪。
なぜそれが、ミカエルには適用されないと思ったのだろう。
なぜ侮辱しても、許されると思ったのだろう。
思い上がったあげくに、バージルまで巻き込んだ。
騎士団長は涙を流し許しを請うたが、許すことは出来なかった。
「なぜ私に人殺しをさせるのか。…自らの愚を、恥じよ」
ミカエルが今まで、黙って見逃していたせいだと思うと、やりきれなかった。
昨日ミカエルとご友人が救出されてから後、聖騎士団員と王国騎士団員が結界を警護しつつ、洞窟内をくまなく調査した所、滝の奥に隠し通路があることを発見した。
隠し通路の先は狭い空間があり、小さな湖があって、そこには石碑が建っているという。
黒龍の名が、ニーズヘッグということ。
世界樹の根を食い荒らす為、封じられたということ。
封じられ、神と世界を呪っていること。
殺した者には、魔剣ダーインスレイヴを与えること。
ダーインスレイヴは持ち主の能力を増大させ、魔の領域においても守護される、とのことだった。
「魔剣?ニーズヘッグを解体したら、出てくるのかな」
バージルの疑問に、冒険者ギルド本部のマスターが手を挙げた。
「解体しようにも、鱗が堅すぎて、ナイフも鉈も通りません。これは特殊な技術を持つ者でないと、不可能ではないかと思われます」
「…そんなに?…試してみよう。どこを斬ればいい?」
「こちらからこう、斬ってみて頂けますか」
「…かた…!剣が通らない…。これ、ミカエルよく斬れたな…」
全員の視線がミカエルへと集中したので、ミカエルは気まずい思いをしつつ、マジックバッグから剣を抜いて、近づいた。
ここで、自分も斬れません!ってなったら、恥ずかしくてもう生きていられないんですけど。
下限レベルは満たしていたし、攻撃自体は通っていたので、大丈夫だとは思うのだが。
虹水晶の刀身を見て、誰もが感嘆のため息を漏らした。
ジルは、嬉しそうにしていた。
「…ここでいいですか?」
「はい、腹のここを、こう…」
一文字に斬れと言われたので、その通りに剣を入れた。
「うおぉぉおおすごい…!ミカエル王子殿下すごい…!!」
ギルドマスターが興奮した声を上げ、近くで見ていた勇者パーティーとカノラド王、ジルもまた、納得したように頷いた。
「満場一致で決定だな」
ジルの言葉に反対の声を上げたのは、予想通り、ソウェイサズ王国の役人達だった。
「お待ち下さい。ミカエル殿下は本当に、この龍を殺したのでしょうか?」
「…何を今更?」
ジルに睨まれ、役人達は竦み上がったものの、反対意見は曲げなかった。
「だ、誰も、殿下が龍を殺した所を、見ていないではないですか!」
「では、貴様がこの龍の解体をしてみるがいい」
「…は?い、いやいや、なぜわたくしが…」
「鱗の一枚でも剥がせたら、疑問の余地ありと認め、再調査すれば良い」
「……」
役人達は顔を見合わせ、おまえ行け、おまえが行け、と押しつけ合いをしていた。
押し付けられ、第三騎士団長が近づいて来たが、自身の剣は抜かず、ミカエルにしゃあしゃあと言ってのけた。
「殿下の剣を、お貸し頂けませんか」
「ハァ?」
ミカエルより先に、ジルが殺気立った。
彼が、ミカエルの為に作ってくれた剣である。
怒りは当然だった。
殺気に当てられ、第三騎士団長は蒼白になっていたが、身体を震わせながらも、もう一度言った。
「殿下の腕ではなく、剣が素晴らしいから、斬れたのではありませんか?」
無礼にも程があった。
「…貴様は今、ミカエルに斬られても仕方のないことを言った。自覚はあるか」
「ヒッ…、わ、わたくしは、ミカエル殿下に、申し上げております!」
この国の、ミカエルに対する扱いの酷さは折り紙付きである。
誰もが知っている。
他国の誰もが、内政干渉に配慮して口出しせずにいるのを幸いと、堂々と自国の王子を蔑むような発言をする意味は、真実ミカエルを貶める為だった。
誰も、何も言わないから、貶めてもいいものだと勘違いしている。
ジルが怒るより前に、本当はミカエル自身が怒らなければならないことだった。
慣れすぎてしまった。
でも、他国の王族が大勢いる前で、黙っていてはいけない。
ジルに、代わりに怒らせてはいけないのだ。
ミカエル自身が、己の価値を証明しなければならない。
ミカエルを庇うように前に立ってくれていたジルの背中に触れ、隣に回った。
さらに一歩前に出て、右手に持っていた抜き身の剣を差し出した。
「では、卿がこの剣で龍を斬れなかったら、私を侮辱した罪で処刑されても、文句は言わないということで、構わないな?」
「は…?な、なぜそんなことになるのです」
でかい図体に厳つい顔をした四十代後半の騎士団長は、男爵家出身の次男であった。
騎士団長になった時点で男爵の地位を得ており、力自慢でありながらも、頭の切れる男として有名であった。
「王族への侮辱罪は、斬り捨て御免である。卿は第三騎士団長でありながら、我が国の法を知らないのか?一兵卒からやり直してはどうか」
「…っぐ…っ」
「卿は、私より強いのだろう?いい武器を持ってさえいれば、龍を斬れるのだろう。ならば斬ってみせるがいい。見事やり遂げた暁には、罪には問わぬ」
「き、斬れなかったら、どうなるのですか」
「死ね」
「…な、なんという横暴な!!」
役人達が後ろで騒いでいるが、ミカエルが視線を向ければ押し黙った。
「卿達は勘違いしているようだから言っておくが、この場に集まって下さった方々は、私が龍を殺したか否かを議論しに来たのではない。私が殺したモノが、龍か否かを議論しにいらしているのだ。本筋を理解出来ぬのならば、この場にいる資格はない。消えろ」
ミカエルが言い切ると、なぜかジルが満面の笑みで拍手をした。
「ミカエル最高…!」
「……」
今ここで、その反応はちょっとなぁ…と思いつつ、ミカエルは思わず笑ってしまった。
咳払いで誤魔化したものの、ミカエル王子の見慣れない威圧に圧倒されていた役人達が、我に返った。
「な、……、…っゆ、許されませんぞ、その横暴!我々は、妃殿下の厚い信頼を受けて、ここに参っておるのです!!」
「だから?」
「だ、だから、ですと…?」
ミカエルは、王妃など相手にしていない。
だから問うたのだが、役人達は理解出来ないようで、鸚鵡返しをした。
「この頭の悪さ、本当に宰相府から来た役人なのか?身分を詐称していないだろうな」
ジルが馬鹿にするように鼻で笑い、役人達は憤慨した。
「な、なにをおっしゃるのか!我が国を、愚弄なさるのですか!」
「先に、ミカエルを愚弄したのは貴様等だ。そして、俺が愚弄しているのは貴様等であって、国ではない。言葉、わかるか?意味、理解出来ているか?母親の胎内からやり直せ」
「なっ…!!」
「もう喋るな。国際問題にしたいのならば、止めないが」
「……っ」
思い通りにならないミカエル王子の味方、というくくりで敵対してしまったが、相手はオシウィアド帝国の皇帝だった。
隣国を、ドラゴンを使って侵略した皇帝だった。
そのことを、思い出した。
黙り込んだ役人達にはもはや見向きもせず、ミカエルは第三騎士団長へと視線を向けた。
「剣を取るがいい。龍の鱗一枚でいい、剥がしてみせよ」
「……」
今までの威勢はどこへやら、第三騎士団長は手を伸ばすことなく、その場に立ち尽くしていた。
「命がかかっているのだから、さぞや見事な手際でやり遂げてくれることだろう。楽しみだね、ミカエル」
「そうですね」
ジルは楽しそうに笑っていて、ミカエルも、余裕を持って微笑んでみせた。
人殺しなんて、したくない。
…でも、今後の為には、やらねばならない。
ミカエルの前で言うだけなら、まだ見逃してやれた。
でも、これだけの前で侮辱されたら、王子としてけじめをつけなければならない。
護衛騎士がいないのなら、自らの手で。
名誉を守らねばならないのだ。
第三騎士団長は、ミカエルとジルの笑みを見て恐怖にひきつった顔をして、身体を震わせた。
助けを求めるように周囲を見渡し、絶望に染まった顔で、俯いた。
この場に味方など、いるわけがない。
王族は皆、ミカエルと同じ立場なのだ。
侮辱した者を、許しはしない。
他国の調査団は皆、ミカエルを千年に一度の英雄として、敬ってくれていた。
侮辱する者に向ける視線は、軽蔑だった。
「いつまでミカエルに剣を持たせているつもりだ?第三騎士団長とは、王子よりも偉いのか」
カノラド王の催促に、第三騎士団長はようやく動いた。
震える手で剣を取り、滑り落とす所を慌てて掴んで、手のひらに怪我をした。
「…け、怪我をして、しまいましたので、…」
「ああ、いけませんねぇ。剣が汚れてしまったではありませんか」
即座に治癒と浄化をかけたのは、最高司祭だった。
「ミカエル王子殿下の剣は、買おうと思って買えるものではございません。触れさせて頂けるだけでも、泣いて感謝する代物ですよ。大切に扱って下さいね。怪我は治癒させて頂きました。最高司祭であるわたくしが、見守らせて頂きます。主神もきっと、あなたを見守っておられますよ」
美貌の最高司祭の言葉は、第三騎士団長にとっては、死刑宣告にも等しかった。
ドラゴンスレイヤーは、千年前に勇者パーティーが獲得した、初にして唯一の称号であった。
それを、魔力なしの無能王子が一人で獲得する、と聞いて、王妃が許すはずがなかった。
何としても阻止しろと厳命を受けてやって来た彼らは、ミカエル王子を侮っていた。
ちょっと脅してやれば、引き下がるだろうと思っていた。
龍を殺したことすらも、嘘だろうと思っていた。
目の前にニーズヘッグの死骸を見ても、ミカエル王子ではなく、他の者が代わりに倒したのだろうと思っていた。
だから、挑発した。
今第三騎士団長は、ニーズヘッグの死骸を間近に見て、己の過ちにようやく気が付いた。
先程、ミカエル王子が容易く斬って見せた死骸の斬り口は、鮮やかだった。
一目見てわかる。
腐っても、騎士団長にまで上り詰めた男だった。
ミカエル王子の剣は、確かに素晴らしい。
勇者の剣と言われても差し支えない程に、虹水晶で出来た剣は恐ろしい斬れ味であると、見た瞬間にわかる代物だった。
傑作であり、名剣であり、騎士団長が一生かけても手に入れられない、宝剣でもあった。
それを持ってしても、鱗一枚剥がせる気が、しなかった。
この龍は死してなお偉容を誇り、近づくだけで動悸がした。
見たこともない形状の鱗を、ミカエル王子は易々と斬ってみせたのだった。
「…ここに剣を刺して、剥がして下さい」
ミカエルに対してのテンションの高さとは雲泥の差で、ギルドマスターが指示をした。
震える両手で名剣を構え、指示された場所めがけて、剣を刺す。
キン、と、軽い音を立てて、剣が弾かれた。
ついでにバランスを崩し、騎士団長は尻餅を付いた。
オシウィアド皇帝に剣を奪われ、呆れたように鼻で笑われた。
「騎士団長が聞いて呆れる。ミカエルに土下座して詫びてから、死ね」
騎士団長は呆然と、弾かれた鱗を見ていた。
傷一つなく、どこを刺したのかすらもわからない。
ミカエル王子は、易々と斬って見せたのだ。
なぜ。
なぜだ。
虹水晶の剣を浄化してから、ミカエルに渡す皇帝の顔は、とても優しいものだった。
なぜだ。
「ああ、この剣で首を斬るなんて、アレにはもったいない。ミカエル、この剣使って。ヴェルンドが試し斬りして来いつって、寄越したやつ」
「…これ、アダマンタイトとオリハルコンの合金…?いや、これももったいなくない?」
「いいよ。ミカエルに使ってもらえるなら、この剣も本望だよ」
「じゃあ借りるね」
「うん」
わきあいあいとした雰囲気から一転、ミカエル王子がこちらを見た瞬間、騎士団長は背筋が凍る思いがした。
見くびっていた。
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なぜ忘れていたのか。
この王子は、剣術大会で優勝していたではないか。
…いや、あの王太子ですら優勝出来る出来レースの順位など、価値はないと判断したのは、自分だった。
あれが、真実実力であったのなら。
「ま、ままま待って下さい!!もう一度、もう一度、やらせて下さい!!」
「は?」
答えたのは、ミカエル王子ではなく、皇帝だった。
極寒の瞳で見下ろされ、背に汗をかきながら、土下座した。
「手が、手が滑ったのです!!もう一度、お慈悲を…!!」
「おい、聞いたか諸君。この国の騎士団長は、死骸相手に手を滑らせる程度の実力でも、なれるようだな」
嘲笑したのは、カノラド王だった。
「それでよく、ミカエルを侮辱出来たな。どういう神経をしているのか」
呆れたようにため息をつくのは、公国の公子だった。
騎士団長は顔を上げ、公子へと縋った。
「こ…、公子殿下なら、おわかり頂けますよね…!?公子殿下も、斬れなかったのですから!!」
この男は、言ってはならないことを言った。
ミカエルは、バージルが反応する前に、第三騎士団長の顔面を蹴り飛ばした。
巨躯が吹っ飛び、ニーズヘッグに背から激突し、血を吐きながら地面へと蹲る。
静まり返った洞窟内に、ミカエルが歩く音だけが木霊した。
「…貴様は、自国の王子だけでなく、他国の公子殿下まで貶めた。その罪は、死をもってしか、贖えない」
「…っが、ひ、…ヒィ…ッ」
騎士団長は恐怖にひきつった顔を晒し、尻で後ろにずり下がろうとしたが、死骸に邪魔されて、動けなかった。
両手足をばたばたと動かして、必死に逃げようとする騎士団長を拘束魔術で拘束したのは、カノラド王だった。
「…心配するなミカエル。我ら四国とオシウィアド帝国が、その痴れ者が死に値する罪を犯したことを、証言する」
「ありがとうございます、カノラド王」
「鎮魂の祈りは、わたくしにお任せ下さい」
「お任せします、最高司祭殿」
「我々は、ミカエル王子の味方です」
「その通り」
「…ありがとうございます、ロベルト王太子。バージル」
王族に対する侮辱は、斬り捨て御免。
王族に対する罪は、一族郎党死罪。
なぜそれが、ミカエルには適用されないと思ったのだろう。
なぜ侮辱しても、許されると思ったのだろう。
思い上がったあげくに、バージルまで巻き込んだ。
騎士団長は涙を流し許しを請うたが、許すことは出来なかった。
「なぜ私に人殺しをさせるのか。…自らの愚を、恥じよ」
ミカエルが今まで、黙って見逃していたせいだと思うと、やりきれなかった。
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原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
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