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199. 新学期が始まる俺
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「…ミカエル、今なんて?」
「ん?だから、精力剤はどうかなって」
「前後の説明を頼む」
「えっと…」
夕食三十分前に短い午睡から目覚めたミカエルが、ベッドから身体を起こし服を着ながら呟いた言葉に、アルヴィスの眉間に皺が寄った。
同じように身体を起こし、ベッドの端に放り投げていた服を拾い集めている間に、ミカエルはベッドから下りていた。
「僕が倒したわけじゃないけど、ニーズヘッグを倒した祝いに、カノラド王から回復と治癒の魔道具をもらったってことは、言ったと思うけど」
「ああ」
「さらに追加で、何かお祝いをくれると言うんだけど、こちらからは宰相府と僕から、礼状を送っただけなんだ」
「…それで、なぜ精力剤?」
「カノラド王には、まだまだお元気でいてもらいたいし」
「…それで、なぜ精力剤?」
「え、二度聞く?」
窓際の一人掛けソファに腰掛けて、マジックバッグからグラスを二つ取り出し、アイスティーを注ぎながらミカエルが首を傾げるので、シャツを羽織りながらアルヴィスは答えた。
「…浮気でもする気なのかと」
「へ?」
ミカエルが逆側に首を傾げ、真面目に意味を考え始めた。
「…それは冗談だが、必要か?あの王は今でもお盛んだと聞くが」
「今でもお盛んだと聞くカノラド王に、精力剤を贈ると浮気する気がある、って受け取られる根拠を真面目に考えてみたんだけど…」
「考えなくていい」
「…僕が、カノラド王では満足できないだろうっていう、遠回しのアルの自慢?」
「……」
向かいに腰掛け、置かれたアイスティーを飲もうとしていたアルヴィスは、目を瞬いて驚いた。
さらにミカエルは逆側に首を傾げ、こちらも目を瞬いた。
「あれ。違った?」
「そこまで考えてなかった。が、なるほどそういうことにしておこう」
「違ったのか…」
「…向こうに、誤解されかねないと思っただけだ。次会った時には、これを使って、という意味に取られるんじゃないかと」
「え!?そんな風に思う!?」
「男なんてそんなもんだ」
「主語が大きい」
「そんなもんだ」
「そうなの…?」
僕も男なのにな、と呟いているミカエルは、わかってない、と、アルヴィスは思う。
あのカノラド王は、まだミカエルを諦めていないのだ。
精力剤なんて贈られたら、都合の良いように解釈して、期待するに決まっている。
「誤解を受けようのない、無難なものにしておいた方がいいんじゃないか?」
アドバイスとしては平凡で、何の捻りもありはしない。
具体的な例を出すわけでもなく、ミカエルに丸投げだった。
…が、アルヴィスは自分にしては非常に前向きに頑張っている、と思っていた。
カノラド王に限らず何もかも、ミカエル以外はどうでもいいので、本来の自分の性格のまま言ってしまえば、「興味がない」で終わってしまう話題だった。
でも精力剤は、よろしくない。
全力で阻止すべきである。
「そっかぁ…。東方地域は、独自の薬草技術が発達してて…漢方って言うんだけど。滋養強壮とか、変な意味じゃなくて栄養補給とか、そちら方面でも売り出していけたらなって思ったんだよね。…東方地域では、薬として使われているんだけど」
「待て。新商品の売り込みだったのか?」
それなら話は変わってくる、と思いつつアルヴィスが問うと、ミカエルは頷いた。
「あ、うん。でも誤解されると困るから…別のものを考えようかな」
「そうか。…その精力剤は、効果は確かなのか?」
「どちらかというとエナジードリンク…えーっと、滋養強壮、かな」
「俺にくれても構わないが」
「…ん?必要ないよね?」
「必要だろう?」
「いやいや、必要ないよね?」
「ミカエルを十分満足させる為には、…」
「間に合ってますので結構です」
「そうか?」
「わぁ、アイスティーが美味いなぁ。甘さの調整もバッチリだなぁ」
「……」
誤魔化すように話題を変えるミカエルが美しくて可愛いので、アルヴィスはそれ以上言うことはやめた。
「カノラド王には、茶道具でも贈ろうかな」
「東方の、抹茶を飲む時の道具、だったか…」
「そうそう。上流階級に流行らせようかと思って。畳に正座、っていうのはハードルが高いから、卓上で気軽に出来るやつを」
「…いつのまにそんな話が進んでいたんだ?」
「ハルシゲと手紙のやりとりはしてるから!夏期休暇の間は、アルに進捗を話す暇もなかったよね。来年あたりから、宿泊施設も稼働させるつもり。夕食後にでも抹茶点てつつ、情報共有しようか」
「ぜひ」
新しいことに挑戦しようとしているミカエルは、とても楽しそうで輝いている。
ミカエルが望む道を、進んで欲しい。
この国の王になりたいというなら協力するし、滅ぼしたいというなら喜んで手を貸すだろう。
冒険者として生きたいなら生きればいいし、商売をしたいというならすればいい。
隣に、自分がいられれば。
なんだっていいのだ。
それ以外は望まないし、それ以上は全て、ミカエルが手にすればいい。
生きたいように生きて、死にたくなったら死ねばいい。
ミカエルを手に入れると決めた時から、アルヴィスの考えは変わっていなかった。
九月に入り、新学期が始まった。
教室に入って早々、ドラゴンスレイヤーの件で祝ってくれたのは、カノラド連邦の第四王子ルシュディーと、第六王女アーヤ、そしてソフィア・フランクリン侯爵令嬢だった。
自国内では、知っている者はほんの一部である。
ドラゴンスレイヤーどころか、ミカエルが勇者パーティーに混じって、魔族領でレベリングをしていたことすら、知っている者はほぼいなかった。
学園中、国中を今騒がせているのは、ミカエルのことではなかった。
王太子である第三王子が、女子生徒を孕ませた、という噂でもちきりだった。
もともと、女関係の噂はあったらしい。
王宮の王太子宮に、女性を複数引き入れて、夜な夜な乱交三昧だとか。
ミカエルは興味もなかったことに加え、噂を耳にする機会が乏しかったので知らなかったのだが、称号を祝われたついでに、ルシュディーが教えてくれた。
妊娠の時期的に、林間学校の頃だろう、と。
どうでもいい。
のだが、王族の醜聞である。
聞かないわけにはいかなかった。
妊娠した女子生徒自身が、嬉しそうに吹聴して回っているらしい。
妊娠が発覚してから茶会で、街で、知り合いを見つけては、自分から話題を振っていたようだ。
その生徒は男爵家の令嬢で、先代で領地を売り払い、領地を持たず、首都で生活をする爵位のみの貴族であり、爵位を返上するのも時間の問題と言われていた。
「見え見えの罠にかかったのでは…?」
「かかっちゃってるよなぁ。ばっかで~」
ミカエルが呆れ混じりに呟くと、ルシュディーもまた、鼻でせせら笑った。
身分も財産もない女性が、王太子の子を身籠もる。
一見すると、シンデレラストーリーであった。
アルヴィスは興味なさげに窓の外を見ており、アーヤ王女は不快げに眉を顰めた。
「妊娠した生徒が、望んでやったことならいいけれど…」
「望んでなきゃ、自分で言い触らしたりしなくね?」
「…まぁ、そうね…」
ルシュディーにツッこまれ、ため息を吐きながら王女が同意した。
「側妃になるんかね?」
続いてミカエルに問われたが、即答は出来なかった。
「…王太子の子どもであると、証明されれば…?」
「生まれるまでわかんねぇんだっけ?」
「魔力の波長で検査するんだったか。よほど強い魔力持ちでもない限りは、生まれてから判明するんじゃないかな」
他人の魔力は反発するものだが、親子間であれば反発は少ない。
それを利用して、親子関係の証明をする魔道具が発明されていた。
「あの王太子、魔力量ゴミっつー話よな。じゃぁ生まれてからかぁ」
「…なんでそんなこと知ってるの?」
さも当然のように言われたが、ミカエルも知らない事実を、なぜ他国の王子が知っているのか。
不思議に思って問うたが、ルシュディーの方も不思議そうな顔をした。
「有名な話じゃねぇの?国に帰ったら、飯ん時とかにそんな話、するけど」
「えっ…あ、うん。聞かなかったことにしよ」
「あれ?なんかマズかった?」
他国の王族の内部事情を気さくに話しちゃうカノラド連邦、恐るべし。
「ううん、気にしないで。でも他国の王族にそんな話はしちゃダメだよ」
「そうなん?…あー、あ、そうか。なるほど理解。気ぃつけるわ…」
ルシュディーもその危険性に気づいてくれたようで、何よりだった。
他国にスパイを送り込んでいる、ということを、公言するも同然だからだ。
「…ねぇ、ソフィアに話しかけても、いいものかしら…」
声を潜めて囁くアーヤ王女は、アルヴィスの後ろの席を気にしていた。
侯爵令嬢を名前で呼ぶ程親しくなったのかと思えば喜ばしいことだが、事情を考えると複雑だった。
王太子は、侯爵令嬢の婚約者である。
こう言う時、どう声をかければいいの?
かけない方がいいの?
そもそも、小声とはいえ防音結界もなく会話しているので、静かに読書をしている侯爵令嬢には丸聞こえである。
デリカシーも何もあったものではなかった。
ごめんなさい。
「…えっと、こういう時は同性である王女なら、大丈夫じゃないかな…」
ごめんね役に立たない意見しか言えなくて。
だが王女は一つ頷き、立ち上がった。
「そうよね」
ホームルームまでの短い残り時間、王女は侯爵令嬢に話しかけていた。
予鈴が鳴って、本鈴が鳴る直前に聖女とご友人が教室に入って来て、バタバタと準備をしていた。
「ん?だから、精力剤はどうかなって」
「前後の説明を頼む」
「えっと…」
夕食三十分前に短い午睡から目覚めたミカエルが、ベッドから身体を起こし服を着ながら呟いた言葉に、アルヴィスの眉間に皺が寄った。
同じように身体を起こし、ベッドの端に放り投げていた服を拾い集めている間に、ミカエルはベッドから下りていた。
「僕が倒したわけじゃないけど、ニーズヘッグを倒した祝いに、カノラド王から回復と治癒の魔道具をもらったってことは、言ったと思うけど」
「ああ」
「さらに追加で、何かお祝いをくれると言うんだけど、こちらからは宰相府と僕から、礼状を送っただけなんだ」
「…それで、なぜ精力剤?」
「カノラド王には、まだまだお元気でいてもらいたいし」
「…それで、なぜ精力剤?」
「え、二度聞く?」
窓際の一人掛けソファに腰掛けて、マジックバッグからグラスを二つ取り出し、アイスティーを注ぎながらミカエルが首を傾げるので、シャツを羽織りながらアルヴィスは答えた。
「…浮気でもする気なのかと」
「へ?」
ミカエルが逆側に首を傾げ、真面目に意味を考え始めた。
「…それは冗談だが、必要か?あの王は今でもお盛んだと聞くが」
「今でもお盛んだと聞くカノラド王に、精力剤を贈ると浮気する気がある、って受け取られる根拠を真面目に考えてみたんだけど…」
「考えなくていい」
「…僕が、カノラド王では満足できないだろうっていう、遠回しのアルの自慢?」
「……」
向かいに腰掛け、置かれたアイスティーを飲もうとしていたアルヴィスは、目を瞬いて驚いた。
さらにミカエルは逆側に首を傾げ、こちらも目を瞬いた。
「あれ。違った?」
「そこまで考えてなかった。が、なるほどそういうことにしておこう」
「違ったのか…」
「…向こうに、誤解されかねないと思っただけだ。次会った時には、これを使って、という意味に取られるんじゃないかと」
「え!?そんな風に思う!?」
「男なんてそんなもんだ」
「主語が大きい」
「そんなもんだ」
「そうなの…?」
僕も男なのにな、と呟いているミカエルは、わかってない、と、アルヴィスは思う。
あのカノラド王は、まだミカエルを諦めていないのだ。
精力剤なんて贈られたら、都合の良いように解釈して、期待するに決まっている。
「誤解を受けようのない、無難なものにしておいた方がいいんじゃないか?」
アドバイスとしては平凡で、何の捻りもありはしない。
具体的な例を出すわけでもなく、ミカエルに丸投げだった。
…が、アルヴィスは自分にしては非常に前向きに頑張っている、と思っていた。
カノラド王に限らず何もかも、ミカエル以外はどうでもいいので、本来の自分の性格のまま言ってしまえば、「興味がない」で終わってしまう話題だった。
でも精力剤は、よろしくない。
全力で阻止すべきである。
「そっかぁ…。東方地域は、独自の薬草技術が発達してて…漢方って言うんだけど。滋養強壮とか、変な意味じゃなくて栄養補給とか、そちら方面でも売り出していけたらなって思ったんだよね。…東方地域では、薬として使われているんだけど」
「待て。新商品の売り込みだったのか?」
それなら話は変わってくる、と思いつつアルヴィスが問うと、ミカエルは頷いた。
「あ、うん。でも誤解されると困るから…別のものを考えようかな」
「そうか。…その精力剤は、効果は確かなのか?」
「どちらかというとエナジードリンク…えーっと、滋養強壮、かな」
「俺にくれても構わないが」
「…ん?必要ないよね?」
「必要だろう?」
「いやいや、必要ないよね?」
「ミカエルを十分満足させる為には、…」
「間に合ってますので結構です」
「そうか?」
「わぁ、アイスティーが美味いなぁ。甘さの調整もバッチリだなぁ」
「……」
誤魔化すように話題を変えるミカエルが美しくて可愛いので、アルヴィスはそれ以上言うことはやめた。
「カノラド王には、茶道具でも贈ろうかな」
「東方の、抹茶を飲む時の道具、だったか…」
「そうそう。上流階級に流行らせようかと思って。畳に正座、っていうのはハードルが高いから、卓上で気軽に出来るやつを」
「…いつのまにそんな話が進んでいたんだ?」
「ハルシゲと手紙のやりとりはしてるから!夏期休暇の間は、アルに進捗を話す暇もなかったよね。来年あたりから、宿泊施設も稼働させるつもり。夕食後にでも抹茶点てつつ、情報共有しようか」
「ぜひ」
新しいことに挑戦しようとしているミカエルは、とても楽しそうで輝いている。
ミカエルが望む道を、進んで欲しい。
この国の王になりたいというなら協力するし、滅ぼしたいというなら喜んで手を貸すだろう。
冒険者として生きたいなら生きればいいし、商売をしたいというならすればいい。
隣に、自分がいられれば。
なんだっていいのだ。
それ以外は望まないし、それ以上は全て、ミカエルが手にすればいい。
生きたいように生きて、死にたくなったら死ねばいい。
ミカエルを手に入れると決めた時から、アルヴィスの考えは変わっていなかった。
九月に入り、新学期が始まった。
教室に入って早々、ドラゴンスレイヤーの件で祝ってくれたのは、カノラド連邦の第四王子ルシュディーと、第六王女アーヤ、そしてソフィア・フランクリン侯爵令嬢だった。
自国内では、知っている者はほんの一部である。
ドラゴンスレイヤーどころか、ミカエルが勇者パーティーに混じって、魔族領でレベリングをしていたことすら、知っている者はほぼいなかった。
学園中、国中を今騒がせているのは、ミカエルのことではなかった。
王太子である第三王子が、女子生徒を孕ませた、という噂でもちきりだった。
もともと、女関係の噂はあったらしい。
王宮の王太子宮に、女性を複数引き入れて、夜な夜な乱交三昧だとか。
ミカエルは興味もなかったことに加え、噂を耳にする機会が乏しかったので知らなかったのだが、称号を祝われたついでに、ルシュディーが教えてくれた。
妊娠の時期的に、林間学校の頃だろう、と。
どうでもいい。
のだが、王族の醜聞である。
聞かないわけにはいかなかった。
妊娠した女子生徒自身が、嬉しそうに吹聴して回っているらしい。
妊娠が発覚してから茶会で、街で、知り合いを見つけては、自分から話題を振っていたようだ。
その生徒は男爵家の令嬢で、先代で領地を売り払い、領地を持たず、首都で生活をする爵位のみの貴族であり、爵位を返上するのも時間の問題と言われていた。
「見え見えの罠にかかったのでは…?」
「かかっちゃってるよなぁ。ばっかで~」
ミカエルが呆れ混じりに呟くと、ルシュディーもまた、鼻でせせら笑った。
身分も財産もない女性が、王太子の子を身籠もる。
一見すると、シンデレラストーリーであった。
アルヴィスは興味なさげに窓の外を見ており、アーヤ王女は不快げに眉を顰めた。
「妊娠した生徒が、望んでやったことならいいけれど…」
「望んでなきゃ、自分で言い触らしたりしなくね?」
「…まぁ、そうね…」
ルシュディーにツッこまれ、ため息を吐きながら王女が同意した。
「側妃になるんかね?」
続いてミカエルに問われたが、即答は出来なかった。
「…王太子の子どもであると、証明されれば…?」
「生まれるまでわかんねぇんだっけ?」
「魔力の波長で検査するんだったか。よほど強い魔力持ちでもない限りは、生まれてから判明するんじゃないかな」
他人の魔力は反発するものだが、親子間であれば反発は少ない。
それを利用して、親子関係の証明をする魔道具が発明されていた。
「あの王太子、魔力量ゴミっつー話よな。じゃぁ生まれてからかぁ」
「…なんでそんなこと知ってるの?」
さも当然のように言われたが、ミカエルも知らない事実を、なぜ他国の王子が知っているのか。
不思議に思って問うたが、ルシュディーの方も不思議そうな顔をした。
「有名な話じゃねぇの?国に帰ったら、飯ん時とかにそんな話、するけど」
「えっ…あ、うん。聞かなかったことにしよ」
「あれ?なんかマズかった?」
他国の王族の内部事情を気さくに話しちゃうカノラド連邦、恐るべし。
「ううん、気にしないで。でも他国の王族にそんな話はしちゃダメだよ」
「そうなん?…あー、あ、そうか。なるほど理解。気ぃつけるわ…」
ルシュディーもその危険性に気づいてくれたようで、何よりだった。
他国にスパイを送り込んでいる、ということを、公言するも同然だからだ。
「…ねぇ、ソフィアに話しかけても、いいものかしら…」
声を潜めて囁くアーヤ王女は、アルヴィスの後ろの席を気にしていた。
侯爵令嬢を名前で呼ぶ程親しくなったのかと思えば喜ばしいことだが、事情を考えると複雑だった。
王太子は、侯爵令嬢の婚約者である。
こう言う時、どう声をかければいいの?
かけない方がいいの?
そもそも、小声とはいえ防音結界もなく会話しているので、静かに読書をしている侯爵令嬢には丸聞こえである。
デリカシーも何もあったものではなかった。
ごめんなさい。
「…えっと、こういう時は同性である王女なら、大丈夫じゃないかな…」
ごめんね役に立たない意見しか言えなくて。
だが王女は一つ頷き、立ち上がった。
「そうよね」
ホームルームまでの短い残り時間、王女は侯爵令嬢に話しかけていた。
予鈴が鳴って、本鈴が鳴る直前に聖女とご友人が教室に入って来て、バタバタと準備をしていた。
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