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狩られたのはオレ達だった。
ツレ達が愉快そうに笑った。
「けけっ。メイド服着てる辺境伯の娘がいるかよ!」
「をいをい、こいつらバカだぜ。酒も飲めない歳のくせに酔っぱらってやがる」
あ、いたな。
酔っぱらってるとは言い得て妙だ。
なにが起こっているか判らない酔っぱらないなんかがこういう反応をする。
そうか。こいつらはバカなんだな。
酔っ払い並みに。
痛い目を見せてようやくわからせられるバカだ。
「そうかそうか。辺境伯令嬢さんを貸さないなら、借り上げてやるよ」
オレはツレ達と目で合図を送る。
いつも通りやる。
ツレのふたりが、メイドを左右から挟み。
オレは、三文絵描きを殴りつけ――
「やっぱり。遅いね」
拳は空を切った。
「え」
かわされた!?
「うわぁぁぁぁ!」
悲鳴と少し遅れて水音が響いた。
ツレがひとりいなくなっていた。
なにが? メイドに投げ飛ばされたように見えたが、ありえない――
そう思った時には、大気を鋭く引き裂く音と同時に、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
オレの左隣にいたヤツが、頭から血を吹き出してうずくまっていた。
メイドが橋の欄干に立っていた。
ヘッドドレスを手にもって振り回したと思うと、何かが飛んできた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
オレの右隣にいたやつが、頬から血を吹き出して橋の上でのたうちまわっている。
三文絵描きが、ひどくのんびりした声で、
「あいかわらず上手だね」
「な、なにがだ!」
オレの声は悲鳴のようだった。
「石礫だよ。彼女は昔から、あれで、鳥を落としてたからね」
いしつぶて。
なにを言ってる。
辺境ならともかく、ここは王都で、石礫なんて使える人間は滅多に――
「ひぃっ」
メイドの方へ差し向けたツレが、逃げ出したのが見えた。
だが、メイドがまたもヘッドドレスを振ると、逃げたツレの耳が吹き飛んだ。
「へへん! 鳥よか的がでかいからね。簡単」
メイドと目があった。
奴は、にぃっと笑った。
ただただ愉快そうだった。
こいつはっ化け物だ。
オレは喘いだ。
認めたくないが恐怖だった。
侯爵令息というだけで、たいていの奴は戦意をうしなう。
なのにこいつはっ、平然と攻撃してくる!
それどころか、オレを狩る対象とでも思ってる!
この三文絵描きを人質にとるしか!
「だ、だまれ!」
オレは、ポケットからナイフを取り出して、目の前の三文絵描きに――
「!」
あっさりとナイフがはたき落された。
「遅いよ」
顔の正面に、棒状のものが迫り。
それが、スケッチ用の鉛筆の先端だと認識するより早く。
鼻と口の間を衝撃が貫き。
オレは意識を刈られた。
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