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第4話 消える図書室の本
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きずな小学校の七ふしぎ——その三。
図書室にある一冊の本が、ある日突然消え、また戻ってくる。
「本が、勝手に消えるわけないじゃない。消えるってことは誰かが持っていってるってことよ。怪談でもなんでもないわ」
「うーん……でも、貸し出し記録には残ってないのに、いつの間にかなくなって、いつの間にか戻ってるんだよ? まるで本が意思を持ってるみたいじゃん」
「意志を持った本……」
それを聞いて、あたしは思い出した。
「そういえば、音楽室のノートもはじめはなかったのに、突然あったよね。図書室の本もそれと一緒なんじゃ……?」
前に音楽室で拾った、あの謎のメッセージ付きのノート。
“七つめの扉は きみを待っている”
あのノートは突然現れたみたいだった。
「そう、そうだよ。灯子ちゃんもそう思うよね!」
玲央くんが嬉しそうに首を縦に振ってくれる。
「わかったわよ。今度は、その本を調べるって言うんでしょ」
柚月ちゃんは、あきらめたようにため息をついて読んでいた本をパタンって閉じた。
「ちょうど、この本を図書室に返しに行こうと思っていたし、放課後探してみましょう」
*****
放課後の図書室は、夕日のオレンジに染まっていた。
本棚がずらりと並ぶ静かな空間。空気の中に、ちょっとだけ紙とインクの匂いがする。
司書の先生にあいさつをしてから、探偵団の三人で目当ての本を探す。
「本のタイトルは……『七つめの扉』」
「まんまね」
「やっぱり貸出記録には何もないって先生言ってたね。誰も借りたことがない本だって」
本棚の隅っこからさがしていると、“読み聞かせ童話”の棚で、あたしはそれを見つけた。
「これ……じゃない?」
古びた装丁の灰色の表紙。
タイトルは金の文字でうっすらと書かれている。
『七つめの扉』って。
「中、読んでみよう」
ページを開くと、中身は空白だった——最初の数ページまでは。
何ページ目かをめくった時、見たことのない手書きの文字が浮かびあがるように現れた。
“君たちのまだ扉の鍵は開かない。あと四つ——”
「えっ……これ、どういうこと?」
まるで、わたしたちの行動を知ってるみたいな文に、本を持つ手がふるえる。
「ほらなー。やっぱりこの本、ただの本じゃないんだよ」
玲央くんは、ワクワクしたように声をはずませて身を乗り出した。
「3番目の七ふしぎなんだから、あと4個残ってるのくらい予想できるわよ」
柚月ちゃんはそういうけど、顔がこわばってみえる。
あたし一人でこんな事があったら、怖くてどうしようもなくなってたかもしれない。
でも、玲央くんと柚月ちゃんが一緒だから、怖いって気持ちが和らいで、少しだけ考える余裕ができた。
たしかに3番目の七ふしぎなんだけど……もし順番に関係なく探してたら、この七ふしぎに出会うのは何番目かわからないはずだよね。
パタン。
開いていた本が、自然に閉じた。
もう一度本を開くと、さっきまで空白だったページと手書きの文はなくなってて、普通の物語が書かれてた。
そして、最後のページに一枚の紙がはさまっているのに気がついた。
最後のページを開いて、その紙を見てみると……
“今度は、放送室だ”
あたしは、玲央くんと柚月ちゃんと無言で目を合わせた。
誰がゴクリとツバを飲み込む音が聞こえた。
七ふしぎは、あたしたちをどこかへ導こうとしているんだろう。
図書室にある一冊の本が、ある日突然消え、また戻ってくる。
「本が、勝手に消えるわけないじゃない。消えるってことは誰かが持っていってるってことよ。怪談でもなんでもないわ」
「うーん……でも、貸し出し記録には残ってないのに、いつの間にかなくなって、いつの間にか戻ってるんだよ? まるで本が意思を持ってるみたいじゃん」
「意志を持った本……」
それを聞いて、あたしは思い出した。
「そういえば、音楽室のノートもはじめはなかったのに、突然あったよね。図書室の本もそれと一緒なんじゃ……?」
前に音楽室で拾った、あの謎のメッセージ付きのノート。
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あのノートは突然現れたみたいだった。
「そう、そうだよ。灯子ちゃんもそう思うよね!」
玲央くんが嬉しそうに首を縦に振ってくれる。
「わかったわよ。今度は、その本を調べるって言うんでしょ」
柚月ちゃんは、あきらめたようにため息をついて読んでいた本をパタンって閉じた。
「ちょうど、この本を図書室に返しに行こうと思っていたし、放課後探してみましょう」
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放課後の図書室は、夕日のオレンジに染まっていた。
本棚がずらりと並ぶ静かな空間。空気の中に、ちょっとだけ紙とインクの匂いがする。
司書の先生にあいさつをしてから、探偵団の三人で目当ての本を探す。
「本のタイトルは……『七つめの扉』」
「まんまね」
「やっぱり貸出記録には何もないって先生言ってたね。誰も借りたことがない本だって」
本棚の隅っこからさがしていると、“読み聞かせ童話”の棚で、あたしはそれを見つけた。
「これ……じゃない?」
古びた装丁の灰色の表紙。
タイトルは金の文字でうっすらと書かれている。
『七つめの扉』って。
「中、読んでみよう」
ページを開くと、中身は空白だった——最初の数ページまでは。
何ページ目かをめくった時、見たことのない手書きの文字が浮かびあがるように現れた。
“君たちのまだ扉の鍵は開かない。あと四つ——”
「えっ……これ、どういうこと?」
まるで、わたしたちの行動を知ってるみたいな文に、本を持つ手がふるえる。
「ほらなー。やっぱりこの本、ただの本じゃないんだよ」
玲央くんは、ワクワクしたように声をはずませて身を乗り出した。
「3番目の七ふしぎなんだから、あと4個残ってるのくらい予想できるわよ」
柚月ちゃんはそういうけど、顔がこわばってみえる。
あたし一人でこんな事があったら、怖くてどうしようもなくなってたかもしれない。
でも、玲央くんと柚月ちゃんが一緒だから、怖いって気持ちが和らいで、少しだけ考える余裕ができた。
たしかに3番目の七ふしぎなんだけど……もし順番に関係なく探してたら、この七ふしぎに出会うのは何番目かわからないはずだよね。
パタン。
開いていた本が、自然に閉じた。
もう一度本を開くと、さっきまで空白だったページと手書きの文はなくなってて、普通の物語が書かれてた。
そして、最後のページに一枚の紙がはさまっているのに気がついた。
最後のページを開いて、その紙を見てみると……
“今度は、放送室だ”
あたしは、玲央くんと柚月ちゃんと無言で目を合わせた。
誰がゴクリとツバを飲み込む音が聞こえた。
七ふしぎは、あたしたちをどこかへ導こうとしているんだろう。
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