清鈴神社のおきつねサマ!

三嶋トウカ

文字の大きさ
5 / 26

清鈴神社のお狐さま⁉︎_5

しおりを挟む

 当の本人が登場した。

「ねっねぇ、時嶋君……? このっ、この人……えっ、人? ……人たちって……」

 しどろもどろになりながら、ナナが時嶋君に質問をした。

「――僕以外に視える人がいるなんて思わなかったや。……みんな視えているんだよね? 彼らはこの神社の、お狐さま、だよ」

(本当、なんだ……)

 時嶋君の言葉に、私たちも清丸たちも、なぜだか黙ってしまった。そして、私は驚いたが、やっぱりそうだったのかという気持ちにもなった。清丸から話を聞いて、まさかとは思ったが、あの時の男の子と本当に同じ顔をしているんだ。しかも、名乗ってもいないのに私の名前を知っていて、出会った時のことも覚えている。

「神様、なんだ……」

 気が付いたら、私はポツリとそう呟いていた。

「神様だけど、あしかのことが好きだよ? やっぱり、あしかが一番可愛い。……だから、結婚しよ?」

 今度は清丸が私の両手を握った。そして、そっと私の右手の手の甲にキスをした。

「えっ……」

 頭の中がいっぱいになる。――さっきから聞いていたら、恥ずかしいくらいに清丸は私に『好き』だの『可愛い』だの言ってくれている。……間近で見る清丸はカッコイイ。爽やかで笑顔がちょっと可愛くって、一瞬昔々に会っただけの私のことを好きだと可愛いと言ってくれて、ドキドキするようなことも平気でしちゃって……。

(え、いやいやいやいや!! いきなりキスする!?)

 顔から火が出そうなほど恥ずかしい。なのに、清丸は平気そうな顔をしている。

「……え、っと。清丸の言っていたあしかちゃんって、もしかして小森さんのこと……? さっき、名前聞いてあれ? って思ったけど。……は、はは……すごいや! 清丸、初恋の人に出会えたんだ! 良かったぁ! これでみんな、毎日言われなくても済むね!」
「……頼むハルト。お前までそっち側に行かないでくれ……」
「そっち側って?」

 時嶋君は、当たり前のように清丸たちの存在を受け入れて、人間と変わらない扱いをしている。驚いている私たちのほうがおかしいんじゃないかと思うくらいに、いたって普通に、とても自然に。

「みんな、そりゃあ驚いちゃうよね。……うちにこない? 多分、一回落ち着いたほうが良いと思うんだ」

 時嶋君の言葉に甘えて、私たちは揃って時嶋君の家に行くことにした。神社のすぐ隣、大きな一軒家。そこが時嶋君の家だった。

「ただいま」
「――おかえりなさい! ……って、あらららら?」
「……お邪魔します」

 控えめに挨拶をした。私たちを見て、恐らく時嶋のお母さんだろう人は、とても驚いた顔をしている。

「……ハルト、に、清丸君に音羽君に鈴緒君。……それに、女の子がいっぱい……?」

(え。視えてるの――!?)

 名前まで呼んでいた。存在を知っているんだ。

「この子、あしかちゃんなんだって」
「あらら!? じゃあ、清丸君やっと会えたのね!? 私も嬉しいわ~」

 私はそんなに有名なのかと、嬉しいやら恥ずかしいやらで顔が赤くなった気がした。これだけ一途に思われるのは嬉しい。でも、私はまた中学生だし、そもそも人間じゃない清丸と結婚は、今すぐには考えられないでいた。――いや、結婚は、大人になってからも考えられないかもしれない。とにかく、一気に色々起こったから、頭がパンクしそうになっている。

(……これだけ言いふらして? いたら、多分本気なんだよね……? でも、中学生で結婚? やっぱりよくわかんない!)

 時嶋君が戸惑っている私たちを部屋まで案内してくれた。そこで、簡単に清鈴神社と時嶋家について説明もしてくれた。時嶋君の家族は、みんなお狐さまのことが視えていて、会話もできるらしい。特に時嶋君は見た目の年齢が近いこともあって、まるで友達のように過ごしているとか。その中で、私の話も聞いていたと言っていて、本当に恥ずかしくなった。
 途中、時嶋君のお母さんもやってきて、色んな話をした。清丸は誰にでも私の話をしていたようで、『息子の初恋相手が現れたみたいでお母さん嬉しいわ』なんて言葉を置いて戻っていった。

「……あしかは、俺のこと嫌い?」
「……え」

 嫌い、なわけない。だって、私にとっても清丸は初恋の相手なのだから。でも、それを言って良いのかわからない。清丸は人間じゃないし、いきなりこんなことになって正しい判断をする自信もない。

「……俺のこと、信用できない?」
「か、神様だっていうのはわかったけど……。そ、その、私のことを……す、好き、っていうのも……」
「! それじゃあ……!」
「で、でも! 人間じゃないし……!」
「……あしかの不安、それだけ?」

 人間じゃないということは、大きな問題じゃあないのか。

「それなら、人間になって生活してみるから、その上で考えてよ」
「人間に、なれるの……?」
「ずっとなりっぱなしは無理だけどね。同じように学校に通ったり、デートしたりはできるよ?」
「デート……」

 人間になった清丸とデートする姿を想像して、また顔が赤くなった気がした。

「明日、楽しみにしていて?」

 そう言って笑う清丸。

 私はそのイタズラっぽい笑みから、目が離せないでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

宇宙人は恋をする!

山碕田鶴
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞/奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。】 私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。 全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの? 中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉ (表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろ」様に感謝)

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

君との恋はシークレット

碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。 母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。 ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。 そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。

処理中です...